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テレビの価格が下落、それでも売れない。深刻なテレビ離れの理由は、ペイチャンネルと起動広告

テレビが売れなくなり、価格も下落する一方になっている。もはやテレビは3日に1回しか起動しないデバイスになっている。スマートフォンに対抗するため、ペイチャンネルと起動広告が過剰に進んでしまったことが原因だと熱点微評が報じた。

 

テレビが売れない、価格下落が止まらない

テレビの価格下落が止まらない。11月11日の独身の日セールでのテレビのサイズ別平均価格のデータによると、2016年、2019年、2022年で、55インチは3538元、2124元、1735元(約3.3万円)、65インチは6829元、3322元、2721元(約5.2万円)、75インチは1万6513元、5723元、4041元(約7.7万円)と下がっている。

2022年11月11日のセールでは、テレビの販売台数は391.1万台で、前年比6.9%減、販売金額は105.3億元となり前年比9.7%減となった。

淘宝網タオバオ)、拼多多(ピンドードー)などで、テレビを検索すると32インチテレビの価格は300元(約5700円)を割り込むものが見られるようになっている。さらに19インチのパーソナルテレビでは188元など、200元を割り込むようになっていて、「テレビは白菜と同程度の価格になった」とネットでは言われるようになっている。

それでもテレビが売れない。

▲テレビの価格の下落が止まらない。タオバオでは1000元以下の大型テレビもたくさんある。

 

3日に1回しか使わないテレビ

最大の理由は、消費者の視聴習慣が変わったということだ。映像はスマートフォンタブレットで見るのが一般的になり、テレビで見る習慣が消えようとしている。ある統計によると、2016年のテレビの起動率(1年の内の起動日の割合)は70%を超えていたが、2021年には27.7%に低下をしているという。

映像はどこでも好きな時に見られるスマートフォンで見るようになり、自宅のリビングまで行かなければならないテレビを使わないようになっている。多くのテレビにはスマホの映像をミラーリングする機能があるため、コンサートやスポーツなどの大画面で楽しみたい時には、スマホで再生して、テレビに出力をする。テレビは大型ディスプレイとしてしか活用されなくなっている。

▲拼多多ではさらに安く、300元以下が相場価格になりつつある。「テレビは白菜価格になった」とネットでは言われている。

 

ペイチャンネルテレビ離れを加速

もうひとつの問題はサブスク化だ。スマホでは映像配信サービスの多くがサブスク化をしているが、テレビでも多くのチャンネルがサブスク化を始めている。テレビ局は従来の広告モデルだけでは成り立たなくなっており、サブスク化を始めている。無料で見られるのはニュースや古いドラマの再放送のみで、高画質でドラマや映画、コンサートなどを見たい場合は有料チャンネルに加入をする必要がある。

しかし、テレビの有料チャンネルとスマホのサブスク化は大きく違う。例えば、あるアニメ番組を見たい場合、スマホであれば、いつでもどこでも見ることができ、途中で見るのをやめて、後で続きを見ることもできる。

しかし、テレビの有料チャンネルは、放映時間があるため、見たい番組を番組表などで確認をしておき、その時間にみるか、録画をしておかなければならない。

多くの人が、スマホのサブスクに加入をし、大画面で見たい時はその映像をテレビに出力するようになっている。

▲中国のテレビ局は、収益を考えて、ペイチャンネル化を進めている。そのため、テレビを買ってもペイチャンネルに加入しないと番組が見られないようになりつつある。

 

さらに不評なテレビの起動広告

また、広告もテレビを買わない理由になってきている。以前のテレビは番組の途中に広告が入る程度だったが、現在は起動時広告を採用するテレビが増えている。テレビのスイッチを入れると、まずは広告が流れるのだ。最初は15秒程度であったものの、30秒になり、60秒になり、90秒の機種も登場している。この広告収入はテレビメーカーのものとなる。

もちろん、この起動時広告を消すことも可能だ。しかし、そのためには、年額いくらかでのサブスクに加入する必要がある。

テレビメーカーは、スマホの動画配信サービスに学び、その手法を取り入れていったが、スマホとテレビの特性の違いに考慮することなく、単なる模倣をしたため、テレビのユーザー体験を悪化させている。ネットでは「テレビは自滅をしている」とみる人が多い。

▲テレビの起動画面は、もはや大きなスマホ。VIPは有料チャンネル。多くの人がスマホのサブスクに加入し、その画面をテレビに出力して楽しむようになっている。サブスクであれば、好きな時間に好きな番組を楽しめるからだ。

 

テレビは、本体は安くても、楽しむには高いデバイス

テレビに変わって売れ始めているのがプロジェクターだ。2021年のプロジェクター市場は470万台になり、前年比12.6%の増加となっている。

テレビの価格は異常なまでの低価格になっているが、多くの消費者がそれでも高いと感じるようになっている。なぜなら、いくつものサブスクに加入をしなければ、まともに楽しむことができないからだ。テレビメーカーは、主要サブスク1年無料のクーポンをつけてテレビを販売するようになっているが、消費者の反応は鈍い。すでにテレビ局も地上波放送ではなく、ネット配信に軸足を置くようになっている。

スマホは、カメラやラジカセなど、さまざまなオーディオビジュアル機器を駆逐してきたが、いよいよテレビを駆逐するようになってきている。