一部の大学生たちが、利便性の高いスマートフォン決済を拒否して、現金を使うようになっている。その時代に逆行するような行動には、納得のできる6つの理由があると捜狐が報じた。
現金決済に回帰をする大学生たち
スマホ決済が進む中国では、もはや現金決済をしている光景を見かけること自体が少なくなり、都市では現金決済を露骨に嫌がる個人商店も増えてきている。お釣りが用意できないからだ。日用品も、従来は「4元」や「3.9元」とお釣りがでないか、お釣りのやり取りが便利な価格に設定されていた。しかし、激しい価格競争により、コンビニやスーパーでは「3.68元」「3.27元」といった中途半端な価格設定も行われるようになっている。スマホ決済の場合であれば、このような価格でも何の問題もないが、現金で支払うときはお釣りのやり取りに手間がかかることになる。
しかし、一部の大学生の間に、この時代にあえて現金決済をする人たちが現れ始めている。なぜこの大学生たちは、このような時代に逆行するようなことをするのだろうか。
理由その1:お金の管理がしやすい
現金を使う最大の理由はお金の管理がしやすいということだ。大学生のほとんどはアルバイトもせずに、親からの仕送りで生活をしている。学生寮に住むことが多く、三食を学食で食べればお金もさほどかからないことから、小さな金額で生活をしている。しかし、それでも仕送りの直前になるとお金が足りなくなる。
月末にお金がなくなることを防ぐには、お金があるうちから計画立て使うことだが、それは大学生にとって簡単ではない。しかし、ポケットにお金を入れておけば、減り方で感覚的に使いすぎを察知することができる。管理が簡単。これが最大の理由だ。
理由その2:貯金がしやすい
大学生も長期休みには旅行がしたいとか、スポーツバイクやゲーミングPCのような高価な商品を買いたいという欲求はある。しかし、親からの仕送りで暮らす身では、節約をしてお金を貯めるか、学業に影響をしない範囲でアルバイトをして、そのお金を貯めて買うしかない。
現金であれば、貯めるべきお金を封筒に入れて引き出しの奥にでもしまっておくことができる。しかし、スマホ決済では残高の一部となってしまうために、誘惑に駆られて使ってしまいがちなのだ。
理由3:借金の誘惑から逃れることができる
スマホ決済は、自分が持っている残高と借金が連続をしていて、簡単に借金ができてしまう。スマホ決済を使うたびに消費者ローンの広告が出てきて、身分証で本人確認をするだけで簡単にお金が借りられてしまう。アリペイなどでは、先に貸し出し可能額が与信情報に基づいて算出され、残高に貸出可能額が合算された仮想の残高まで表示される。もちろん、借りる手続きをしなければいいだけなのだが、さまざまな欲求を持ちやすい大学生にとって誘惑が強すぎる。現金であれば、このような誘惑を見なくて済むようになる。
理由4:プライバシー情報の流出
現代社会で、自分のプライバシー情報を流出させずに生きていくことはできなくなっている。違法な流出、収集はともかく、ECで商品を購入し、スマホで決済をすると、相手の販売業者やプラットフォームには、名前、電話番号、住所などの基本的なプライバシー情報を伝えざるを得ない。販売業者やプラットフォームが、この情報を使って、営業電話をかけたり、ダイレクトメールを送ってくることは、倫理上はともかく、法的には許されている。
さらに、どこから流出しているのか、まったく関係のない業者からも電話がかかってきて、相手はこちらの名前などを知っていることもある。これは非常に気味の悪いことで、個人情報に敏感な大学生たちは、ネットサービスやECへの依存を抑えようとしている。それにはスマホ決済を使うのをやめて、現金決済に戻るのが最もシンプルな方法なのだ。
理由5:社会の持続性や環境問題
スマホ決済は、そのシステムを維持するために大量の電力を使用している。書類の電子化は紙の消費量を抑えることにつながるが、現金の電子化は、現金という紙は反復使用をするため、紙の消費量は最低限で済むのだから、電力を使う分、環境により大きな負荷を与えている。このようなことから、やみくもに電子サービスを使うのではなく、より環境への負担を少なくするサービスと、かえって負荷を与えてしまうサービスを分別し、選択をすべきだと考えるようになっている。
理由6:現金にまつわる社交
伝統的な現金決済では、お金の受け渡しだけではなく、そこに社交が伴う。支払いをすれば受け取った側はお礼を言い、支払った側はそれに応えるのが伝統的な文化観念だ。さらに祝い事にはお金を紅い封筒に入れて渡す。現金は、金銭価値だけでなく気持ちを渡すことができる。
しかし、スマホ決済になってしまうと、商店でもそのような交流は薄れてしまう。ましてや祝い事の紅包などもスマホ決済で送れるようになっているが、そこに気持ちまで乗せられると感じている人は少ない。社会の利便性を追求するあまり、大切な文化的な要素を失ってしまうのではないかと考えている人もいる。
進化する社会に対するささやかな抵抗
もちろん、現金を使い始めた大学生というのはごく一部であり、もはやスマホ決済がなければ生活もできないことを彼ら彼女らも理解をしている。しかし、社会に出る前にささやかな抵抗をして、お金の意味を考えたいのだと思われる。中国は2017年に「無現金社会」という言葉が広まり、電子決済が一気に普及をした。その無現金社会が現実のものになろうとしている。