中国のリゾート地「三亜」に住んでいる小魚さんには、砂浜にメッセージを書く仕事が殺到している。友人のために書いたメッセージがSNSで紹介され、思わぬアルバイトとなったと硬殻INKが報じた。
砂浜にメッセージを書いて月収19万円
旅行などで砂浜に行くと、なんとなく指や小枝で文字を書いてしまう。いずれ波に洗われて消えてしまうメッセージを書いたことが誰にでもあるはずだ。このロマンチックな行為を仕事にして、月に1万元(約19万円)を稼いでいる青年がいる。
小魚さん(仮名)は、去年から、中国のリゾート地として有名な三亜(サンヤー)の海辺に家を借りて住んでいる。砂浜までは約500mという絶好のロケーションだ。
「初めて砂浜を散歩した時に、海に落ちる夕陽がとてもきれいだったのです。その時、友人が結婚することを思い出して、二人の名前を砂浜に書いて、写真と動画を撮り送ってあげました。それをとても喜んでくれたのです」。
口コミで仕事の依頼が大量に舞い込む
これが友人の間で評判となって、私も書いてほしいという友人が現れた。そのうちの何人かが写真をSNSにアップをすると、知らない人からも代金を支払うので書いてほしいという依頼が舞い込むようになった。
「最初は5元をいただくようにしました。それでも忙しい日には100件ほどの注文があります。その日は1日中砂浜に文字を書くことになりました。8月頃からお客さんが急に増え、代金は5元から80元までさまざまです。お客さんさえ安定して確保できれば、アルバイトをするよりも収入は多く、月1万元ほどになります」。
砂浜に憧れる中国人
中国には22の省、5つの自治区があるが、海のある省は9つしかない。大都市の場合は港湾として整備をされているため、中国人にとって砂浜は貴重な存在だ。しかも、長い間コロナ禍による移動制限が続いたため、何年も砂浜のある海を見ていない人がたくさんいる。そのような人たちが、小魚さんに依頼をしてきている。
当初は、小学生、中学生からの依頼が多かった。内容はアイドルの応援や受験祈願などだ。しかし、SNS「小紅書」(シャオホンシュー)で評判になってからは、90%が22歳から40歳ぐらいまでの女性となった。結婚記念日や誕生日のメッセージ、さらには子宝や健康を願うメッセージが多くなった。
意外にきつい砂浜にメッセージを書くお仕事
しかし、ビジネスとしては苦労も多い。ひとつは、顧客が増えると、ライバルも大量が登場してきたことだ。ただ砂浜にメッセージを書くというだけでなく、美術学校生がイラストをつけたり、書道の愛好家が美しい文字で書いたり、プロのカメラマンが質の高い写真を撮ったりするようになった。品質がどんどん向上をしているため、小魚さんも工夫をしなければならなくなった。
しかも、作業も楽ではない。夏の間の砂浜は太陽光が厳しく、その炎天下で毎日8時間も作業をしなければならない。しかも、しゃがんでの作業となるため、1日の仕事が終わる頃には階段も登れなくなってしまう。
依頼者との交流も生まれている
一方で、うれしい交流も生まれている。「先月、ある方から公務員試験の合格祈願のメッセージを頼まれました。その写真を送るとすごく喜んでくれて、彼は内向的な性格で、公務員になるという夢を話したのは私が初めてだったそうなのです。来年、もし合格をしたら、三亜に旅行し、直接会ってお礼を言いたいと言ってくれました」。
また、誕生日のメッセージも喜んでくれる人が多い。コロナ禍により、誕生日に友人が集まって祝い事をするという習慣がなくなってしまったからだ。さらに、高校生、大学生はオンライン授業ばかりになり、友人をつくることができず、孤独な状況に置かれている人たちがたくさんいる。
そのような人たちと交流することで、軽い気持ちで始めた副業だったが、意味はあると小魚さんは感じている。