中国の小学生の間で普及している児童用スマートウォッチ「小天才」。SIMが内蔵され、通話、ビデオ通話が可能だが、連絡先は家族と友人のみに限られている。友人になるには、ウォッチ同士を合わせる必要がある。対面した人としか連絡が取れないことで、子どもの安全を担保している。この閉じたSNS機能により、子どもたちは小天才をほしがるという好循環が生まれていると顧均輝が報じた。
スマートウォッチ世界シェア第4位のimooとは
米調査会社Counterpointのスマートウォッチ市場の調査によると、2021年Q2は、市場全体で27%の成長となった。シェアトップは当然アップルだが、2位にはファーウェイ、3位にはサムスンと中韓勢が続く。そして、第4位にはimoo(アイモー)というメーカーが入っている。
このimooというブランドは、広東小天才科技の国際ブランドで、中国国内では「小天才」というブランドでスマートウォッチを発売している。
小天才成功の鍵は子ども間でのSNS機能
この小天才は05后(2005年以降生まれ)と呼ばれる小学生の間では圧倒的なシェアをとっている。2013年頃から、児童用スマートウォッチが各メーカーから発売された。時間が見られるだけでなく、SIMカードを挿入すれば通話ができ、GPSにより子どもの現在地が親のスマートフォンから確かめられるというものだった。
2015年に歩歩高(ブーブーガオ)は、市場調査を行い、児童用スマートウォッチに対するニーズは、子どもの現在地を確認して子どもの安全を確保することだが、実際に使う子どものニーズは、親よりも子ども同士で連絡を取ることだということを発見した。
こうして、小天才には「微聊」と呼ばれる機能を搭載した。小天才同士を接触させるだけで、友人になることができ、ビデオ通話やメッセージができる機能だ。小天才同士を接触させるポーズ、さらには本体を立ててビデオ通話をするスタイルが、小学生の心をつかみ、小天才はあっという間に、小学生の間での人気商品となった。
価格は高くても売れる「小天才」
初年の2015年には、出荷台数が107.6万台に達した。2017年には累計500万台を突破し、中国の児童用スマートウォッチ市場で50%以上のシェアをとった。小学生の10人に1人が小天才を使っていることになる。
さらに、imooブランドで海外向け販売を始め、2019年には世界市場で26%のシェアを取り、国内市場でも金額ベースのシェアでは50%を超えた。台数ベースのシェアでは、ファーウェイや小米(シャオミ)の次になるが、価格は小米の2倍になる。それでも売れている。
▲中国の「小天才」のプロモーションビデオ。小学生の10人に1人が使っている児童用スマートウォッチとなった。
閉じたSNSが安定したシェアの鍵となった
一度シェアを取ると、「微聊」のソーシャル機能が大きな意味を持ってきた。子どもが学校に通うようになると、親としてはGPSデバイスを購入して、通学中の安全を確保したい。連絡が取れる状態も確保したい。しかし、子どもにスマートフォンを持たせるのはまだ早いのではないかと躊躇をしてしまう。そこで、GPS、通話が可能なスマートウォッチが候補にあがってくる。
子どもたちは自分の意思で小天才を選ぶ。なぜなら、小天才のソーシャル機能「微聊」は閉じていて、小天才同士でないと通話、ビデオ通話ができないからだ。小天才にはSIMカードが内蔵でき、通話が可能だが、原則として、通話ができるのは家族と友人登録をした人に限られている。そのため、友だちと連絡ができる小天才を選ぶのだ。
▲imoo watch phoneのプロモーションビデオ。友人になるときに、ウォッチとウォッチを合わせるポーズが小学生のハートをつかんでいる。
高校生、大人が使える「小天才」を発売することが鍵になる
さらに現在では、アプリに対応をし、童話などの物語を読み上げてくれるアプリ、英語の辞書などのアプリも使えるようになっている。
このような機能により、親は小天才なら安心ができ、子どもたちは小天才を選ぶ。
発売が始まった2015年に10歳だった児童は、現在は高校生になっている。多くの児童が中学生になるあたりで、小天才からスマホに切り替えているが、小天才はこここに注目をしている。アプリストアを充実させ、網易雲音楽やカラオケ、アリペイなどのアプリに対応を始めている。
生活に必要な機能を持つアプリが充実をし、高校生でもつけていて恥ずかしくないデザインの機種があれば、小天才から小天才への乗り換えも生まれてくる可能性がある。
そのため、中国の国民的なSNS「微信」(ウェイシン、WeChat)のライバルは、実は小天才ではないかと指摘する人もいる。画面の小ささから、動画を見たり、宿題をこなすには向いていないが、小天才とタブレットというスタイルが定着をする可能性がある。
このようにSNS機能を持った児童用スマートウォッチの普及により、「スマホの次」のデバイスとして、スマートウォッチが広がっていくのではないかと見ている人もいる。