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EVが急速充電が主流に。蔓延する急速充電対応改造キットにメディアやメーカーが警告

EVは30分で90%などの急速充電が主流になってきた。慢充電しか対応していない車種のために、危うい改造キットが出回っている。バッテリーに接続するだけで急速充電が可能になるというものだ。しかし、発熱や発火の危険性が考えられ、メディアやメーカーが警告をしていると懂懂筆記が報じた。

 

充電ステーションに入れてもらえない急速充電非対応車種

中国でEVシフトが始まり、充電ステーションも充実をし始めている。特に最近増えているのが急速充電対応の充電ステーションだ。ところが、この急速充電対応充電ステーションから特定の車種が締め出しを食らっているという。

管理者がいるところでは利用を断られたり、自動ゲート方式の充電ステーションではナンバーを読み取り、特定の車種の場合は開かない。そういう締め出し措置がないところでも、別の利用者から「よその充電ステーションで充電しろ」と言われトラブルになることもある。消費者問題の相談ホットライン「12345」にはすでに多くの苦情が寄せられている。

締め出しを食らっている車種とはプラグインハイブリッド(PHEV)と人気車種「五菱宏光MINI EV」だ。いずれも急速充電に対応をしていないため、急速充電対応充電ステーションで充電をすると、長時間占有することになる。これが運営者からも他の利用者からも迷惑だとみなされるようになっている。

 

ネットで販売されている急速充電対応改造キット

PHEVは、日常の短距離利用ではEVとして走行し、週末の遠出にはガソリンエンジンを利用することで長距離走行ができるという、EVと燃料車のいいとこ取りをした自動車。車両価格が高くなる、ゼロエミッションではないため補助金も少ないなどのデメリットはあるが、経済的に余裕のあるファミリー層には一定の支持を得ている。

広東省恵州市の銭さん(仮名)は、このようなPHEVに魅力を感じて、平日は往復30km程度の通勤にEVとして使い、週末は家族で長距離ドライブを楽しんでいた。ところが、近所の充電ステーションから突然の締め出しを食らって困惑している。

急速充電非対応の充電ステーションも存在をし、そちらに行くことも考えたが、急速充電非対応の充電ステーションは規模が小さく、路地の奥にあることが多く、なかなか見つかりにくい。しかも、対応台数が少ないので、行ってみたら満車ということがたびたびあり、使い勝手がよくない。また、最近では充電費だけでなく、時間に比例した駐車代も徴収するところが増えている。

銭さんのPHEVは満充電にするには最大5時間かかることがあり、かなりの出費となる。そこでネットで見たのが、バッテリーを急速充電対応に改造してしまうキットだった。3000元台で購入ができ、改造は自分でもできる。使ってみると、効果は抜群で、30分で満充電になる。銭さんはもっと速く改造しておけばよかったと感じている。

タオバオで発売されているバッテリー改造キットの広告。満充電に8時間かかる宏光MINI EVでも50分で満充電にできるというふれこみだ。

 

改造キットを使っても締め出される宏光MINI EV

深圳市の鐘さん(仮名)は、人気の宏光MINI EVを今年3月に購入した。非常に気に入っているが、唯一の問題は急速充電に対応をしていないため、満充電にするには最大で8時間から9時間かかることだ。自宅で充電ができれば問題がないが、鐘さんは街中の充電ステーションを利用するしかない。それが唯一の問題だった。

すると、友人が、改造キットを使えば充電時間が短くなると教えてくれ、実際に改造してみると、30分から40分で満充電になるようになった。

しかし、それでも急速充電ステーションからは利用を断られる。急速充電に対応していると言っても、「宏光MINI EVは利用禁止になっている」と言われるばかりだ。鐘さんは不公平だと感じ、消費者問題相談ホットライン「12345」に苦情を入れた。

 

メディアは改造キットの危険性を警告

しかし、誰もが思うのが、このような改造キットは危険ではないのかということだ。バッテリーはそのままで充電ソケットだけを急速充電対応のものに変え、急速充電を行う。バッテリーの劣化が早い程度ならまだしも、発熱や発火の危険はないのだろうか。

すでに多くのメディアがこの改造による危険性を警告している。充電ステーションは充電に異常があると充電を停止する回路が組み込まれているため、すぐに発火事故につながる可能性は極めて低いが、このような改造による急速充電を繰り返すと、バッテリーが異常劣化をし、いつ発火事故が起きてもおかしくない状態になる可能性があるという。

また、直接的には自動車の電気系統や充電ステーションの電気系統を損傷する可能性が高い。その場合、自分の車の修理費だけでなく、充電ステーションから損害賠償を求められることになる。現在の充電ステーションは、ナンバー読み取りや監視カメラで管理をしているため、逃げることはほとんど不可能だ。

車両保険に入っている場合でも、改造は保険会社の想定外であり、多くの場合、保険契約で補償の対象外になっている。

急速充電ステーションが、PHEVや宏光MINI EVの利用を断っているのは、充電時間が長く利益が出ないということもあるが、最近はこのような改造をしている車も増えたため、充電設備に損傷が出ることを防ぐという理由もあるようだ。

▲改造キットの一式。バッテリー本来の制御回路をバイパスして、直接バッテリーに急速充電をしてしまう。素人が考えても、非常に危険なのではないかと不安になるが、これが売れている。

 

業界、監督期間も動き出した改造キット

各メディア、各自動車メーカーはこのような改造はきわめて危険であるため、決してしないでほしいと訴えているが、現在、法的には規定がないため、改造だけで違法性を問うことはできず、ECでは改造キットが未だに販売し続けられている。

この問題を放置すると、人命に関わる大きな発火事故にもつながりかねないため、業界、監督機関などが調査に乗り出している。

▲改造したバッテリーで充電をする時は、本来の充電ソケットではなく、ボンネットを開けて、改造キットの充電ソケットに接続する。メディアでも非常に危険であり、使用しないように啓蒙をしている。