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乗車コード、健康コード、陰性証明、ワクチン履歴などを1つのQRコードにまとめるワンコード通行が全国に広がる

現在、感染が拡大している都市で地下鉄に乗るのはたいへんな面倒が伴う。健康コード、陰性証明、ワクチン履歴、行程コードなど複数の感染対策アプリを次々と立ち上げ確認を受けないと改札にたどり着くことができない。そこで、乗車コードまで含めて1つのQRコードで全情報を表示するワンコード通行が全国に広がりつつあると雷科技が報じた。

 

地下鉄に乗るのに必要な荷物検査、健康コード、陰性証明、行程コード

今、感染が拡大している都市で、地下鉄に乗るのはかなり面倒なことになっている。元々、地下鉄に乗る前には治安維持のために、荷物の保安検査があった。空港と同じようなX線スキャナーが置かれ、そこに荷物を置いて検査を受けなければならない。持っているバッグが口が大きく開けられるものであれば、職員に中を見せて検査の代わりとすることもできる。

現在は、それに加えて、健康コードも見せなければならない。健康コードは、陽性者と同じ携帯電話基地局を一定時間以上使っていたというデータから、感染のリスクを赤、黄色、緑の3段階で評価したもの。安全を示す緑でなければ地下鉄に乗ることはできない。この健康コードが緑であることを職員に目視確認してもらう必要がある。

さらに、感染が再拡大をした北京市では、48時間以内のPCR検査陰性証明がないと地下鉄に乗ることができない。これも職員に見せて確認をしてもらう必要があった。

まだ終わらない。さらに、行程コードを専用機器にスキャンさせる必要がある。これは14日以内の北京市外への行動履歴で、訪れた省市などのデータが記録をされている。

ここまで行って、ようやく改札に辿り着くことができ、改札を通ることができる。ここまでで使うアプリも健康コードと陰性証明が「健康宝」アプリ、行程コードが「行程コード」、さらに乗車賃を支払う乗車コードアプリを開かなければならない。

 

地下鉄に乗るのをあきらめる人も

また、スマートフォンを持っていないお年寄りや子どもがいる場合はより面倒になる。健康コードと陰性証明を表示する健康宝アプリには、家族の身分証番号を入力すると、家族の健康コード、陰性証明を表示する機能がある。つまり、まずは自分の健康コード、陰性証明を見せて、それから家族用に切り替えて、健康コード、陰性証明を見せる必要がある。

このような面倒により、感染が収まって経済活動が再開すると、地下鉄の改札には渋滞ができるようになった。特に朝と夕方のラッシュ時には、もはや地下鉄は乗れないとあきらめてバスやタクシーなどの地上の公共交通を利用する人も増えている。

▲深圳市のワンコード通行。1つのQRコードに健康コードや陰性証明などの情報が含まれ、直接改札でスキャンすることができる。感染対策上の問題がある場合は改札が開かない。職員が健康情報を目視確認する必要がなくなった。

 

複数の健康情報をひとつにまとめる「健康宝」アプリ

当然ながら、このような複数の情報をひとつひとつ見せていくというのは合理的ではなく、1つの画面で複数の情報をまとめて表示させるようにするという改善が行われている。

北京市の「健康宝」アプリもそのひとつで、健康コード、PCR検査歴、ワクチン履歴の3つの情報をまとめて表示するように改善された。さらに、顔写真も表示する仕組みになっているので、他人のスマホを借りて通り抜けるということもできなくなっている。

また、健康リスクには「異常なし」(緑)、「自宅観察」(黄)、「集中隔離」(赤)とわかりすい言葉と色による表示になった。

北京市が利用している健康宝アプリ。健康コード、陰性証明、ワクチン履歴などが顔写真つきで表示される。いくつものアプリを次々と起動する面倒がなくなった。

 

乗車コードもまとめるワンコード通行が各都市に普及

さらに、今度はこのような健康情報と乗車コードをひとつのQRコードにまとめる「ワンコード通行」が全国で進んでいる。乗客は荷物検査を受けたら、直接改札に向かうことができ、乗車用ワンコードを改札にかざす。QRコードには健康コード情報も含まれているため、健康リスクや陰性証明が乗車不可の状態であった場合は、改札が開かない。問題がない場合は、改札が開いて、そのまま乗車できるというものだ。

つまり、人が健康コードを目視して判断するのではなく、改札システム側がチェックをして、改札の開け閉めで対応をする。

北京市でも、アリペイの乗車コードがこのワンコードに対応し、あらかじめ健康宝と紐付けをしておくことで、健康情報を盛り込んだ乗車コードを表示するようになった。

QRコードに乗車コード、健康情報を盛り込むのはフォーマットの問題だけなので難しくはない。改札側のシステムは改変する必要があるが、健康コードによるチェック段階を増やすだけなので大きな改修ではない。

これで、コロナ前と同じ感覚で地下鉄を利用することができ、なおかつ、人が健康コードを目視確認するよりも正確に健康情報を確認できる。今後、各都市で、このような乗車コードと健康コードの統合が進んでいくことになる。

▲アリペイの地下鉄の乗車コードを開くと、健康コードの情報と紐付けをして欲しい旨の表示がでる。紐付けをすれば、直接改札に向かうことができるようになる。