中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

スターバックス中心のカフェ業界に激震。テーマは下沈市場。郵便局や蜜雪氷城も参戦

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今回は、カフェについてご紹介します。

中国のカフェについては、これまでご紹介しないままできました。「vol.009:潜在顧客を掘り起こし、リピーターを育成するモバイルオーダー」で、急成長をしてスターバックスを脅かす存在になった瑞幸珈琲(ルイシン、ラッキンコーヒー)についてご紹介したぐらいです。

喜茶(シーチャー、ヘイティー)などのタピオカミルクティーやアレンジ中国茶のスタンドについては「vol.052:定着をする新中国茶カフェ。鍵は「品質」「ネット」「アート」」でご紹介しました。喜茶の成功の理由は、高品質の材料を使ったドリンクを提供しながら、同時にカップやバッグのデザインにも気を配り、味と体験の両面を追求したことです。特にフルーツティークリームチーズトッピングなどのアレンジ中国茶は、それまでの伝統的な中国茶の楽しみ方を大きく変えました。この現象は、「中国茶のドリンク化」と呼ばれています。

「vol.087:洗脳神曲「蜜雪氷城」の背後に隠されたプロモーションロジック」では、低価格でレモン水やソフトクリームを提供し、地方都市などの下沈市場で成功をしたドリンクスタンド「蜜雪氷城」(ミーシュエビンチャン)をご紹介しました。低価格にすることで、空白地帯になっていた下沈市場、学生などの可処分所得の小さい消費者に浸透していくことに成功しました。

読者の方にご提案をいただいた「海倫司」(へレンズ)については「vol.111:夜間経済とほろ酔い文化。「酒+X」店舗体験で変貌するバー業界」でご紹介し、バーが下沈市場に浸透していったことをご紹介しました。また、へレンズで提供しているのは低アルコール飲料で、アレンジされた「お酒のドリンク化」でもありました。

つまり、カフェ周辺の中国茶、ドリンクスタンド、バーでは、いずれも「ドリンク化」と「下沈化」の2つが起きているのです。だとしたら、カフェだって、この2つが起きてまったくおかしくないと考えるのが常識です。

それが起こり始めました。それが今回、カフェについてご紹介をする理由です。

 

中国はこの20年で別の国といっていいほど変わりましたが、最も大きく変わったのがコーヒーの習慣かもしれません。

私が初めて中国に行った時、困ったのはコーヒーが飲みたくなって仕方がなくなったことでした。自分にこんなにもコーヒーの禁断症状が出るのだと初めて気づいてびっくりしました。しかし、当時の中国にカフェなどありません。北京には故宮博物院の中にスターバックスがありましたし、上海にはスターバックスが出店し、英国のコスタコーヒーも店舗を出していましたが、数は多くありません。スマートフォンもない時代なので、どこにあるのかを調べるには、ホテルに戻り、パソコンを起動しなければなりません。

スーパーにインスタントコーヒーを買いに行くと、なぜかどれもこれもミント入りなのです。おそらく中国人にコーヒーを飲む習慣がないために、ストレートのコーヒーでは売れないだろうと工夫をしたのだと思います。飲んでみても、コーヒーらしい味がほのかにするだけで、ほとんどミントの強い味しかしません。

上海のいちばんの繁華街である南京大路に上島コーヒーがありました。そこでようやくまともなコーヒーを飲むことができましたが、値段はとてつもなく高く(記憶が曖昧ですが100元を超えていたと思います。普通の飲み物の10倍ぐらいの感覚です)、客は私たちだけで閑散としていました。

バスに乗っていてスターバックスの店舗を見かけた時は、わざわざ途中下車してコーヒーを飲んだ記憶もあります。あの時は、スターバックスの店舗がまるで砂漠のオアシスのように感じました。

 

これがわずか20年前の話です。今、上海は世界でも稀に見るカフェ都市です。カフェが6913店もあり、世界一カフェの多い都市になっています。東京の2倍弱、ニューヨークの4倍以上です。上海は人口が2700万人もいるので、1万人あたりのカフェ店数に直しても、東京をわずかに上回り、ニューヨークを大きく上回っています。

 

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▲世界各国のカフェ数と、1万人あたりのカフェ数の比較。上海は世界一のカフェ都市になっている。人口あたりのカフェ数でもニューヨークや東京を上回っている。

 

スターバックスは、以前は中国市場にあまり積極的に適応しようとしてきませんでした。店内で使われるさまざまな用語=コーヒーの種類名やテイクアウトなどの専門用語も中国でよく使われる用語ではなく、英語の直訳的な独自用語を使うため、戸惑う人も多かったのですが、改善しようとはせず、スターバックス文化を押し通していました。

例えば、中国の一般商店が、銀聯カードとアリペイ、WeChatペイのスマホ決済に対応するようになっても、スターバックスは長い間、現金と国際ブランドのクレジットカード決済にしか対応していませんでした。

それがラッキンコーヒーが登場してスターバックスの地位が脅かされると、スターバックスは見事に鋭敏に反応しました。スマホ決済に対応するだけでなく、アリババと提携してデリバリーにも対応。さらに、スターバックスの将来の最大の市場は中国になると公言して、高級業態であるリザーブロースタリー(焙煎工場併設カフェ)を上海に開店します。これはシアトルに続く2号店で、スターバックスがいかに中国市場を重要視しているかを示しています。東京のリザーブロースタリーは上海の次に開店されました。

このような動きが中国のコーヒー熱をさらに過熱させることになり、新たなプレイヤーもどんどん登場してきています。すでにプレイヤーが多すぎて過当競争になっているのではないかと思うほどです。そこで、「ドリンク化」「下沈化」の2つが起こり始めています。

今回は、中国の現在のカフェ市場の状況をご紹介します。

 

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vol.111:夜間経済とほろ酔い文化。「酒+X」店舗体験で変貌するバー業界

vol.112:アリババ新小売へのスーパーの逆襲が始まった。YHDOSと大潤発2.0

vol.113:中国ビジネスに不可欠のWeChat。なぜWeChatは消費者ビジネスに使われるのか