中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

カフェチェーンが大学キャンパス内に出店。そのメリット3つと、デメリットを解消する3つの工夫

ラッキーカップ、ラッキンコーヒー、スターバックスなどのカフェチェーンが大学キャンパス内への出店を進めている。大学は関係者以外は入れず、長期休暇があり、ビジネスには適していないように見える。それでもカフェチェーンは大学という場所に魅力を感じていると咖門が報じた。

 

カフェチェーンが大学キャンパス内に出店

激安ドリンクスタンドチェーン「蜜雪氷城」(ミーシュエ、MIXUE)のサブブランド「幸運珈」(シンユインカー、ラッキーカップ)の店舗数が2300店舗を超えた。そのうち、500店舗は大学のキャンパス内にある。ラッキーカップの公式サイトでも、「ラッキーカップをすべての大学、すべての県級都市、すべての町に」というスローガンが掲載されている。

また、店舗数No.1の「瑞幸珈琲」(ルイシン、Luckin Coffee)は店舗数が1万店舗を突破したが、そのうちの約1000店舗はキャンパス内にある。

さらに、スターバックス上海交通大学復旦大学、天津理工大学などに出店をした。Mannerは上海松江大学、上海大学、華東師範大学に、M Standは上海財経大学に出店をするなど、カフェの大学キャンパス店が増え続けている。

また、古茗(グーミン、GoodMe)、蜜雪氷城、CoCo都可などの中国茶ドリンクカフェもキャンパス出店を始めている。

▲蜜雪氷城のサブブランド「幸運珈」は、すでに大学キャンパスに500店舗を出店している。幸運珈では、すべての大学、すべての県、すべての街に出店することを目標として掲げている。

 

関係者以外は入れないキャンパスになぜ出店?

現在では、多くの大学が、関係者以外は立ち入りできないようにしている。キャンパスに入る時は、受付で手続きをしなければならない。つまり、キャンパス内に出店をしてしまうと、来店客は大学関係者のみになってしまう。そういうデメリットがありながら、各カフェチェーンはなぜ出店を進めるのだろうか。

▲大学キャンパス内には雑貨屋などの小さな商店街のような一角がある。そのような場所にも幸運珈はなじみやすい。隣は蜜雪氷城。

▲幸運珈の大学内店舗。価格も10元以下と安いため、コンビニのコーヒーがライバルになっている。

 

大学内に出店する3つのメリット

その理由は3つある。

1)大学は市場として大きい

教育部の統計によると、2021年の学部生、大学院生の在籍学生数は4183万人に達している。これに教員が187万人、職員が275万人いる。つまり、4500万人市場であり、なおかつコーヒーや中国茶ドリンクをよく消費をする人たちだ。そもそも市場として大きいということがある。

しかも、大学生は学生寮に住むのが原則で、多くの大学生が24時間のうちのほとんどの時間をキャンパス内ですごす。テイクアウトや学生寮へのデリバリー需要も強い。

2)最初のカフェブランドとなることができる

中国では高校までは学校も親も厳しく、中学生や高校生が街中で遊んでいる姿を見かけることは少ない。そのため、カフェに行くというのも、大学生になって初めて経験をするという人が多い。つまり、キャンパス内のカフェは、学生にとって「人生で初めてのカフェ体験」になる。ここで、しっかりと学生の心をつかまえることができれば、社会人になってからも利用をしてもらえる。長期マーケティングとしてキャンパス出店にはメリットがある。

3)アンテナショップとして活用

学生たちは若く流行に敏感で、新しいものが好きだ。また、同級生たちとSNSで頻繁に交流をし、伝播力も高い。そのため、新メニューの反応データをとるのに最適な消費者群になる。現在、ラッキンコーヒーでは、全店舗でココナッツラテが売れ筋メニューとなり、他のカフェも追従をし始めているが、当初はキャンパス店でテスト販売をし、強い反応を得たことから全店舗展開をし成功をした。

▲ラッキンコーヒーの大学内の店舗。家賃などを優待してもらえるため、利益も出しやすい。

 

デメリットを克服する3つの工夫

一方で、キャンパス店には大きなデメリットがある。大学には冬休みと夏休みという長期の休暇があり、この時期にはキャンパス内は閑散としてしまい、カフェも来店客がいなくなる。

しかし、多くのカフェが3つの方法でこの問題を克服している。

1)休み中にキャンパスを活用する大学が増えている

長期休暇中に人が閑散としてしまうことに課題を感じているのは大学も同じだ。そのため、休暇中にオープンキャンパスセミナーなどを開催して、施設の有効活用をする大学が増えている。体育館やセミナーホールなどを貸し出し、収入を得ようとする試みだ。そのため、このような活動に積極的な大学であれば、休暇中でもそれなりに人がいるため、長期休暇による売上減をやわらげることができる。

2)団体購入の営業活動

大学内で数十人から数千人のイベントがある場合、カフェは大学に対して積極的に団体購入の営業活動をする。イベント参加者全員に飲料を提供したり、セミナールームにドリンクコーナーを設置して、各自自由に飲んでもらうなどだ。このような団体購入に関しては大学も協力的で、複数のイベントが開催される日は、通常時よりも売り上げが大きくなることもある。

3)周辺地域へのデリバリー

キャンパス店は、来店客は大学関係者のみだが、デリバリーは近隣の企業や住宅に対して行える。長期休暇中でもこのようなデリバリー需要は変わらない。

スターバックスは有名大学を中心に内装を工夫をした本格的なカフェを出店している。

 

出店条件も優遇されるキャンパス店

大学側もカフェの出店には好意的で、学内設備のひとつとして考え、家賃についても格安にしたり、無料にしているところもある。カフェ側では、立地条件としては難しいところもあるものの、得られるメリットが大きいと判断し、キャンパス出店が続いている。