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今回は、ケンタッキー・フライド・チキン(KFC)についてご紹介します。
なぜKFCをご紹介するのかというと、KFCは中国で唯一、下沈市場にまで展開をしている外資系ファストフードチェーンだからです。
中国の下沈市場は、沿岸部の大都市市場とはまったく違います。沿岸部の大都市ではライフスタイルも物価感も国際化をして、日本との都市部と大きな違いはもはやありませんが、中国の地方は別の国と言っていいほど違いがあります。収入や購買力などの指標をグラフなどで可視化をすると、地方市場は下の方に沈殿した表現になります。このため、下沈市場(シャーチェン)と呼ばれます。
そのため、多くの外資系チェーンが、下沈市場には進出をしません。下沈市場は購買力が弱く、人口密度も低いため、都市部と比べてあらゆるビジネス効率が低下をします。そのため、多くの外資系チェーンがフランチャイズをうまく活用した拡大手法を取ります。
例えば、大都市である一線都市は直営店にし、新一線都市でフランチャイズを募集します。フランチャイズの業績を分析して、利益が出ると見るとフランチャイズの募集を停止し、直営店を出店していきます。そして、今度は二線都市でフランチャイズを募集します。こうして、フランチャイズをうまく活用しながら、拡大をしていきますが、多くの場合は二線都市あたりで拡大がとまります。
マクドナルドが約3500店舗で、まさにこのパターンになっています。スターバックスも6000店舗でかなり拡大はしていますが、都市部には集中した多店舗展開をするからで、下沈市場にはほとんど拡大はしていません。
ところが、KFCは8700店舗であり、かなり小さな街に行ってもKFCの店舗を見つけることができます。初めて知った西洋式ファストフードがKFCという中国人も少なくありません。
「vol.154:中国に本気を出すスターバックス。3000店の新規出店。地方都市の下沈市場で、スタバは受け入れられるのか」で、スターバックスの大胆な店舗拡大計画をご紹介しました。2025年までに300都市9000店舗にするという計画です。
この計画は成功するでしょうか?もちろん、スターバックスは勝算があるからこそ、この計画を打ち出したのだと思います。しかし、常識では、スターバックスが従来からのスターバックス文化を維持して、そのままの形で下沈市場に進出をしたら、とても受け入れられるとは思えません。下沈市場は、いまだに道端でドリンクが1杯2元、3元で売っている世界です。そこにいくらおいしいからと言って1杯30元以上もするようなスターバックスのコーヒーを飲む人がいるとは思えません。
では、スターバックスはスターバックス文化を下沈市場に適合をさせ、例えばスタンド店舗にして1杯10元ほどで販売するのでしょうか?だとしたら受け入れられる可能性はじゅうぶんありますが、スターバックスのブランドが毀損してしまいます。普通であれば、サブブランドを立てて進出しようと考えるはずですが、そのような発表は特にありません。
あるいは、そう思ってしまうのは、私の頭が古いだけで、下沈市場の人々もスターバックスを待ち望んでいるのかもしれません。30年ほど前、サントリーがペットボトル入りのウーロン茶を中国のコンビニやスーパーで発売したところ、大人たちはびっくりしました。「冷たいお茶を飲む人なんて、中国にはいませんよ!」と言うのです。その通りで、当時の中国はお茶というのは熱くして飲むもので、夏の暑い盛りには緑茶などのさっぱりとした味のお茶を飲めば涼しくなるというのが常識でした。
しかし、冷たいウーロン茶は若者を中心に売れ、今では冷たいお茶はあたりまえで、夏には冷たい中国茶ドリンクを若者から中高年まで飲むようになっています。
飲食の習慣は、意外に簡単に変わるのです。ですので、スターバックス文化は何も変えることなく、下沈市場でも受け入れられるのかもしれません。
いずれにしても、非常に注目される動きです。そこで、今回は、すでに下沈市場への進出に成功をしているKFCが、そのために何をしてきたのかをご紹介します。このKFCのストーリーを通じて、みなさんに下沈市場の特徴とは何か、そして進出をするには何が必要なのかということをご紹介できたらと考えています。
今回は、下沈市場の攻略に成功したKFCについてご紹介します。
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