中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国の自動運転テクノロジーの起点となっているのは、やはり百度

中国で進む自動運転。すでに複数都市で、自動運転タクシーに市民が乗車できる段階まで進み、正式営業も時間の問題になっている。自動運転関連のスタートアップも多く生まれているが、その多くが百度出身者によるもの。百度が、中国の自動運転人材の養成機関になっていると新智駕が報じた。

 

AIへの転換に成功した百度

2019年には経営状態に黄色信号が灯った百度バイドゥ)だが、2020年には業績が回復し、2018年の水準に戻った。しかし、中身は同じではない。以前は検索広告が主軸事業だったが、現在の主軸事業は百度クラウドを中心に、アポロ自動運転プラットフォーム、百度地図、音声アシスタント「小度」などを制御するAI事業が中心になっている。百度はAI事業への転換に成功した。

特に、自動運転の開発については、中国の「士官学校」としても機能をしている。百度で自動運転技術の研究を行い、辞職後、関連する起業をするという人が多いのだ。数ある自動運転系スタートアップも、創業者が百度出身であるケースが多くなっている。

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百度の営業収入と利益の推移。2019年は利益が赤字寸前まで落ち込み、経営危機が叫ばれたが、2020年には回復をした。しかし、メインの事業内容は、検索広告からクラウドAIになっている。見事に時代の変化に合わせて、百度は変わることができた。創業者の李彦宏(リー・イエンホン、ロビン・リー)は、第二創業という言葉を使っている。

 

中国の自動運転の核となった百度ディープラーニングラボ

自動運転は、2009年にグーグルが自動運転事業部(現在のウェイモ)を設立し、自動運転という技術に世界の注目が集まった。2013年になると、GE、フォード、メルセデスBMWなどが自動運転技術の研究を開始、百度もこの頃にディープラーニングラボから自動運転研究チームを独立させている。そして、2015年頃から、百度の自動運転チームから独立をして起業する人が出てくるようになった。百度出身の自動運転関係者には次のような人たちがいる。

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▲北京、長沙などで全面開放試験運行が行われている百度のロボタクシー。市民が自由に利用できる状態で、正式営業目前の段階まで進んでいる。

 

毫末智行:顧維CEO

長城汽車傘下の自動運転企業「毫末智行」(ハオモー)は、CEOに百度出身の顧維(グー・ウェイハオ)を迎えた。

顧維は2003年に百度に入社し、L3自動運転やコネクティッドカー、マップ技術などの責任者を勤めてきた。2019年に、百度の組織改変があり、スマート自動車事業部は自動運転事業部に吸収されることになり、その時に、顧維は離職をしている。

2019年に、乗用車と低速物流の自動運転技術を開発する毫末智行が創業され、2021年には長城汽車の乗用車に自動運転機能が採用された。また、物流用自動運転カートも販売を始めている。

毫末智行は現在プレAラウンド投資を完了した。2023年に中国の創業版に上場する計画を立てている。

 

中智行:王勁創業者

グーグル中国の研究所副院長だった王勁(ワン・ジン)は、2010年に百度に移籍をして技術副総裁に就任した。2015年12月に、王勁が中心になって自動運転事業部を設立し、総経理に就任する。しかし、1年後、王勁の方向性と百度の方向性がずれ、王勁は百度を離職した。王勁は、自動運転事業部は将来独立企業にすべきで、主要なビジネスはロボタクシーだと考えていた。しかし、百度の考え方は違っていた。

そこで、王勁は、2017年4月に、米シリコンバレーで景馳科技(後の文遠知行)を設立して、自動運転技術の開発を進めた。2018年3月には、文遠知行を離れ、中智行(ジョンジー)を創業した。

 

地平線:余凱、黄暢、余軼男、徐偉

米国NEC研究所出身の余凱、黄暢の2人は、2012年に百度に入社し、自動運転の開発に従事する。2015年に辞職をして、地平線科技を設立した。2017年には余軼男が、2018年には徐偉が百度を辞職して地平線に加入した。2020年、地平線は中国で初めてAIチップを量産し、長安汽車への搭載が進められている。

 

小馬智行:彭軍、楼天城、李衡宇

小馬智行(シャオマー)は、2017年に北京で創業された。この時に、百度の研究者であった3人にが加入している。彭軍はグーグルから百度への転職組、楼天城は清華大学から百度米国研究所へ、李衡宇は百度で広告システムの開発を行なっていた。

小馬智行は、米国カリフォルニア州交通管理局の自動運転技術評価でも、ワールドワイドで第4位の成績を取っている。現在、小馬智行の企業価値は60億ドルを超えている。

 

文遠知行:韓旭、陳世熹

ミズーリ大学の教職にいた韓旭は、2014年に百度の米国研究所に入所し、自動運転事業部の首席サイエンティストとなった。2017年4月に、当時の景馳科技に入社し、CTOを勤め、王勁が離職するとCEOとなった。この時に、百度の自動運転事業部にいた陳世熹が文遠知行(ウェンユエン)に入社をしてきた。

文遠知行は、現在、自動運転ミニバスの実用に力を入れている。文遠知行には、百度出身のエンジニアが多い。

 

人材の供給源ともなっている百度

この他、Roadstar.ai、Momenta、白犀牛、DeepMap、領駿科技、普思英察、寛凳科技、禾多科技、主線科技、Innovusion、Driva.aiなどの自動運転関連企業の創業者、CEO、主要エンジニアが百度出身だ。

百度は豊富な資金力を活かして、自動運転技術をロボタクシーなどの量産にいち早く結びつけただけでなく、中国の自動運転テクノロジーに大量の人材も提供している。

 

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