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百度の業績が回復。検索広告からAI事業への転換を進める百度

百度の業績が回復をしている。検索広告からスタートした百度は、AI事業への転換を図り、2019年には業績不振に苦しんだ。中国AIは、技術力と発想力は高いものの産業応用がなかなか進まず、マネタイズが痛点だと言われていた。その中で、百度がAI事業で業績回復をしたことは、中国AIにとっても大きな出来事だと新視財経が報じた。

 

百度の業績回復が鮮明に

百度の復調が鮮明になっている。2020年の財務報告書によると、営業収入は1070.74億元(約1.78兆円)となり、2019年の1074.13億元から微増したにすぎないが、純利益は2019年に20.57億元と大きく落ち込んだものが、2020年には224.72億元(約3700億円)にまで回復している。これは、一昨年の2018年の275.73億元に近い水準で、2019年の危機的状況は脱したと見ることができる。

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百度の業績が回復をしている。2019年は赤字寸前にまで落ち込んだが、AI事業に転換をし、再び利益の出る企業になっている。

 

AI事業に転換をしている百度

百度は、グーグルとほぼ同じ事業ドメインで中国で検索広告のビジネスを展開し、一気に成長したが、創業者の李彦宏(リ・イエンホン、ロビン・リー)は、「AI先生」と呼ばれるほど、百度創業当時からAIに強い関心があった。

検索広告で百度が成功すると、ロビン・リーは積極的にAI事業に挑戦をしていった。その象徴的な存在が、「アポロ」自動運転プラットフォームだ。すでにアポロ仕様のロボタクシーが長沙、北京などで全面開放試験(指定された地域内で、市民を乗客として乗せる運用。営業運行の一歩手前)を行っている他、ロボバスの販売を始めている。

検索広告からAIに転換する間で、利益が大きく落ち込み、先行きが危ぶまれたが、AI事業とクラウド事業がようやく収益を出せるようになってきた。AI先生が目指す世界観までにはまだまだ道のりは遠いが、背水の陣で大転換をしている最中で、なんとか第一歩を踏み出すことができたという段階だ。

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百度の自動運転プラットフォーム「アポロ」によるロボタクシー。すでに市民に開放された試験運行が各都市で行われ、営業運行目前になっている。

 

マネタイズが痛点になっていた中国AI

2019年、2020年は、中国のAI開発にとって大きく躍進をした年で、百度を始めにさまざまなAI系のスタートアップが生まれている。しかし、どこも苦しんでいるのがマネタイズだ。技術力は高くても、うまく収益に結びつけることができない。そこがAI事業の難しさになっているが、AI に大転換をした百度が業績を以前の水準まで戻したことは大きい。

百度のAI事業の構造は、アポロ自動運転プラットフォーム、百度地図、音声アシスタント「小度」(シャオドゥ)というAIツールを、百度クラウドで処理をするというものになっている。すでにこれらを利用した自動車製造の企業を設立することを公表している。

百度は2021年Q1の営業収入を260億元から285億元(約4800億円)と予測しており、これは前年同時期から15%から25%の伸びになる。

BATの一角とされながら、2019年の業績不振で、ファーウェイ(Huawei)を入れたHATが中国のテックジャイアントに相応しいとも言われるようになった中で、再び百度が成長の兆しを見せている。それも以前の検索広告ではなく、AI企業としてだ。ロビン・リーは、2度、百度を起業したと言っても過言ではない。

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▲BAT3社の売上を比較すると、百度は他の2社に比べて小さい。それでもテックジャイアント3強に咥えられているのは、高い技術力を持っているからだ。中国のテック企業には、百度出身のエンジニアがたくさんいる。