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菓子メーカー「三只松鼠」がTik Tokライブコマースで10億円の売上。直販ライブコマースに活路を見出す

中国で人気のある菓子メーカー「三只松鼠」が中国版Tik Tok「抖音」(ドウイン)のライブコマースで、春節前の1月、年貨期間の20日間という短い期間に6500万元(約10.9億円)を売り上げ、食品部門で1位となり、すべてのライブコマースの中でも第2位となった。しかし、その陰には、4年にわたるライブコマースに対する準備期間があったと億邦動力網が報じた。

 

挫折後、ライブコマースに活路、上場へ

「三只松鼠」(サンジーソンシュー、Three Squirrels)は、2012年6月に創業したナッツ、ドライフルーツなどを中心とした菓子メーカー。社名の通り、三匹のリスのキャラクターを前面に打ち出し、オンラインを中心に販売をしてきた。日本でもアマゾンや楽天市場を通じて販売をしている。

そして、2019年7月には、深圳証券取引所の新興企業向け市場「創業版」(チャイネクスト)に上場をした。

しかし、販路についてはアリババの天猫(Tモール)、京東の旗艦店などのオンライン店舗の他、実店舗の展開など、急速な拡大をしたため、品質低下を招き、2017年に上場準備を進めている中、国家食品薬品監督管理局から品質問題を指摘されるという打撃を受け、いったん上場計画を取りやめている。

それがライブコマースに活路を見出し、再び成長をし、上場を果たすことになった。

 

インフルエンサーの委託販売から、自分たちのライブコマースへ

三只松鼠は、2017年にタオバオライブでライブコマースを始めている。この時には、タオバオ達人に商品を託して販売してもらう方式で、人気の高かったタオバオ達人「薇」(ウェイヤー)と契約をすることを試みた。

2018年には、タオバオライブでの販売を始める。薇を始めとするトップインフルエンサーに商品を託して販売をしてもらう形式だ。11月11日の独身の日にはタオバオライブのライブコマースが成功する。同時にタオバオに店舗を開設して、通常時も購入できるようにした。

2019年になると、台頭してきたショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン、Tik Tok)、「快手」に、同社のキャラクターなどを使ったムービーを配信し、プロモーションを行うことにして専任チームを設置。

2020年には、ライブコマースを三只松鼠の重要な戦略販売チャネルと定め、ブランドデジタル化チームを設置、インフルエンサーに委託をするのではなく、自社でライブコマース番組を制作する方向に進み始めた。担当社員が販売する形式、CEOが直接販売をする形式、同社のキャラクターが販売をするバーチャルライブコマースなどさまざまな方法が試された。

つまり、当初はトップインフルエンサーに商品を委託して、販売してもらう方式のライブコマースだったが、最終的には、自分たちでライブコマース番組を制作する形式に変化している。ライブコマースの委託販売から直販に変わったことになる。

2020年、この直販ライブコマースで、タオバオライブでは1600回で9000万元、京東ライブでは571回で6400万元、Tik Tokでは109回で879万元、そして、今年2021年1月の年貨キャンペーンでは20日間で6500万元を売り上げた。

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▲三只松鼠のTik Tokでのライブコマース。出演をしているのは社員。トークなども独自のシナリオを作り上げている。

 

ブランド価値を守るには直販ライブコマース

三只松鼠は、2017年当初からタオバオ達人に課題を感じていたという。担当者はこう振り返る。「当時は、タオバオ達人に委託するライブコマースが主流で、流通総額も大きかったので、当然の選択肢でした。しかし、タオバオ達人のライブコマースの内容は雑なこともあり、我々が大切にしている商品イメージを毀損してしまうこともありました。しかも、タオバオライブの場合、タオバオ達人に対する委託料が売上の14%もあり、利益が大きく低下してしまいます。そのため、自社による直販ライブコマースを模索するようになりました」。

しかし、直販ライブコマースの道は簡単ではなかった。タオバオライブでは、すでに薇や李佳琦といったとップインフルエンサーが大量の流量を確保しており、三只松鼠が直販ライブコマースを行っても、なかなか流量を獲得できない。そこにTik Tokが新たにライブコマースの仕組みを始めた。新しいプラットフォームであれば勝機はあると考え、三只松鼠はTik Tokでの直販ライブコマースに注力をしていくことになる。

 

コンテンツ内容に工夫が必要なTik Tokライブコマース

三只松鼠では、現在、タオバオ、京東、Tik Tokの3つのプラットフォームで直販ライブコマースを行っている。しかし、Tik Tokのライブコマースは、他の2つとは違っているという。「最も大きな違いは、タオバオと京東のライブコマースの視聴者は、すでに三只松鼠の商品を購入するつもりがあるということです。一方、Tik Tokのライブコマースはそうではありません。ライブコマースの内容に工夫をする必要があります」。

タオバオ、京東のライブコマースは、多くの場合、商品名で検索をしてライブコマースを選び、視聴して購入をする。しかし、Tik Tokの場合、検索をしてライブコマースに入る人はそう多くない。通常のショートムービータイムラインにライブコマースも配信され、面白いと思った人がタップをすると、ライブコマースに入れる仕組みだ。そのため、まず映像で興味を持たせなければならないし、いったんライブコマースを視聴したらアカウントをフォローしてもらえるようにする工夫をしなければならない。

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▲三只松鼠は3匹のリスをキャラクターとしている。キャラクターCGを使ったバーチャルライブコマースも実験的に行なっている。

 

オリジナルの言語体系を確立

三只松鼠では、Tik Tokのライブコマースに参入する前、Tik Tokのユーザープロフィールの分析を行い、三只松鼠の商品を購入する利用者は1億人だと見積もった。これを3億人にすることを目標に設定し、さまざまな施策を行っている。

ライブコマースに出演するスタッフの服装、道具、照明、音楽などを三只松鼠のブランドイメージに沿って試行錯誤をしている。また、スタッフのトークも「歓迎話術」「注目話術」「感謝話術」「質疑応答話術」「追加注文話術」の5つのシナリオを作成し、三只松鼠独自の言語体系を確立した。さらに、三只松鼠のIPであるリスのキャラクターを前面に打ち出すなどの工夫を行なっている。このキャラクターを使ったバーチャルライブコマースにも挑戦している。

現在、ライブコマースチームは15名。このチームがタオバオ、京東、Tik Tokのライブコマースを担当している。3つのプラットフォームで同じライブコマースを行うのではなく、それぞれのプラットフォームの特性にあったライブコマースを制作している。その努力が、Tik Tokライブコマースで、20日間で6500万元という大きな成果に結びついた。

Tik Tokのライブコマースで成功をすることは簡単ではい。しかし、その分、チームのクリエイティブは鍛えられる。その成果を、他のプラットフォームにも応用することで、三只松鼠は成功をした。