ライブコマースなどで商品を販売するライブ主。今までは、帯貨ライブ主などと呼ばれることが多かったが、人社部などが「インターネット販売師」という職業として正式に認定したと中国新聞網が報じた。
2人でタオバオライブの売上の10%を売る薇娅と李佳琦
ライブコマースなどで商品を販売するライブ主としては、薇娅(ウェイヤー)と李佳琦(リ・ジャーチ)の2人が有名だ。2人はアリババのEC「淘宝網」(タオバオ)のライブで、商品を選んで紹介するタオバオ達人として現在の地位を築いてきた。
アリババの財務報告書によると、2020年のタオバオライブでのGMV(流通総額)は約5000億元(約9兆円)だが、薇娅は310.9億元(約5600億円)、李佳琦は218.6億元(約4000億円)と、2人だけでタオバオライブのGMVの10%以上を生み出している。
問題も起き始めているライブコマース
しかし、問題も起き始めている。昨2021年11月11日の独身の日セールで、化粧品メーカーのロレアルは、李佳琦のライブコマースで、人気のフェイシャルパックを「今年最大力度」の価格で販売すると予告をした。最大力度という言葉が後で問題になったが、多くの人が「今年最大の割引」だと理解をした。10月20日にプレセールとして開催された李佳琦のライブコマースでは429元で販売をされ、確かに今までの価格よりはだいぶ安くなっている。しかし、11月11日にセールが幕開けするとロレアルは自社のEC店舗で同じものを257元で販売し、李佳琦のライブコマースで購入した消費者からクレームがつけられた。
李佳琦自身もロレアルを非難し、薇娅と李佳琦の2人はこの問題が解決するまで、ロレアルの商品を扱わないと宣言をした。2人に落ち度があるわけではないが、ロレアルとの間で意思疎通に問題が起きていることが伺われる。
さらに、ライブコマースでは売ろうとするあまり、誇大な説明をしてしまったり、商品知識がないために不正確な説明をして、購入後に問題が起きることも増え始めている。
タオバオ達人からSEOライブへ
さらに、タオバオ達人というスタイルも古くなり始めている。タオバオ達人は、商品を選ぶ目を持ったプロフェッショナルであり、消費者はその目利きを信頼して商品を購入する。
しかし、タオバオ以外にもECやショートムービープラットフォームがライブコマースに対応をしていくと、メーカーやブランドが直接ライブコマースを始めるようになる。このような直販ライブコマースでは、タレントなどではなく、メーカーの責任者が登場することが多い。消費者がライブコマースでさまざまな質問を投げかけても、責任者は嘘をつくことができない。そこを消費者は信頼をして購入する。このようなライブコマースは、俗にCEOライブなどと呼ばれる。
ロレアルの最低価格問題のようなことは、CEOライブでは起こらないか、万が一起こった場合は、不利益を得た消費者に差額分のクーポンか返金をすることになる。
5つの階級に分かれるインターネット販売師
このようなライブコマースの広がりを受けて、人力資源社会保障部、中央網信弁、国家広播電視総局は、共同して「インターネット販売師」という職業を新設することを発表した。
このインターネット販売師になるには義務教育を修了していることが条件で、5つの階級が設置された。さらに、このインターネット販売師は「選品員」「ライブ販売員」「映像制作員」「プラットフォーム管理員」の4つに分かれている。つまり、国家認定職業として「二級ライブ販売員」などと名乗れるようになる。
ひとつ上の級に昇格するには、「3年以上の実務経験+研修+試験」か「4年以上の経験+審査」のいずれかが必要となる。
認知されることは嬉しくも、管理されることが憂鬱
インターネット販売師が国家が認定する職業になったことに喜んでいる人たちもいる。真っ当な職業として認められたと感じるからだ。しかし、上部のインターネット販売師は決して明るい気持ちだけではない。なぜなら、管理が厳しくなるからだ。昨2021年には11月に林珊珊と雪梨、12月には薇娅と李佳琦に対して巨額の脱税が指摘をされた。特に薇娅に対しては、13.41億元(約240億円)の追徴金が課せられ、さらにタオバオ、ウェイボー、抖音などのアカウントも凍結されてしまった。まったく活動ができない状態で、このまま凍結が解除できなければ強制的に引退をせざるを得ない状態になっている。
職業として認知をされたということは、問題を起こせば、免許の停止処分を受け、仕事ができなくなることも意味をしている。自由に羽を伸ばしながら発展をしてきたライブコマースの世界も管理される時代になった。