中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ライブコマースはなぜ中国だけで人気なのか。その背後にあるECの成長の限界

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今回は、ライブコマースについてご紹介します。なぜ中国だけでライブコマースが人気となり、日本や米国では人気が出ないのか、その理由を考えます。

 

2018年頃から中国でライブコマースが広がり、コロナ禍により生活に定着をすると、ライブコマースは日本を含めた海外にも広がり始めました。ところが中国以外ではほとんどうまくいっていません。Facebookもライブショッピング機能を10月1日に停止することを発表しました。

米国のアマゾンもアマゾンライブ(https://www.amazon.com/live)を運営していて、今のところ続いていますが、その視聴者はあぜんとするような惨憺たるものです。米国時間とは時差があるため、米国のプライムタイムに見ることが少ないからかもしれませんが(米国の夕食後の時間は日本の早朝になる)、視聴者数が100人以下というライブコマースばかりです。視聴者数1桁もかなり見かけます。

日本で、インスタグラムを利用したライブコマースでは、数百人、数千人というものを見かけるようになりましたが、現在のところ、インスタグラムには小紅書(シャオホンシュー、RED)のような種草機能、つまりライブコマースなどに商品タグを埋め込む機能がなく、ECサイトへリンク誘導できるだけですので、実際に購入に至る人の割合=コンバージョンはかなり低いのではないかと想像しています。

内容を見ても、多くのブランドが、小売チャンネル、新規顧客の獲得というよりも、既存顧客に商品やブランドを紹介し、深く知ってもらうためのコミュニケーションツールとして使っているようです。この考え方は正しいと思います。すぐに視聴者数が増えたり、売上に結びつくことはなくても、地道に続けることで、ブランドの世界観を広げることができるかもしれません。

 

しかし、ライブコマースもビジネスとしてやっているのですから、投資効率が悪ければ、打ち切りの判断をしなければならくなります。Facebookの親会社であるメタはそういう判断が早い企業なので、他社に先駆けてサービス停止の判断をしたのでしょう。

なぜ、ライブコマースは中国では拡大する一方なのに、他国ではさっぱりなのでしょうか。いったい中国のライブコマースと他国のライブコマースにどのような違いがあるのでしょうか。今回は、この問題を考えてみたいと思います。

 

まず、中国のライブコマースの発展ぶりを見てみます。「2022年(上)中国ライブコマース市場データ報告」(網経社電子商務研究センター)に、ライブコマースの市場規模と2022年の予測値が掲載されています。

▲ライブコマースの市場規模の推移。2018年に大きく成長し、現在でも急成長を続けている。「2022年(上)中国ライブコマース市場データ報告」(網経社電子商務研究センター)より作成。

 

これによると、2021年のライブコマースの流通総額は2兆3615.1億元(約48.5兆円)という莫大な額になり、2022年は3兆4879億元になると予測されています。

注目していただきたいのは成長率です。2018年には589.5%成長という、7倍近い急成長をしています。つまり、時々「コロナにより流行したライブコマース」と言い方がされますが、厳密には正しくなく、2019年までにライブコマースはじゅうぶん成長をしていていたということです。ただし、それは一部の好きな人の間での流行であり、コロナ禍により、普通の人まで利用するごく当たり前の小売チャンネルに成長をしました。

 

このコロナ前のライブコマースとコロナ後のライブコマースでは、フェーズが大きく異なっています。

コロナ前は、アリババのEC「淘宝網」(タオバオ)のタオバオライブが中心で、タオバオで販売されている商品を、タオバオ達人と呼ばれる網紅(ワンホン、インフルエンサー)が紹介をして、販売するというスタイルのものでした。最も有名な網紅は、ライブコマースの女王「ウェイヤー」と口紅王子「リ・ジャーチ」で、ウェイヤーは2019年の11月11日の独身の日セールで、27億元(約410億円)の売上をあげた記録があります。ウェイヤーの手数料は15%から20%程度なので、「ウェイヤーは1日ライブコマースをするだけで、マンションが買える」とまでネットでは言われていましたが、それが嘘でないことが証明されました。

このようなタオバオ達人によるライブコマースは、「目利きのプロが厳選をした商品を紹介する」という買い物コンサルティング型です。ニセモノをつかまされたくない、コストパフォーマンスがいい商品を買いたいという人たちが、達人の紹介する商品を購入します。

 

ところが2020年のコロナ禍から、このような達人タイプのライブコマースではなく、ブランドが直接販売をする直販ライブコマースが主流になっていきます。ブランドのCEOが登場して、ライブコマースをする「CEOライブコマース」も珍しくありません。エアコンなどで有名な格力(グリー・エレクトリック)の董明珠CEO、スマートフォンの小米(シャオミ)の雷軍CEOも、ライブコマースに出演して、自ら商品の説明をしています。

また、農産物の場合は、生産者が登場して販売をするだけでなく、その地方の県長(県知事)がライブコマースに登場をしてきます。

このような責任のある人がライブコマースに登場することで、商品に対して信頼をし、購入するようになっていきます。

2021年11月には、ウェイヤー、リ・ジャーチの脱税が指摘をされ、巨額の追徴金が課せられました。特にウェイやーに対しては厳しく、追徴金は13.41億元という巨額のもので、さらに主要なSNSのアカウントも凍結をされ、ライブコマース活動ができなくなりました。

これを機に、達人タイプのライブコマースは衰退し、責任者が直接登場をするCEOライブコマースが人気となっていきます。

つまり、中国ライブコマースの歴史を簡単に振り返ると、タオバオタオバオライブを始め、ウェイヤーなどの達人の活躍で急速に市場が立ち上がり、2020年のコロナ禍で責任者が登場するCEOライブが人気となり、生活に定着にするようになりました。コロナ前のライブコマースの主役は、商品選びのプロの目を持った達人でしたが、コロナ後のライブコマースの主役はブランドです。

 

ではどうして、中国人はライブコマースで買い物をするのに、海外ではライブコマース人気がさっぱりなのでしょうか。

ひとつはライブコマースは、タイムシフトができない同期タイプのコンテンツであるということがあります。ライブコマースはテレビ放送と同じで、指定された時間に見なければなりません。見逃し配信も行われてますが、主要な商品は売り切れていることがほとんどです。時間指定をされると、普通の人にとっては見るのが難しいこともあります。また、ライブコマースのスケジュールも事前に知っておく必要があります。このような煩わしさがあるために、視聴者が集まらず、盛り上がらないのです。

では、どうして中国ではそれがうまくいくのでしょうか。今回は、中国でライブコマースが盛況な理由についてご紹介をします。

 

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