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アリババだけではない。ソフトバンクが投資をする中国企業

ソフトバンクがアリババの黎明期に大型投資をしたことは広く知られている。その投資効率は1000倍以上となり、世界で最も成功した投資案件と呼ばれることもある。しかし、ソフトバンクが投資をしている中国企業はアリババだけではない。中国で有望な産業、企業を万遍なく投資していると小鵬財経が報じた。

 

孫正義氏の最も成功した投資案件「アリババ」

中国のテックジャイアント「アリババ」に、ソフトバンクが投資をしていることは広く知られている。それもまだ「タオバオ」を始める前、企業同士をマッチングさせるBtoBサービスAlibaba.comをリリースしているだけのスタートアップ企業といってもいい段階で巨額の投資をしている。

現在ソフトバンクはアリババ株の26%を所有し、価値は1500億ドル(約16.1兆円)程度と見積もられ、孫正義氏の投資の中でも最も成功した投資案件だと言われる。

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▲ジャック・マーと孫正義氏。ソフトバンクが大型投資をしたことで、アリババは成長の軌道に乗ることができた。わずか6分間で投資を決めたと言われている。

 

わずか6分で決めたアリババへの投資

アリババがソフトバンクの投資を受けたのは2000年1月。しかし、このとき、アリババはすでに複数の投資家から500万ドルの投資を受けていて、ジャック・マーとしては当面の資金は足りていると感じていた。孫正義氏との面談では、投資をしてもらう必要性をさほど感じていなかったという。

そのため、ジャック・マーは、ビジネスやお金の話ではなく、自分の夢を一方的に語った。孫正義氏はそれが気に入ってしまったようだ。「自分と同じにおいをジャック・マーに感じた」と後に語っている。

ジャック・マーが一方的に夢を語り出して6分後、孫正義氏は「わかった。お金の話をしよう。いくら必要なの?」と遮った。孫正義氏が提示した投資金額は3000万ドルで、株式の49%を取得するというものだった。その桁違いの額にジャック・マー側が驚いた。あまりに高額で、あまりに株式比率が高く、その後のアリババの統治に問題が生じてしまうため、アリババは後から投資額を2000万ドルへの減額を申し出ている。

それでも、この潤沢な資金がアリババ成長のきっかけになったことは間違いない。2003年にはCtoCEC「淘宝」(タオバオ)をスタートさせ、アリババの急成長が始まっていく。

ソフトバンクの投資効率は1000倍以上で、世界でも最も成功した投資案件のひとつになっている。

 

旅行予約サイトCtripにも投資

ソフトバンクが投資をしている中国企業は、アリババだけではない。1999年に創業した携程旅行網(シエチャン、Ctrip)もそのひとつだ。中国工信部が発表している「中国インターネット企業100強」では、2019年には16位にランキングされている。上海を拠点とし、従業員は3万人。

いわゆる旅行予約サイトを運営しているが、中国では最も有名な予約サイトになっている。ソフトバンクは、ctripのAラウンド、Bラウンド投資を行っている。

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▲中国では最も広く使われている旅行予約サイトCtrip。これもソフトバンクが投資をしている。

 

医療系、AIにも投資

生命科学ビジネスを展開している華大基因(ホワダー、BGI)もソフトバンクが投資をしている中国企業のひとつ。

華大基因は1990年創業で、生命科学領域の最先端研究をし、健康、エネルギー、環境問題などにテクノロジーを提供する企業。

また、迪安診断も同じくソフトバンクが投資をしている。2001年に創業した医療検査を行う企業だ。全国に数十のラボを持ち、1万7000カ所の医療機関と契約を結んでいる。

2014年に創業した商湯科技(シャンタン)にもソフトバンクは投資をしている。人工知能ユニコーン企業だ。計算機視覚と深層学習の研究を行い、技術提供をする企業。ファーウェイ、小米、ホンダなどと戦略提携を行っている。

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▲ライフサイエンスなどの華大基因もソフトバンクが投資をしている中国企業のひとつ。

 

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▲医療検査を行う迪安診断。中国に数十箇所のラボを持ち、医療機関の求めに応じてさまざまな医療検査を行なっている。

 

幼児用品、広告企業にも

また、面白いところでは、1989年に創業をした好孩子(ハオハイズ)にも投資をしている。中国で最大の幼児子ども用品小売チェーンだ。単に販売をするだけでなく、幼児用品を研究、再定義し、製造から行っている。衣類のユニクロと同じ方式で、価格が安く、質が高いことから、若いママに人気になっている。中国のひとりっ子政策が廃止され、出産、育児に注目が集まった潮流にうまく乗ることができるている。

2003年に創業した分衆伝媒(フェンジョン)は、広告媒体企業。2005年には、中国の広告企業としては初めてナスダック上場を果たしている。

よく知られているのはエレベーターの広告だ。エレベーター横にディスプレイを置き、エレベーター待ちをしている人に向けて広告を表示する。230都市に260万パネルが設置されている。

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▲好孩子は幼児用品の製造販売をする企業。中国人は子どもにはお金をかけたがるので有望な産業のひとつになっている。

 

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▲分衆伝媒は広告企業。エレベーター横の隙間部分にディスプレイを設置し、エレベーター待ちの人に広告を表示する。ナスダック上場を果たしている。

 

有望な中国企業を網羅しているソフトバンクの投資

こうしてみると、ソフトバンクの投資は、中国の潮流をよく捉えていることがわかる。インターネットによるマッチングサービスを始めたアリババを始めとして、近年では医療、広告、人工知能は有望産業になっている。また、ひとりっ子政策が廃止された中国では、子どもを複数持つか、ひとりっ子であっても用品や教育にお金をかけるようになっており、幼児関連も有望視されている。

ジャック・マーと孫正義氏の6分間の伝説では、ジャック・マーの人柄に惚れて投資を決めたということになっているが、きちんと中国市場を調査し、業種と企業を絞り込んで投資を行っていることがわかる。

中国でもソフトバンク孫正義氏の名前は有名で、中国市場での存在感も増している。