中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

眼鏡や口紅をスマホで試着。リアル店舗並みの購入体験を提供するEC店舗

3月8日、ECで開催された「38女王節」が昨年の2倍以上の売れ行きと好調だった。リアル店舗での買い物を避け、ECで買い物をする人が増えた。天猫(Tmall)ではシステムを刷新し、商品抽選機能やARなどの機能が使えるようになり、利便性だけでなく、購入体験を提供するEC店舗が増えていると猟雲網が報じた。

 

コロナ感染時期でも、ECのセールは絶好調

3月8日は国際女性デー。国連によって制定された、女性の生き方を考える日だ。中国では、「婦女節」と呼ばれ、多くの企業で、女性社員は午後が半休となり、さまざまな集会やイベントに参加することが支援される。

しかし、実態は、多くの百貨店が、化粧品や衣類の女性用品のバーゲンセールを行う日になっている。アリババのEC「天猫」(Tmall)では、「38女王節」と呼ばれ、女性用品の大々的なセールが行われる。

女王節セールは、3月1日から8日まで行われた。今年は、新型コロナウイルスの影響が懸念されたが、すでに経済活動が復活しつつある3月上旬は、セールの対象となった2万種類の商品のいずれもが、昨年同時期の2倍以上の売れ行きとなり、好調だった。この時点では、リアルな百貨店にいき買い物をすることを避け、ECで購入することを選んだ人が多かったのだと思われる。

スマホでも買い物が楽しめるAR体験

盛況だったもうひとつの理由が、ARなどを利用し、スマホでの買い物の仕方が変わってきたことだ。単に商品を検索して、タップをして購入するのではなく、スマホで買い物の体験自体を楽しめるようになってきている。

天猫によると、このようなARテクノロジーを使った買い物を100万人以上の消費者が楽しんだという。

このようなことができるようになったのは、2019年6月に天猫のアリペイミニプグラムの仕組みがアップグレードされ、出店している店舗ごとにさまざまな試みができるようになっていたことが大きい。このため、女性用品を多く販売している店舗では、独自にAR機能を搭載するようになった。

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▲Tmallに出店するパーフェクトダイアリーでは、スマホによる口紅のAR試用機能を投入した。自分の顔をカメラで映すと、希望の商品の口紅が塗ったような映像を表示してくれる機能だ。

 

新型コロナの不安により歓迎された「AR試用」

化粧品を販売する「完美日記」(パーフェクトダイアリー)では、2019年10月にアリペイミニプロラム「天猫」内の旗艦店サイトをアップグレードし、口紅を試すことができるAR機能を搭載した。

6ブランドの口紅の100色ほどを自分の顔で試すことができる。口紅の商品を選んで、試用を選ぶと、インサイドカメラで自分の顔が表示され、唇の位置を認識して、選んだ口紅の色が乗るというものだ。

3月の上旬では、新型コロナウイルスの影響が残っており、多くの人が百貨店に行き、しかもサンプルの口紅を自分の唇に塗るということに不安を持っている。また、それがなくても、自分の口紅に塗るのでは何色も試すことができたい。このため、ARで色合いを試せるパーフェクトダイアリーの仕組みは歓迎され、昨年同時期の88%増の売行きとなった。

また、韓国のサングラスブランド「ジェントルモンスター」も、AR試着の機能を女王節直前に投入した。これも自分の顔にサングラスを試着できるというもので、売上は昨年同時期から55%伸び、消費者の旗艦店滞留時間が42%も伸びた。

また、スウォッチもAR試着を導入している。

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▲眼鏡販売のジェントルモンスターでは、サングラスのAR試着機能を提供している。

 

何が入っているかわからないブランドボックスも10倍の売上

さらに注目されたのが、中国で人気となっている「盲盒」(マンフー、ブランドボックス)だ。いわゆる箱ガチャで、箱の中にキャラクター玩具が入っているが、外からはどのキャラクターが入っているかがわからない。「コンプリートしたい」というファン心理をついて、売上は伸び続け、フリマサイトなどでの転売価格も上昇中だ。ソニーエンジェル、レゴミニフィギュア、ポップマートなどのキャラクターに人気が集中している。

この「盲盒」を販売する「尋找独角獣」は、2019年12月に、オリジナルの盲盒を販売する旗艦店を天猫内に開店をし、わずか3カ月で、玩具店のトップ3店舗になる躍進をしている。

尋找独角獣によると天猫ミニプログラムからの購入は全体の30%で、これはリアル店舗の10倍の売れ行きになるという。さらに大きいのが、一度購入した消費者が再び購入するまでのリピート時間が、平均の15日から7日に短縮したことだ。

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▲新しいTmallのシステムでは、各店舗ごとにさまざまな機能を独自で搭載できるようになった。販売する尋找独角獣では、箱の中にどのキャラクターが入っているかわからないブランドボックスを購入後に抽選する機能を搭載して、売上を伸ばしている。

 

次のECに求められる「購入体験」

新型コロナウイルスの影響により、「買い物を楽しむ」ということができなくなっている。今までのECは利便性を追求してきたため、生活必需品を買うには便利だが、ウィンドウショッピングや試着をして「買い物を楽しむ」体験に関しては、リアル店舗に勝つことができないでいた。

しかし、天猫のシステムがアップグレードされ、ARや盲盒の抽選システムなど、店舗が独自に開発した仕組みを展開できるようになった。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、ECでも楽しむ買い物体験を求める人が増加した。これにより、従来のECにはなかった「買い物を楽しむ」機能を各EC店舗が導入している。

ECは利便性だけでなく、「購入体験」も追求していくことになる。