中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

米中で始まる、人工知能人材の争奪戦

現在、テック関係者の興味は、人工知能に集中をしている。しかし、懸念をされているのが人材不足だ。現在、人工知能関係の企業が続々と誕生していて、人工知能を扱える人材は、全世界で100万人が必要だと言われているが、現在は30万人しかない。深刻な人手不足で、各国で人材の争奪戦が始まっていると新華社が報じた。

 

人工知能人材は、米国8万人、中国4万人

人工知能人材の多くは米国にいる。世界で人工知能関連のスタートアップは2617社が創業したが、米国は1078社、中国が592社と、米中でほとんどを占めている。この後に、イギリスと、イスラエル、カナダが続く。

米国1078社の社員数合計は7万8700人、中国592社の社員数合計は3万9200人。人材的にも半数以上が米中に集中していることになる。

 

大学が人工知能人材の供給源になっている

特に中国では人材不足が深刻になっている。米国のIT企業は、優秀な研究者に的を絞り、その研究者が所属する大学のそばにサテライト研究所を作るという方法で、卒業者を確保するようにしている。しかし、中国の大学での人工知能研究のレベルはまだ低いため、このようなサテライト研究所戦略で、人材を確保することができない。

給与待遇をよくして、人材を確保するしかなく、すでに人工知能関連の初任給(月給)は2.58万元(約44万円)と突出するようになり、さらに自社株を格安で購入できるオプションをつけたりしているが、それでも人材確保が難しくなっている。

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▲米中の人工知能関連の企業数。青が米国、緑が中国。米国は機械学習自然言語処理など基礎技術の開発企業が多く、中国はロボット、音声識別など応用に直結する企業が多い。中国はまだ大学の研究拠点が整ってなく、基礎技術をじっくりと開発することができず、応用した製品化を急ぐ傾向にある。



中国は、産学官で人材の育成と獲得をおこなう

中国政府は、2030年に人工知能の領域で米国を凌駕し、世界の中心になる目標を公にしている。しかし、専門家からは、人材育成に力を入れないと米国との差は縮まらないと指摘されている。

そのため、大学では人工知能専門家の育成により一層力を入れるとともに、企業は海外人材の獲得に力を入れ始めている。キーになる研究者を中国の大学に招聘し、それを企業がバックアップするだけでなく、若い人材を米国やそれ以外の国から招聘する仕組みを作り上げようとしている。

この仕組みが動き始めると、大量の人工知能研究者が中国へ行って仕事をするようになり、世界での人材争奪合戦はますます激化していくことになる。人工知能人材確保戦略を取らない国では、深刻な人材不足に頭を悩ますことになるだろう。

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▲主要IT企業の人工知能研究者数。グーグルが圧倒しているが、中国の百度、テンセントも無視できなくなり始めている。