スマホ決済のアリペイ、WeChatペイは、中国の都市部では、最も利用されている決済手段になっている。もはや、現金で支払う人はごく少数派で、現金を持っているのは地方や海外から来た旅行者ばかりだ。しかし、同じ中国でありながら、香港ではほとんど普及をしていない。欧界は、4つの理由があると伝えた。
中国のモバイル決済市場は、米国の90倍
中国の本土では、アリペイ、WeChatペイのスマホ決済が、最も利用される決済手段になっている。米ワシントンポストは、中国と米国のモバイル決済市場の大きさを比較した報道を行った。それによると、2011年の段階では、中国150億ドル、米国83億ドルと、さほど大きな差ではなかったものが、2016年には米国が1120億ドルと急成長をしたのに、中国は9兆ドルと輪をかけて驚異的な成長をし、米国モバイル決済市場の90倍の規模となっている。
中国のモバイル決済市場が急成長した理由は単純だ。「どの店でも使える」環境を構築できたからだ。現金と同じようにどこの店でも使えるのだから、現金よりも便利な点が多いモバイル決済を利用するのは当たり前の話だ。
決済手段普及の鍵は、加盟店の参入障壁を低くすること
では、なぜ「どの店でも使える」環境が構築できたのか。これも理由は単純だ。加盟店の手数料を実質ゼロにして、審査も不要にした。一般的なネットサービス感覚で、アカウントを取得して加盟店となることができる。クレジットカードのような立て替え払いではなく、即時決済なので、信用度を審査する必要もない。
手数料も、銀行口座への振込時(現金化)の際にかけるので、大手企業は現金化をせざるを得ないため、手数料を支払う必要が生まれるが、露天屋台や家族経営の小規模店舗では、自分の個人的な支払いもスマホ決済にしてしまえば、現金化する必要がなくなり、手数料を支払う必要がない。
大企業から低率の手数料を取り、小商いから手数料を取らない。この発想により、チェーン店から露天屋台まで、あらゆるお店でスマホ決済が利用できるという環境が生まれた。
香港ではまったく普及していないアリペイ
しかし、香港では、このスマホ決済がほとんど普及をしていない。今年5月、アリペイ香港が、香港でアリペイサービスを始め、開始2週間で10万ユーザー、加盟店4000店舗を達成という発表を行った。
しかし、この数字はあまりにも小さすぎる。本土では5.7億ユーザーが利用しているので、香港のユーザー割合は0.02%でしかない。香港の人口、都市の規模を考えると、あまりにも小さすぎる数字だ。
クレジットカードと交通カードがアリペイの成長空間を奪っている
欧界は、香港でスマホ決済が浸透しない理由は4つあるとした。まず、香港は、中国本土と違って、クレジットカードがかなりの割合普及をしているということがある。また、「八達通」という交通カードが20年前から使われていて、地下鉄やバス、タクシーなどの交通の支払いだけでなく、日本のスイカと同じように、駅ビル内の店舗での支払い、食事などに使える。
高額消費はクレジットカードで、少額消費は交通カードでというスタイルが定着をしていて、そこにわざわざスマホ決済を使う理由が見当たらないというものだ。
中国本土では、クレジットカードがほとんど普及をせず、交通カードは交通機関だけに限定をされていて、市民は手軽に使える電子決済を求めていた。そこにスマホ決済が登場したので、一気にスマホ決済に移行したという経緯がある。
▲香港では、交通カードとして「八達通」が20年前から使われている。日本のスイカと同じように、駅ナカの店舗や飲食店でも利用できる。これがスマホ決済の普及を阻んでいる。
“中国産”への信頼が低い香港
もうひとつの大きな要因が、香港人には、本土の中国人をやや見下す傾向があるということだ。そのため、中国が開発した決済システムに対して、漠然とした不安を持っている人が多い。これが第2の理由。
さらに、香港政府も、アリペイの対面決済をまだ認めず、ネット決済だけに限定をしている。香港政府も、まだアリペイのセキュリティに対して不安を持っているのだと思われる。これが第3の理由。
そして、そもそも香港人が、アリペイに関心を持たない。多くの香港人が“中国産”を嫌うか、無関心なのだ。これが第4の理由。
台湾は受け入れ、香港は拒絶する“中国産”
しかし、香港は電子決済の普及が、クレジットカードと交通カードに限定されており、街中でのちょっとした買い物や昼食では、現金決済が幅を利かせている。スマホ決済が進出をする空間は多分に残されている。
香港は、考え方を変え、利便性の高い中国産スマホ決済を受け入れるのだろうか、あるいは今までと同じように「香港は中国ではない」態度を貫こうとするのだろうか。
アリペイ香港は、アリペイとリンクをした金融商品、保険商品を香港で販売することにより、まずアリペイブランドに対する信用を培っていきたいとしている。同じ中華圏でも、香港は、“中国産”を積極的に取り込んでいく台湾とは、対照的だ。
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