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京東が無人運転車を開発し、無人配送に挑戦

中国ECサイト大手「京東」は、今年7月にドローン配送を始めることを宣言し、すでに過疎地でのドローン配送を始めている。さらに、京東は無人運転車を開発して、車による無人配送も始めようとしていると財新網が報じた。

 

「当日配送」で成長してきたECサイト「京東」

中国ECサイト「京東」は、アリババのタオバオ、Tモールほど、国際的知名度はないが、中国国内では圧倒的な人気がある。その理由は、迅速な配送だ。配送業車「順豊」と提携し、大都市部では、翌日配送、当日配送を実現している。さらには、スマートフォンから、届け先を自宅、職場、指定地点に変更することもでき、「自分で百貨店に買物にいくより便利」ということから、人気を博している。

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すでに始めているドローン配送。次は無人運転車配送

京東は都市部ので迅速配送を農村部までに広げるために、今年7月には、205億元(約3500億円)をかけて、ドローン専用飛行場を数百カ所建設し、ドローン配送を始めることで、中国国内のすべての地域での24時間配送を実現すると宣言していた。そして、今年9月には、一部の農村地区で、現実にドローン配送を始めている。

この「24時間配送」を実現するもうひとつの手段が、無人運転による配送車だった。

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▲すでに始まっているドローン配送。ドローンのコントロールセンターでは、すべてのドローンの位置と状態が一括監視されている。

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中規模都市での配送を担当する無人運転

今年5月、京東社内に「X事業部」という謎の部署が新設された。この事業部が、無人運転配送車の開発部署だった。上海汽車の開発した電気自動車EV80を、そして東風汽車が開発した電動カートを使い、無人運転を実現し、これに配送を行わせるというものだった。

京東の広報担当者は、財新網の取材に応えた。「無人運転はじゅうぶんに実現できるという感触を得ています。現在は、路上試験の段階なので、担当者が乗車し、万が一の事態に備えていますが、将来は完全に無人で貨物を輸送することになります」。

X事業部の肖軍副総裁は、財新網の取材に応えた。「ドローンは、主に農村地区の”最後の1km”の配送を担当します。無人貨物車は、都市の中での配送を担当することになります」。

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▲すでに試験運転が始まっている無人運転貨物車。マンション群、オフィスビルなどの拠点まで運び、そこから先は、クラウドワークで募集したアルバイトが各戸に届ける。

 

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無人運転技術は、通常の自動車に後付けで載せられる。場合によっては、有人運転にすぐに切り替えられるからだ。

 

無人運転技術は、「商用」「貨物」の分野から導入される

無人運転技術は、すでに実用化寸前の段階まで成熟してきたが、いくつかの問題を抱えている。ひとつは、まだ社会から信頼を得ていないということだ。自家用車として無人運転車を販売しても、一部の新しもの好きが買うだけで、一般の人はまだまだ様子を見たいと考えるだろう。

もうひとつの問題は、車両価格が一般の自動車の数倍になってしまうことだ。これも自家用車には向かない。高額の代金を支払うのであれば、多くの人は人間が運転する高級車を購入して、運転の楽しみを味わいたいと考えるだろう。

そこで、無人運転技術を持つ自動車メーカーの目が向き始めているのが商用車だ。車両価格が高くなっても、商用車であれば運転手の人件費が不要になるので、総コストを抑えることができる。

人を輸送する観光バス、路線バスなども無人運転技術を持つ自動車メーカーが注目をしているが、万が一の事態が起きた場合に、人命に関わることから導入は慎重にならざるを得ない。また、人を運ぶということは、人の活動時間である昼間しか利用できない。

一方で、貨物輸送であれば、万が一の事態が起きた場合でも、貨物の損害だけで済み、しかも昼間だけでなく夜中まで24時間、稼働できることは大きい。

無人運転技術は、商用車、特に貨物輸送車に目が向かおうとしている。

京東は、無人配送車をいち早く実現して、中規模都市での24時間配送を実現したいとしている。

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▲京東のX事業部が上海汽車と共同で開発した無人運転配送車。中規模都市での無人配送を実現する。