香港金融管理局は、早ければ9月にも統一電子決済システムを公開すると金評媒が報じた。スマホ決済のアリペイ、WeChatペイなどの他、銀行カードやペイパルなどの電子決済16種類すべてが、ひとつのシステムで決済できるようになる。
香港で圧倒的に強いオクトパスカード
香港は、中国の一部でありながら、スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」がほとんど浸透していない。その理由は、すでに便利な電子決済が普及をしているからだ。英国の租借地であった香港は、早くからクレジットカードが普及をしていた。さらに、1997年という早い時期に交通カード「オクトパスカード」が導入され、地下鉄、バスだけでなく、コンビニやレストランでの決済手段として広がってきた歴史がある。オクトパスカードは、日本のSuicaと同じようにフェリカカードの技術が採用されているが、現在では、NFCにも対応し、スマートフォンでの利用も可能になっている。
もうひとつ、香港が独特な理由のひとつが、通貨が香港ドルであるという点だ。中国は人民元であり、アリペイなどは人民元が基本になっているため、香港ドルが利用できる別バージョンを香港で運用をしている。そのため、香港のアリペイに登録をしても、中国国内では利用できない。どのみち香港市内でしか使えないのであれば、もともと使っているオクトパスカードでじゅうぶんだと考える人が多いのだ。
また、香港は中国内からの旅行者や出張でくる人も多い。そのような人は、アリペイ、WeChatペイを使うことができず、わずかに銀聯に対応している商店がある程度で、結局は香港ドルで現金決済をするしかなかった。
16種類の電子決済を統合するFPS(Faster Payment System)が利用できるようになると、このような問題が解消される。
決済仲介をするFPS、ネット銀行設立も視野に
香港金融管理局は、このFPSを実現するために、ネット銀行の設立を許可する。ネット銀行は、店舗を持たず、ネットからのみ利用できる。このネット銀行が16種類の決済運用会社の仲介をできるようにする。例えば、アリペイにしか対応していない店舗で、オクトパスカードを持っている利用者が決済をした場合、ネット銀行がアリペイに対して支払いをし、顧客のオクトパスカードから引き落としをするということを同時に行い、決済を完結させる。利用者からは、オクトパスカードで支払ったようにしか見えない。当面は、決済代行会社がこの機能を担うが、暫時、この業務をネット銀行に移していき、銀行ならではサービスを展開して、金融業をさらに発展させたいとしている。
▲金融管理局が発表したFPSに対応する決済方式。利用者も店舗も、この16種類の決済方式のうちのどれか1つに対応するだけで、すべての決済が可能になる。
決済代行だけでなく、小口金融も扱い、個人消費を刺激する
ネット銀行は、店舗を持たないので、運用コストがかからないため、手数料も低額ですむ。金融管理局によると、FPSを導入しても、手数料の増加はほとんどない形での運用が可能だとしている。
また、このネット銀行には、一般消費者に対する小口融資も可能とする予定だ。消費者金融としてお金を貸すというよりも、クレジットカードのリボルビング支払いや分割払い、ボーナス払いなどの機能を提供して、個人消費を刺激するのが目的だと思われる。
金融管理局によると、すでに10を超す金融機関、IT企業がネット銀行の設立を検討していて、早い時期に設立申請を受け付けるようにし、今年末までには営業許可が出せる状況にしていきたいとしている。