中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

野性のインド象を鉄道事故から守れ。AI画像判別を利用したインド象軌道内侵入警告システム

インド南部のマダックカライ森林でインド象鉄道事故から守るAIシステムが導入された。軌道内に侵入したインド象をAI画像判別し、アラートを出すというものだ。インド象鉄道事故死は、密猟よりも多く、野生のインド象の保護に貢献すると期待されていると九派新聞が報じた。

 

10年で186頭のインド像が鉄道事故で死亡している

2010年から2020年までの10年間、インドでは1160頭のインド象が自然死以外の原因で死んでいる。

その中で最も多い原因は、電線などに接触をした感電死で741頭。第2位の原因が鉄道軌道上に侵入をして列車との衝突が186頭。多くの人が想像する密猟による死亡は169頭と3位。さらに4位は、人間が生産したものを食べた中毒死で64頭となる。特に人的要因で死亡する象の数は増加傾向にある。

2017年の統計では、インドに2万9964頭の野生のインド象がいて、32の保護区を設定して保護をしているが、このような原因で減少傾向にある。

インド象が軌道内に侵入し、列車と接触して死亡する例は、10年で186頭に及んでいる。

 

インド象鉄道事故を避けるさまざまな案

インド環境省では、インド象鉄道事故問題に取り組むため、今年2022年初めに鉄道省環境省のスタッフからなる常設委員会を設置し、対策を協議していた。

委員会では、鉄道を渡るための回廊を用意する案が提出された。鉄道を渡らなくても、自由に移動ができる地下道か陸橋を設置するという案だ。また、象の通り道になっている地区では、警告看板を設置し、列車の運転士に注意を促すという案も出された。また、鉄道脇の樹木を伐採し、更地とし、列車の運転士がいち早く象の存在に気づけるようにするという案も出された。

▲この10年で、1160頭のインド象が自然死以外の要因で死亡している。死亡原因は、感電死、鉄道事故死、密猟、中毒死の順番になっている。

 

AIを活用したインド象警告システムが採用

インド南部のマダックカライ森林では、AIを使った象侵入警報システムが採用された。このシステムでは、象が最も鉄道を渡る地点を中心に、半径50mをレッドゾーン、半径100mをオレンジゾーン、半径150mをイエローゾーンとし、それぞれに応じた警告を発報する。

イエローゾーンに象が侵入すると、森林監視員にアラート。オレンジに侵入すると、森林監視員と現場の森林保護作業員、鉄道駅長にアラート。レッドに侵入すると、森林監視部門、鉄道部門へのアラート、さらに通過予定の列車の運転士にアラートが出される。

インド象の監視システム。設備としては通常の防犯カメラと同じ構成であるため、コストもかからない。

 

インド象の画像判別は人力では難しい

このシステムは、カメラと太陽電池パネル+バッテリーが主な要素で、撮影した風景映像の中から象をAIが画像判別して、象を確認するとアラートを発報する仕組みだ。

象は地面や樹木の色と同じであるため、監視カメラを設置して、人間の目で監視をするのには限界がある。また、夜間に象が出没することもあり、その場合は監視カメラの目視では見逃すことになる。また、象の侵入はたびたび起こるものではなく、そのために人が監視をした場合、集中力を保つことは難しい。このような理由から、AIによる画像判別を応用した監視システムが以前から研究されていた。

また、象による人間の被害もある。毎年50万世帯の農家が作物を荒らされるなどの被害に遭っている。道路や住宅地に出没し、興奮をしたインド象によって年間500人が命を落としている。この監視システムが効果を発揮すれば、このような人を守る監視システムにも応用ができ、人と象が共存できる環境をつくれるのでないかと期待されている。

インド象の色は、地面や樹木と同じ色であるため、監視カメラ映像を人間が監視する方法はほとんど不可能。AIによる画像判別であれば見逃すことはなく、夜間もインド蔵の存在を感知することができる。

 

 

原神の売上は東京ディズニーランドとほぼ同じ。90后企業miHoYoの新しいビジネスのつくり方

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今回は、アクションRPG「原神」(げんしん)を開発した米哈游(miHoYo)についてご紹介します。

 

ゲームというのは好きな方は好き、興味がない方はないとはっきり分かれるため、特定のゲームや特定のゲーム企業を取り上げると、半分以上の読者にとっては興味のない記事になりかねません。

「vol.149:中国スマホゲームの進む2つの方向。海外進出とミニプログラムゲーム」で、「羊了個羊」(ヤンラガヤン)というゲームを取り上げたのは、ゲーム産業がWeChatミニプログラムを利用して収益の拡大をねらうという新しいビジネスモデルが生まれる可能性があったからです。同じ手法が、他のエンターテイメントである映画やドラマ、音楽などで起こる可能性すらあります。

 

ではなぜ、「原神」というゲーム、miHoYo(中国名の読みはミハヨに近いですが、日本ではミホヨと読むのが一般的です)というゲーム開発企業を取り上げるのでしょうか。ゲームの内容の解説や攻略法をここでご紹介するつもりはありません。取り上げる理由は、90后(90年代生まれ)のビジネスの発想方法が、それまでの80后とは大きく違っていることをご紹介したいのです。

80后は、貧しい中国を知らない世代として中国社会の改革者の役割を担っている世代です。伝統的な習慣や考え方にとらわれず、旧習を打破し、場合によっては破壊をしていく創造者です。

ビジネスの世界では滴滴、ウーラマ、ピンドードーなどの創業者が80后です。滴滴はアプリでタクシーを呼ぶというサービスから始まっています。ウーラマはフードデリバリーというサービスを発明した企業です。ピンドードーSNSとECを連動させました。テクノロジーを媒介にして、タクシー業界、飲食業界、EC業界の壁を打ち破ることで成立したサービスです。

では、90后はどのようにビジネスをつくっていくのでしょうか。あくまでも私個人の感覚ですが、miHoYoがその典型であるように思います。それを今回ご紹介したいのです。

壁を破る形でビジネスをつくっていく80后とどこが違うのかを意識しながらお読みください。

 

miHoYoの創業者の中心人物、蔡浩宇(ツァイ・ハオユー)は1987年生まれであるため、厳密には80后ですが、90后の先駆け世代です。ちなみに95年以降がZ世代と呼ばれます。

そういう90后たちが、中国の文化を大きく変えようとしています。そして、この世代は基本的に全員がオタクです。ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)が趣味の中心であり、世代を通じた基礎教養になっています。もちろん、ほとんどがガチのオタクとは呼べないライト層ですが、「萌え」は誰もが理解する共通感覚になっています。このような世代が社会の中で活躍するようになっているのです。

これから90后が中国社会の中心になるとともに、ゲーム以外の分野でも同じことが進んでいきます。miHoYoは企業スローガンとして、Tech Otakus Save the World(テックオタクが世界を救う)を掲げています。今後の中国では、Tech Otakus Change the Chinaという現象が起きるかもしれません。

 

原神というゲームの内容についてあまり深く触れるつもりはありませんが、お話を理解していただくために、ある程度はご紹介しておく必要があります。

原神は、男性または女性の主人公(自分の分身)が、仲間のキャラとともに世界を探索するアクションRPGです。デジタル解析プラットフォーム「Sensor Tower」は、原神の2年間での累積収入が264億元(約5200億円)と推定できると発表しました。日本の企業情報を見ると、オリエンタルランド(ディスニーリゾート運営)の2021年の売上高が2757億円となり、原神の売上高とほぼ同じです。原神は、東京ディズニーリゾート(コロナの影響で大幅減収しているとは言え)と同じくらいお金を稼いでいるのです。

原神の何が面白いのかは、さまざまな方が記事やブログで書いていますが、重要なのはあらゆる要素のレベルが高いということです。オープンワールドの作り込み、萌えキャラの際立ち方、バトルモーションの作り込みの細かさ、深みのあるバトルシステム、美しいグラフィック、継続的に広がるオープンワールドと追加されるイベントシナリオとキャラ、無課金でも遊べる課金圧の低さなど、この手のゲームに必要とされるすべての要素においてレベルが高いのです。

ゲームだけでなく、映画やドラマもそうかもしれませんが、気に入る点は人それぞれです。しかし、原神はあらゆる要素のレベルが高いので、さまざまな興味を持った人が異なる点を気に入って原神にハマっていきます。この受け止めの広さが原神のヒットの理由だと私は考えています。

 

原神のリリース前は、予告映像などを見て、多くの人が「ゼルダの伝説ブレス・オブ・ザ・ワイルド」のパクリーゲームという酷評をしました。しかし、リリースされてみると、そのような酷評はかなり減少しました。実際にプレイしてみると、見た目は確かに似ているところもありますが、路線の異なるゲームだということがわかったからです。

普段ゲームをやらない方も、原神はぜひインストールして、チュートリアルだけでも遊んでみることをお勧めします。「ゲームはここまで進化しているのか」と驚かれると思います。

ただし、本格バトルが始まると、ゲーム経験の少ない方にはかなり難易度が高いと思います。単純なバトルではなく、敵とキャラの相性であったり、攻撃の組み合わせ、重ね合わせをよく考えないと攻略ができません。今の時代は普通の難易度のゲームなのかもしれませんが、私にとっては正直手に余る難しさです。この難しさも人気の要素のひとつになっています。

今回は、原神を生み出したmiHoYoが、中国のゲーム業界をどう変えていったのかをご紹介します。

 

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vol.149:中国スマホゲームの進む2つの方向。海外進出とミニプログラムゲーム

vol.150:勢いのある種草ECに対抗するタオバオ。電子透かしを活用したユニークな独自手法を確立

 

 

特集・EVの充電をめぐる問題

 

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横行するネット詐欺犯が捕まらない「3つの偽装」。SNSだけでつながるピラミッド構造

ネット詐欺が横行する理由の最大のものが犯行集団が捕まらないことだ。なぜ、ネット詐欺犯行集団を捕まえることは難しいのか。3つの偽装とピラミッド構造にその原因があると隴南成県抛沙司法所が報じた。

 

つかまらない、戻ってこないネット詐欺

決済などの利便性が上がれば、その利便性をついた詐欺が横行する。中国では電子決済がらみの詐欺が後を絶たない。手口はさまざまあるが、多いのは「返金すべきお金がある」と電話連絡をして、電子決済のアカウントを入力させるフィッシングサイトに誘導するものだ。中にはECの購入履歴の漏洩情報に基づいて、「x月x日、EC○○でお買いになった商品xxに問題が発生し、返金をいたします」などと誘うため、多くの人が正規のサポートセンターからの連絡だと思い込んでしまう。

公安は積極的に注意喚起の公告を行なっているが、市民が不満に感じているのは、詐欺犯がなかなか捕まらないし、お金が戻ってこないことだ。

 

犯行集団が行う3つの偽装

なかなか犯人にたどり着くことができない理由は3つあるという。

1)地理的偽装

現在は多くの犯行集団が東南アジアを拠点に活動をしている。このため、中国の公安が直接捜査をすることできず、現地国警察の協力を得る必要がある。この協力を取り付ける手続きが簡単ではなく、時間と手間がかかる。

2)身分的偽装

中国人には全員に身分証が発行され、身分証がなければスマートフォンの契約などもできないようになっている。しかし、盗まれた身分証がブラックマーケットで販売されており、これを入手して、他人になりますして犯罪を行う。有効な他人の身分証を使うため、犯行集団にとっては自分の身分を隠す格好のツールになってしまっている。

3)技術的偽装

IPアドレスの偽装技術が進んでいる。中国国内にメールを送る場合でも、海外の複数のサーバーを経由させて送るため、公安は直近の海外サーバーに開示請求を出し、その1つ前の海外サーバーを割り出し、さらにその海外サーバーの開示請求を出しということを複数繰り返していく必要があり、たどり着くまでに時間と手間がかかる。

▲犯行集団は、複数の海外サーバーを経由して被害者にアクセスをする。捜査陣は、開示請求を各サーバーに行い追跡していく必要がある。

 

声佬、接数佬、刷機佬、卡佬、取款佬のピラミッド構造

犯行集団はおおよそ5つの階層に分かれ、分業をしている。第1層は「声佬」と呼ばれ、対象に対して詐欺を実行する。第2層は「接数佬」と呼ばれ、現金化を差配する。第3層は「刷機佬」と呼ばれ、POS機やネット口座の移動を担当し、第4層は「卡佬」と呼ばれ、身分偽装した銀行口座と銀行カードを用意する。第5層は「取款佬」と呼ばれ、銀行カードを使って現金を引き出す。

この5つの層はピラミッド構造になっている。声佬が20万元を詐取したとすると、第2層の接数佬は20万元の現金化をすることになる。この時、Aの刷機佬に10万、Bの刷機佬に10万などのように複数の刷機佬に分割をする。刷機佬はさらに複数の卡佬に分割をし、最終的には出し子である取款佬が担当するのは1万元程度になる。

このピラミッド構造で最もリスクがあるのは、出し子である取款佬だ。銀行のATMには監視カメラもあり、捜査陣も現金を引き出す瞬間をねらっている。そのため、取款佬が担当する金額を抑えて、目立たないようにし、同時に取款佬が持ち逃げをしても犯行集団への影響が小さくなるようにしている。

また、この5層の組織は、互いに面識はなく、連絡はテレグラムなどの暗号化が施されたメッセンジャーを使って行う。これにより、取款佬が逮捕をされても、犯行集団の中核にはたどりつけないようになっている。

▲資金の引き出しは、小分けをして、面識のない出し子に行わせる。これにより、1人あたりの額が少なくなり、引き出しが目立たなくなり、かつ出し子が持ち逃げをする危険性が減る。

 

犯行環境を提供する水房

「水房」と呼ばれるアジトを提供する役目の人物もいる。また貸しを重ねて、犯行集団の身分証などにたどり着けないようにしたアジトを提供する。また、困窮する現地人から身分証や銀行口座を買い上げ、海外の銀行口座も用意し、犯行集団は複数の海外銀口座に分散して、売上を保管する。海外の銀行口座を中国の公安が凍結するのは簡単ではなく、万が一銀行口座がひとつ凍結されても、犯行集団に大きな影響が出ないようにすることができる。

インドネシアで摘発された中国人詐欺グループ。中国国内に対してネット詐欺を仕掛けていた。このような現地警察の協力が得られて逮捕まで行くことは多くない。

 

対AI検知対策に一般人のアカウントを利用する

また、最近、事情を複雑にしているのが、「資金転送副業」だ。ネットで募集しているもので、お金が自分のアリペイやWeChat、銀行口座などに振り込まれてくるので、数%の手数料を差し引いて、指定された口座に転送したり、犯行集団が用意した販売サイトで指定商品を買わせたりする。もちろん、販売サイトの商品は原価が数元のもので、これを5000元、1万元で買わせる。この真っ当な取引を途中に挟むことにより、資金移動を監視しているAIの違法資金移動のアラートが出づらくなる。対AI用の資金洗浄だ。

 

金保管に利用されるビットコイン

この数年は、このような資金保管にビットコインが利用されている。ビットコインの資金移動を追跡するには専門知識が必要となり、各地の公安が追跡チームを用意することは現実問題として難しい。

このような理由から、ネット詐欺集団の摘発が難しい状態となっていため、各地公安は被害手口を公開して、注意喚起をするぐらいしか手がなくなっている。近年では、AIで音声を合成し、知人を装って電話をし、相手を信用させようとする犯行集団も登場している。公安よりも、犯行集団の方が偽装技術の開発が進んでおり、ネット詐欺がなかなか撲滅できない状況が続いている。

 

混乱する二輪車通行帯。電動自転車、電動スクーター、リアカー、キックボードに無人カートまで

二輪車通行帯が混乱をし社会問題となっている。歩道と車道の他に二輪車通行帯が整備されている道が多いが、多様な交通ツールが登場しているのが原因だ。また、無免許で乗れるものも多く、交通ルールも徹底されていないと海報新聞が報じた。

 

さまざまな乗り物が登場し、混乱をする二輪車

中国の都市交通が新たな問題を抱えている。中国の大通りは、「車道」「二輪車道」「歩道」と3種類に分離帯で分かれているため、自動車、自転車、歩行者それぞれが安全に通行をできる環境が整っていた。

しかし、二輪車の領域にさまざまな新車両が登場し、二輪車道が混乱を起こしている。この二輪車道は正式には「非機動車道」。つまり、エンジンを搭載していない車両を指す。そのため、電動低速バイク、電動自転車はモーターは搭載しているが、エンジンは搭載していないので、非機動車道を通行しなければならない。

特に問題になるのが、電動自転車だ。建前上はペダルのついた自転車であり、電動は補助なのだが、実質的には電力で自走することができ、時速は25kmまでに制限されているものの電動スクーターとして利用している人がほとんどだ。

さらに、お年寄りが主に使う電動三輪車=代歩車、さらには宅配の無人カート、電動キックボードなど、さまざまなものが登場している。

非機動車道は、実質的には「自動車と歩行者以外のすべての交通ツール」が通る道になっていて、ここで大きな混乱が起き始めている。

▲左側が二輪車の通行帯で、右側は二輪車の駐車帯。しかし、通行帯は一方通行であるため、駐車帯を逆走する二輪車もいる。本来は、反対側の通行帯を通行するか、降りて手押しで歩道を通らなければならない。

▲最近ではキックボードなども登場して、二輪車通行帯の混乱に拍車をかけている。

 

交通違反を含むマナーの問題も

今年2022年7月末、北京市人民代表大会常務委員会は、「北京市非機動車管理条例」実施調査報告を行い、その内容をウェイボーの公式アカウントで公開をした。その中では、2つの問題が指摘をされた。

ひとつは非機動車の駐車設備などに不備があり改善が必要なこと。もうひとつは交通違反が常態化をしており、遵法意識を高める必要があることが提起をされた。

北京市人民代表大会常務委員会は、二輪車の問題の調査をし、交通違反の常態化が問題であることを指摘した。

 

ルールが定着しない問題交差点

北京市の南側、第三環状道路の劉家窯橋は渋滞の原因となる交差点として有名で、交通管理部門の重点地点にもなっている。そのため、非機動車が交差点を通過するときに通行すべきゾーンを色分けして表示する、非機動車専用の信号を設けるなどの整備が行われている。

しかし、ルールを守らない非機動車が続出をしている。赤信号の場合、停止線の手前で停止をしなければならない。しかし、青信号になって進むには、右折車と交錯する煩わしさがあるため、交差点の中のゾーンで信号を待ってしまう。しかも、横方向の非機動車通行ゾーンにまで広がって待っているため、横方向の非機動車はゾーンの外を迂回して通行しなければならない。

▲赤いペイントが二輪車の通行帯。二輪車は本来手前の停止線内で赤信号を待機しなければならないが、右折車(赤信号でも右折可)のじゃまになるため、交差点の中で待つ習慣が生まれている。

 

電動自転車の免許不要が原因とも

このような原因の根本にあるのは、非機動車が免許不要で運転できるという点だ。そのため、交通ルールを正式に学んだことがない人も多く、周りを見て運転をするため、ルール遵守がいい加減になっていく。かといって、非機動車に免許を必要とするようにすると、市民が気軽に移動ができなくなる。

非機動車は気軽な交通ツールであるため、よく売れることから、メーカーもさまざまな新しい非機動車を発売する。近年では、電動キックボードも見かけるようになっている。この、次から次へと新しい非機動車が登場することが、さらに混乱に拍車をかけている。

二輪車帯は本来は一方通行。この場合は、手前から奥にしか進むことができないが、逆走する二輪車が後を立たない。道路の反対側の二輪車通行帯に渡るのが面倒だからだ。

 

無人カートが混乱に拍車をかける

もうひとつの問題が、宅配やフードデリバリーなどの無人カートだ。自律的に走行をし、障害物を認識して安全停止をするが、安全への配慮から時速5km程度で走行をする。しかし、非機動車道が狭いところでは、道を塞いでしまい、通行の妨げとなっている。これを無理に追い越そうとして、転倒をする二輪車も見られるようになっている。

▲最近問題になっているのが無人カート。幅が広く、速度が遅いため、無理に追い越そうとする二輪車が事故を起こす。また、自動車通行帯にはみ出て追い越そうとする二輪車もいる。

 

多様化する二輪車に追いつかない交通行政

問題は、速度や幅の異なる非機動車がひとつの道に混在をしていることだ。自転車ですら、速度の遅い実用車と健康のために乗るクロスバイクでは、速度がまったく異なっている。このため、北京市では2019年から自転車の高速道路とも言える自転車専用道路の整備を始めているが、高架道路にする必要があり、すぐには整備は進みない。

非機動車道を複数に分割することも考えられるが、そのためには車道を減らすしかなく、交通渋滞を悪化させてしまう。唯一の救いは、死亡事故などの重大事故につながるケースが少ないことだが、このまま放置をすると、都市内の移動に支障をきたすことになり、頭の痛い問題となっている。

北京市では自転車専用道を整備し始めているが、高架にせざるを得ない区間が多く、なかなか整備は進まないのが現状だ。

 

 

EC「天猫」がわずか15ヶ月で香港から撤退。アリババも通用しなかった香港の買い物天国ぶり

アリババのEC「天猫」(ティエンマオ、Tmall)が、10月いっぱいで香港から撤退をする。中国では存在感のあるECだったが、香港ではわずか15ヶ月間で敗退をすることになったと維港那些事児が報じた。

 

アリババが運営する2つのEC

アリババは2つの巨大ECを運営している。ひとつは「淘宝網」(タオバオ)で、出店料、販売手数料などは不要。そのため、膨大な数の販売業者が出店することで、タオバオで売っていないものはないと言われるほどさまざまな商品が購入できる。販売業者は消費者の目に留まろうと、タオバオ内に広告を出したり、アリババが主催するキャンペーンに参加をする。このような広告費や参加費で、タオバオは運営されている。

もうひとつが「天猫」(ティエンマオ、Tmall)だ。こちらは出店料などが必要で、アリババの手厚いサポートを受けることができる。11月11日の独身の日セールも、本来はこの天猫のセールだ。天猫にはグッチやナイキなどの著名ブランドがEC旗艦店を出店することが多い。

この天猫が香港では受けなかった。一方、タオバオは越境対応で香港への対応を継続する。

▲香港は利便性の高いコンパクトな都市であるため、市民はECよりも実店舗での購入を好む。しかし、東南アジアに対する影響力が強いため、香港系ECだけでなく、海外ECも参入するEC激戦区になっている。

 

中国全土をカバーできないブランド店舗

中国でECが発達をしたのは、オフライン小売が未成熟だったことも大きな要因だ。というより、中国全土を店舗でカバーすることはほとんど不可能と言ってもいい。

中国人が豊かになって、質の高い製品を買いたいと思っても、地方都市だと輸入ブランド品を販売している店舗は限られている。例えば、日本のユニクロはカジュアル衣料として、中国でも広く認識され、人気ブランドのひとつだが、中国での店舗展開は日本よりも多く900店舗近くにも達している。これでも、中国全土をカバーできない。中国をカバーするには3000店舗程度の出店が必要だとされている。つまり、大半の中国人にとっては、自分の住んでいる都市にユニクロがない。そういう人は天猫で購入することになる。

このような事情で、中国では天猫が人気となった。

▲アリババの天猫が香港から撤退をする公告。8月21日に販売を終了し、10月いっぱいで完全停止する。アリババも香港では通用しなかった。

 

香港はコンパクトでECを必要としていない

しかし、香港では事情が違った。

香港は、「自由港」「免税港」と呼ばれるほど、このような物品税が低く抑えられている。海外ブランド品を買うには、今でも世界一二を争うほど安く買える。そのため、天猫でわざわざ買わなくても、店舗で購入すれば同程度の価格で手に入れることができる。

さらに、香港の市民もブランド品を購入するが、大きな顧客になっているのが東南アジアからの観光客たちだ。香港に遊びにきてショッピングを楽しむ。そういう人がわざわざECを使うことはない。海港城、IFC、崇光百貨、時代広場などの店舗で書ピングを楽しむのが一般的だ。

香港は東京都の面積の半分ほどで、そこに750万人が暮らしている。地下鉄やバスも発達しているため、ほとんどの市民が中心街に30分でアクセスができる。そのため、ECを使う人はネット利用者の38%程度しかいない。中国では75%、ECの利用が進んでいる英国では88%ということから見れば、実に小さな数字だ。

▲インターネット利用者に占めるEC利用者の割合。香港は先進国であるのにEC利用率が低い。「Estimates of Global E-Commerce 2019 and Preliminary Assessment of COVID-19 Impact on Online Retail 2020」(国際連合貿易開発会議)より作成。

 

コンビニ受取りに対応していなかった天猫

このような理由から、香港でECを利用する人は、宅配ではなく、店舗受け取りやコンビニ受け取りを利用する人が多い。収入も多いが住宅価格が高い香港では、多くの家庭が共働きをしていて、昼間は自宅にいない。そこに宅配されても受け取りが面倒なのだ。それよりは、仕事の帰りに店舗やコンビニに寄る、あるいは公共宅配ロッカーに寄って、自分で持って帰る方式を選ぶ人が多い。

天猫はこの香港の特殊事情に対応をしていなかった。天猫香港の宅配は、アリババ傘下の「菜鳥物流香港」が担当をしているが、コンビニ受取りに対応をしていない。配送営業所受取りには対応をしているが、配送営業所は数が少ない上に、営業所であるための多くが夕方5時で窓口が閉まってしまう。

コンビニ受取り、公共宅配ロッカーを受取りを希望する場合には、配送業者を公式の菜鳥物流ではなく、順豊(SF Express)などの業者に指定をする必要があるが、公式以外の宅配業社を指定する場合は、600円から800円程度の別料金が必要になる。多くの香港市民にとって、天猫は配送料が高くつくECになってしまっていた。

 

日用品ECのタオバオは定着の可能性

一方、タオバオはそれなりに売上をあげている。中国から香港へ、一方通行のビザ「単程証」を利用して、移住をする人がすでに100万人を超えている。単程証は、香港へ入国できるが、出国はできない一方通行のビザで、有効期間6ヶ月以内に香港の市民権を取得する必要がある。多くの場合、香港人と結婚をして香港に移住をする。

このような人たちは、中国でタオバオを利用した経験があり、その便利さを知っている。このような移住組が香港でもタオバオを使い始め、それが香港人の間にも広がっている。タオバオで販売されているのは高級ブランド品ではなく、日用品が多く、価格も非常に安いからだ。

アリババは、天猫を撤退させ、タオバオに集中をすることに戦略転換をしたのだと思われる。

▲B2C ECの国、地域別流通総額。香港の流通総額は小さい。「Estimates of Global E-Commerce 2019 and Preliminary Assessment of COVID-19 Impact on Online Retail 2020」(国際連合貿易開発会議)より作成。

 

市場は小さくてもECが殺到する理由

しかし、タオバオも成功が約束されているわけではない。香港の人口は470万人で、月収の中央値は2万元(約41万円)程度。購買力は高いが、人口が少ないため、中国の都市と比べるとずっと小さい市場になる。

それなのに、ECは過剰になり、競争は熾烈になっている。HKTV、友和YOHO、Club HKT、士多Ztoreなど香港系のECプラットフォームがあり、さらに、PARKnSHOP、ウェルカムなどのスーパー、ワトソンなどのドラッグストア、莎莎SASAなどの化粧品店、豊沢Fortressなどの量販店などがEC販売を始め、人気を得ている。さらに、ここに、海外からタオバオだけでなく、Shopeeやアマゾンも参入をしている。

 

ECがオフライン小売を補完している香港

確かに香港のEC市場は小さく、EC利用者はネット利用者の38%程度と利用も進んでいない。しかし、EC企業から見ると、香港はきわめて魅力的な市場に見える。

EC流通額をEC利用者数で割った、年間客単価を計算して他国と比較をしてみると、香港は1.9万ドル(約280万円)と頭抜けて高くなる。2位の米国ですら0.667万ドル(約99万円)でしかない。EC利用者は多くないものの、利用額は大きい。これがEC運営企業、特に越境EC企業にとっては魅力的に見え、参入が相次いでいる。EC利用者の低さも、今後の成長空間が広大であるように見える。

香港人は、買い物をする時はまずは店舗に行くが、店舗に希望の型番がない場合、店舗スタッフの勧めるECで注文をする。このため、家電や宝飾品などの高額商品でもECで購入をする。

このようにECがオフライン小売を補完する関係になっているため、「ECだけで人気のブランド」が生まれづらい。まずは店舗で実際の商品を見て、在庫があればその場で買うし、なければECで買う。このため、ECを進出させるとともに、ブランドのオフライン店舗も展開をする必要があるが、天猫はこの点でもECのみの展開であったために利用が進まなかった。

▲EC利用者一人あたりの流通総額を算出してみると、香港は頭抜けて高くなる。これが多くのEC運営企業が香港に参入する要因になっている。「Estimates of Global E-Commerce 2019 and Preliminary Assessment of COVID-19 Impact on Online Retail 2020」(国際連合貿易開発会議)より作成。

 

アリババの実力が試される香港

アリババが中国で成功できたのは、アリババの企業努力ももちろんあったが、中国の人口が増え続け、なおかつ収入が上がり続けた人口ボーナスに助けられた部分も多い。しかし、香港では人口ボーナスはなく、収入は高いがこれ以上はなかなか上がっていかない。そのような安定市場でタオバオは成長することができるかどうかが注目されている。アリババの本当の実力が香港で試されることになる。

 

 

スマホ撮影で足の3Dモデルを作成。ぴったりの靴をお薦めしてくれるEC

口コミ投稿型EC「得物」が、サイズ助手機能を公開した。専用シートの上で足の写真を7枚取るだけで、サイズだけではなく、甲高などの形状も含む足の3Dモデルを作成してくれる機能だ。この3Dモデルに基づいてぴったりの靴が購入できると得物技術が報じた。

 

服や靴などのサイズのあるもののEC購入

日用品の多くのものをECで購入するようになっているが、サイズのあるものの購入には悩んでいる人も多い。服や靴というものは自分のサイズを知っておく必要があるし、そのサイズで購入しても、実際に使ってみると、なんとなくフィットしない。特に靴類はサイズと言っても、つま先から踵までの長さだけであり、買ってみたら、甲の部分があたって痛い、足の一部が常にあたって歩いていると痛くなるなどの問題が出てくる。これが嫌で、靴だけは店舗に行って試着をして買うという人も少なくない。

▲得物が公開したサイズ助手機能。無料で送られてくる専用シートの上で足の写真を撮ると、足の3Dモデルが生成される。

 

足の3Dモデルを簡単に作成できる機能

この問題を解決したのが、口コミ投稿型EC「得物」(ダーウー)だ。商品ごとに口コミや写真が投稿できる仕組みで、商品ごとに整理をされたインスタグラムのような感覚だ。このような投稿を見て、購入を決めることができる。写真に商品タグを埋め込む種草にも対応しており、投稿者の記事から購入に至った場合は手数料が入る仕組みだ。

この得物が靴の購入の際に、自分で足の形を測定できる機能を追加した。この「サイズ助手」と呼ばれる機能を使うにはまずは申請をして、専用のシートを送ってもらう必要がある。これは無料で送られてくる。

専用シートが送られてきたら、裸足の足をシートに乗せて、スマホで指定通りに7方向から写真を撮るだけだ。これを両足について行う。これで足の3Dモデルが作成される。

▲生成された足の3Dモデルは、100以上の標準モデルに分類をされ、それに基づいてお薦めの靴が表示される。

▲撮影はスマホで7枚の写真を撮るだけ。方向などもアプリが支持してくれるため5分程度で終わる。

 

7方向の写真から3D合成。甲高なども把握

3Dモデルは7方向からの写真を合成して作成され、指示通りに撮影をすれば、誤差は3mm以内に収まるという。単にサイズ、甲の高さだけでなく、土踏まずの形状や足先の形状パターンも分類される。

この形状パターンは、100種類以上の標準モデルが備えられており、それに最も近いものが選ばれて判定される。

▲生成される3Dモデルは誤差が3mm以内。

 

足にフィットする靴がECでも購入できる

このような3Dモデルに基づいて、おすすめのシューズが検索される。単にサイズだけでなく、足の形状に応じたおすすめであるので、安心をしてECで購入することができる。特に輸入製品を購入するときは、単なる足のサイズだけで買っても、解釈や形状の標準が各国によって微妙に異なるため、うまくフィットするものが選べないことが多い。

得物では、運営側が3Dモデルとのマッチングをあらかじめ測定をしておいてくれるため、適切な靴が選ばれることになる。

▲足の3Dモデルに基づいて靴が紹介されるため、サイズを選ぶ必要はなく、また購入してから甲やカカトがあたって痛いということもほぼなくなる。