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台湾の「電気サブスク」スクーター「Gogoro」が中国上陸目前。バッテリー事故解決の決め手となるか

バッテリー交換を専用ステーションで行う「電気サブスク」スクーター、台湾のGogoroが中国の大手企業と提携し、中国上陸を目指している。台湾では充電の煩わしさを解決するとして人気になったが、中国ではバッテリーの発火事故を防ぐという点で注目されていると車家号が報じた。

 

電気サブスクで話題のGogoroが中国上陸

台湾の電動二輪スクーター「Gogoro」(ゴゴロ)が中国でも販売される見込みになった。Gogoroは、中国の大長江集団、雅迪科技(ヤーディー、Yadea)と提携をした。前者は中国最大の燃料二輪車のメーカーであり、後者は中国最大の電動二輪車のメーカーであるため、中国でもGogoroの電動スクーターが見られるようになる。

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▲Gogoro3。台湾では若い世代から人気となっている。正面から見たっ姿がスライムに似ているというデザインも話題になっている。

 

バッテリーはステーションで交換をする

Gogoro(https://www.gogoro.com/tw/)は、台湾でユニークな電動スクーターを販売しているメーカー。性能やデザインだけではなく、「電気サブスク」とも呼ばれるユニークなシステムを提案し、エコやSDGs(持続可能な開発目標)の観点からも注目されている。

最新のGogoroシリーズ3では、2つのバッテリーを搭載し、満充電ではカタログ値で170kmの走行ができる。このバッテリーを自分で充電する必要はない。台湾全土に2100ヶ所以上あるGo Stationに行き、使い終わったバッテリーを開いている箇所に入れると、充電ずみの新しいバッテリーが取り出せるようになる。

利用料金は、月499台湾ドル(約2000円)の月額料金で315kmまで、以降は1kmあたり2.5台湾ドル(約10円)の従量制と、月1199台湾ドル(約4700円)の使い放題などのプランがある。スマホの通信量プランと同じような考え方だ。

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▲ステーションの空きにバッテリーを入れると、充電済みのバッテリーが飛び出てくる。ガソリンスタンドで燃料を入れるよりも手軽にエネルギー補給が可能。

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▲座席の下が収納とバッテリーになっている。ふたつのバッテリーを使い、ステーションで交換することができる。

 

電動バイクは充電が大きな課題になっていた

電動バイク、電動スクーターはバッテリーの充電が痛点になっている。Gogoro3はカタログ値で満充電の航続距離170kmになっているが、実際にはライトを点灯させたり、運転状況もあるので120km程度になる。これは台湾で一般的な125cc燃料スクーターの満タン航続距離よりもかなり短い。

しかし、燃料を補給するのは一瞬だが、バッテリーを充電するには時間がかかる。それを防ぐには、もう1セットのバッテリーを購入し、置いておくしかないが、バッテリーを交換するために家に帰らなければならない。この不便さが、電動バイクが主流になれない理由だった。Gogoroはこの問題点を解決したものだ。

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▲GogoroのGo Stationマップ。台湾全土で2104ヶ所の交換ステーションが設置されている。

 

中国では発火事故防止の点から注目される

この仕組みが中国で注目されている。なぜなら、電動バイクのバッテリーの発火事故が相次いでいるからだ。一部では、製品そのものに問題があるケースもあるが、多くの場合は使う側が定められた手順を守らないことにある。特に大きいのが、バッテリーを室内に持ち込み、充電したまま放置し、過充電させてしまうパターンだ。バッテリーが熱を発し、その熱が逃げない状態だと発火に至る。

メーカーでは、使用手順を守ってほしいと呼びかけているが、現実問題として、すべての消費者が正しい手順で充電することは難しい。本来は、バッテリー側に過充電や過熱を感知し、充電を停止する機能を備えるべきで、そのような機能の搭載も進んでいるものの、市場にはまだまだ対策されていないバッテリーが残ってしまっている。

Gogoroのような電気サブスクのシステムであれば、このような問題が一気に解消される。

 

https://www.bilibili.com/s/video/BV1kk4y167xe

▲上海で起きたバッテリー発火事故。突如として、一瞬で室内が炎に包まれる。

 

Z世代が好む機能が満載

Gogoroはこの電気サブスクだけでなく、デジタルネイティブ世代が好むさまざまなスマート機能を搭載している。専用のGogoro iQアプリと連動し、iPhoneのSiriを経由して「スタートさせて」「鍵をかけて」などの音声で操作ができる。また、アプリからリモートでライトの点灯などのセルフチェックをする機能もある。もちろん、バッテリーがあるGo Stationの位置を地図から検索をすることもできる。

また、正面から見たデザインが、スライムのようだと若い世代からは、デザインも歓迎されている。

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▲Gogoroの専用アプリ「Gogoro iQ」。始動前の自動診断やSiri経由で音声によるスタート、施錠などができる。

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▲ハンドルサイドには、ドリンクホルダーもつけられている。こういう細かいところまでデザインされていることも人気の理由のひとつになっている。

 

価格面での弱みを克服できるか

しかし、そのGogoroにも弱点がある。台湾での燃料、電動を含む二輪車の売り上げランキングで、2019年Gogoroは4位に食い込む健闘をした。しかし、2020年になって売り上げが大きく落ち込んでしまったのだ。

その理由はGogoro3で3万5980台湾ドル(約14.3万円)からという高価格にある。また、電気サブスクの月額料金も燃料代に比べると割高になる。それでも2019年に売れたのは、政府の補助金があったからで、それが減少をした2020年には如実に売れ行きが落ちてしまった。

Gogoroが中国に上陸をして、大長江集団、雅迪科技とともに、この課題をどのように解決していくのかが注目されている。

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▲Gogoroは2019年には二輪車売上(燃料・電動)で第4位と健闘したが、補助金が削減された2020年には売上が半減してしまった。中国で、この課題を克服して普及できるかどうかが注目されている。