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野性のインド象を鉄道事故から守れ。AI画像判別を利用したインド象軌道内侵入警告システム

インド南部のマダックカライ森林でインド象鉄道事故から守るAIシステムが導入された。軌道内に侵入したインド象をAI画像判別し、アラートを出すというものだ。インド象鉄道事故死は、密猟よりも多く、野生のインド象の保護に貢献すると期待されていると九派新聞が報じた。

 

10年で186頭のインド像が鉄道事故で死亡している

2010年から2020年までの10年間、インドでは1160頭のインド象が自然死以外の原因で死んでいる。

その中で最も多い原因は、電線などに接触をした感電死で741頭。第2位の原因が鉄道軌道上に侵入をして列車との衝突が186頭。多くの人が想像する密猟による死亡は169頭と3位。さらに4位は、人間が生産したものを食べた中毒死で64頭となる。特に人的要因で死亡する象の数は増加傾向にある。

2017年の統計では、インドに2万9964頭の野生のインド象がいて、32の保護区を設定して保護をしているが、このような原因で減少傾向にある。

インド象が軌道内に侵入し、列車と接触して死亡する例は、10年で186頭に及んでいる。

 

インド象鉄道事故を避けるさまざまな案

インド環境省では、インド象鉄道事故問題に取り組むため、今年2022年初めに鉄道省環境省のスタッフからなる常設委員会を設置し、対策を協議していた。

委員会では、鉄道を渡るための回廊を用意する案が提出された。鉄道を渡らなくても、自由に移動ができる地下道か陸橋を設置するという案だ。また、象の通り道になっている地区では、警告看板を設置し、列車の運転士に注意を促すという案も出された。また、鉄道脇の樹木を伐採し、更地とし、列車の運転士がいち早く象の存在に気づけるようにするという案も出された。

▲この10年で、1160頭のインド象が自然死以外の要因で死亡している。死亡原因は、感電死、鉄道事故死、密猟、中毒死の順番になっている。

 

AIを活用したインド象警告システムが採用

インド南部のマダックカライ森林では、AIを使った象侵入警報システムが採用された。このシステムでは、象が最も鉄道を渡る地点を中心に、半径50mをレッドゾーン、半径100mをオレンジゾーン、半径150mをイエローゾーンとし、それぞれに応じた警告を発報する。

イエローゾーンに象が侵入すると、森林監視員にアラート。オレンジに侵入すると、森林監視員と現場の森林保護作業員、鉄道駅長にアラート。レッドに侵入すると、森林監視部門、鉄道部門へのアラート、さらに通過予定の列車の運転士にアラートが出される。

インド象の監視システム。設備としては通常の防犯カメラと同じ構成であるため、コストもかからない。

 

インド象の画像判別は人力では難しい

このシステムは、カメラと太陽電池パネル+バッテリーが主な要素で、撮影した風景映像の中から象をAIが画像判別して、象を確認するとアラートを発報する仕組みだ。

象は地面や樹木の色と同じであるため、監視カメラを設置して、人間の目で監視をするのには限界がある。また、夜間に象が出没することもあり、その場合は監視カメラの目視では見逃すことになる。また、象の侵入はたびたび起こるものではなく、そのために人が監視をした場合、集中力を保つことは難しい。このような理由から、AIによる画像判別を応用した監視システムが以前から研究されていた。

また、象による人間の被害もある。毎年50万世帯の農家が作物を荒らされるなどの被害に遭っている。道路や住宅地に出没し、興奮をしたインド象によって年間500人が命を落としている。この監視システムが効果を発揮すれば、このような人を守る監視システムにも応用ができ、人と象が共存できる環境をつくれるのでないかと期待されている。

インド象の色は、地面や樹木と同じ色であるため、監視カメラ映像を人間が監視する方法はほとんど不可能。AIによる画像判別であれば見逃すことはなく、夜間もインド蔵の存在を感知することができる。