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今回は、アクションRPG「原神」(げんしん)を開発した米哈游(miHoYo)についてご紹介します。
ゲームというのは好きな方は好き、興味がない方はないとはっきり分かれるため、特定のゲームや特定のゲーム企業を取り上げると、半分以上の読者にとっては興味のない記事になりかねません。
「vol.149:中国スマホゲームの進む2つの方向。海外進出とミニプログラムゲーム」で、「羊了個羊」(ヤンラガヤン)というゲームを取り上げたのは、ゲーム産業がWeChatミニプログラムを利用して収益の拡大をねらうという新しいビジネスモデルが生まれる可能性があったからです。同じ手法が、他のエンターテイメントである映画やドラマ、音楽などで起こる可能性すらあります。
ではなぜ、「原神」というゲーム、miHoYo(中国名の読みはミハヨに近いですが、日本ではミホヨと読むのが一般的です)というゲーム開発企業を取り上げるのでしょうか。ゲームの内容の解説や攻略法をここでご紹介するつもりはありません。取り上げる理由は、90后(90年代生まれ)のビジネスの発想方法が、それまでの80后とは大きく違っていることをご紹介したいのです。
80后は、貧しい中国を知らない世代として中国社会の改革者の役割を担っている世代です。伝統的な習慣や考え方にとらわれず、旧習を打破し、場合によっては破壊をしていく創造者です。
ビジネスの世界では滴滴、ウーラマ、ピンドードーなどの創業者が80后です。滴滴はアプリでタクシーを呼ぶというサービスから始まっています。ウーラマはフードデリバリーというサービスを発明した企業です。ピンドードーはSNSとECを連動させました。テクノロジーを媒介にして、タクシー業界、飲食業界、EC業界の壁を打ち破ることで成立したサービスです。
では、90后はどのようにビジネスをつくっていくのでしょうか。あくまでも私個人の感覚ですが、miHoYoがその典型であるように思います。それを今回ご紹介したいのです。
壁を破る形でビジネスをつくっていく80后とどこが違うのかを意識しながらお読みください。
miHoYoの創業者の中心人物、蔡浩宇(ツァイ・ハオユー)は1987年生まれであるため、厳密には80后ですが、90后の先駆け世代です。ちなみに95年以降がZ世代と呼ばれます。
そういう90后たちが、中国の文化を大きく変えようとしています。そして、この世代は基本的に全員がオタクです。ACGN(アニメ、コミック、ゲーム、ノベル)が趣味の中心であり、世代を通じた基礎教養になっています。もちろん、ほとんどがガチのオタクとは呼べないライト層ですが、「萌え」は誰もが理解する共通感覚になっています。このような世代が社会の中で活躍するようになっているのです。
これから90后が中国社会の中心になるとともに、ゲーム以外の分野でも同じことが進んでいきます。miHoYoは企業スローガンとして、Tech Otakus Save the World(テックオタクが世界を救う)を掲げています。今後の中国では、Tech Otakus Change the Chinaという現象が起きるかもしれません。
原神というゲームの内容についてあまり深く触れるつもりはありませんが、お話を理解していただくために、ある程度はご紹介しておく必要があります。
原神は、男性または女性の主人公(自分の分身)が、仲間のキャラとともに世界を探索するアクションRPGです。デジタル解析プラットフォーム「Sensor Tower」は、原神の2年間での累積収入が264億元(約5200億円)と推定できると発表しました。日本の企業情報を見ると、オリエンタルランド(ディスニーリゾート運営)の2021年の売上高が2757億円となり、原神の売上高とほぼ同じです。原神は、東京ディズニーリゾート(コロナの影響で大幅減収しているとは言え)と同じくらいお金を稼いでいるのです。
原神の何が面白いのかは、さまざまな方が記事やブログで書いていますが、重要なのはあらゆる要素のレベルが高いということです。オープンワールドの作り込み、萌えキャラの際立ち方、バトルモーションの作り込みの細かさ、深みのあるバトルシステム、美しいグラフィック、継続的に広がるオープンワールドと追加されるイベントシナリオとキャラ、無課金でも遊べる課金圧の低さなど、この手のゲームに必要とされるすべての要素においてレベルが高いのです。
ゲームだけでなく、映画やドラマもそうかもしれませんが、気に入る点は人それぞれです。しかし、原神はあらゆる要素のレベルが高いので、さまざまな興味を持った人が異なる点を気に入って原神にハマっていきます。この受け止めの広さが原神のヒットの理由だと私は考えています。
原神のリリース前は、予告映像などを見て、多くの人が「ゼルダの伝説ブレス・オブ・ザ・ワイルド」のパクリーゲームという酷評をしました。しかし、リリースされてみると、そのような酷評はかなり減少しました。実際にプレイしてみると、見た目は確かに似ているところもありますが、路線の異なるゲームだということがわかったからです。
普段ゲームをやらない方も、原神はぜひインストールして、チュートリアルだけでも遊んでみることをお勧めします。「ゲームはここまで進化しているのか」と驚かれると思います。
ただし、本格バトルが始まると、ゲーム経験の少ない方にはかなり難易度が高いと思います。単純なバトルではなく、敵とキャラの相性であったり、攻撃の組み合わせ、重ね合わせをよく考えないと攻略ができません。今の時代は普通の難易度のゲームなのかもしれませんが、私にとっては正直手に余る難しさです。この難しさも人気の要素のひとつになっています。
今回は、原神を生み出したmiHoYoが、中国のゲーム業界をどう変えていったのかをご紹介します。
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vol.149:中国スマホゲームの進む2つの方向。海外進出とミニプログラムゲーム
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