中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

もう交通違反は見逃しません。電子タグ対応の電子車検証が義務付けへ

中国では2018年から、電子車検証制度が施行される。電子タグに対応し、路肩の受信機で、自動車のIDを受信することができる。搭載しない自動車は罰金500元となると今日頭条が報じた。

 

交通違反の補足率100%。戦々恐々とするドライバーたち

電子車検証(Electronic Vehicle Identification=EVI)は、電子タグRFID)を利用した自動車のID。2018年1月1日から、全国でこの電子証明書の搭載が義務付けられることになり、ドライバーは戦々恐々としている。

なぜなら、交通違反が100%捕捉されてしまうようになってしまうからだ。警官がその場にいなくても、交通違反が見つかってしまうかもしれない。路肩に無線タグの受信機が並べられるようになると、速度違反、駐車違反、信号無視などは、自動判別されて、罰金の請求も自動請求、支払いも自動支払いということになるかもしれない。

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▲2018年から搭載が義務付けられる自動車用電子タグ。路肩の受信機で、IDを捕捉できるので、交通違反が100%捕捉されると、ドライバーたちは戦々恐々としている。

 

渋滞回避から渋滞を起こさないスマート交通管理へ

しかし、ドライバーにメリットもある。この制度が目指しているのは、スマート交通システムの構築だ。すべての自動車の動きを把握することで、交通量を分析。カーナビは「渋滞を回避する」ルートを教えてくれるのではなく、「渋滞を起こさない」ルートを教えてくれるようになるかもしれない。

また、自動車に電子IDができることで、さまざまな情報を紐付けができるようになる。将来的には決済IDと紐付けをして、有料道路、駐車場、ガソリンスタンド、修理などさまざまなことがEVIひとつでできるようになる。

・EVIとスマホがあれば、コネクティッドカーが実現できる

最も大きなメリットは、すべての車がコネクティッドカーになるということだ。しかも、自動車IDとスマホを紐づけることで実現できてしまう。周囲の道路状況、車両状況の提供を受けることで、危険箇所の通知や、部分自動運転などを可能にする基礎となる。将来的には、駐車場に停める際には、入り口で降りれば勝手に空いている場所を探して駐車、乗るときは呼び出しをかければ出てくるといったことが可能になっていく。

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現在はなんの役にも立たない。でも、5年後には…

もちろん、そこにいくまでは、さまざまな技術開発が必要になるが、先に電子IDの搭載を義務付けてしまうというところが、いかにも中国らしい。現在は、単なるプラスティックカード電子タグで、これを車のどこかにつけておけばいいだけで、特になにかが変わるわけではない。しかし、こういう義務付けをすることが、5年後に大きな違いとなって現れてくるのだ。

中国の自動車、道路は、5年後に大きな進化を遂げているかもしれない。

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▲見た目はただのカード。しかし、電子タグRFIDが内蔵されている。自動車のIoT化の大きな一歩となる。

 

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▲中国でも自動車関連の行政は、縦割りになっていて、情報の統一が行われていない。ウィンドウには複数のシールを貼らなければならず、ドライバーからは手続きが煩雑だと不評だ。電子タグで、このような情報が一元化されることが期待されている。

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意外に賢い!新幹線で送る翌日配送宅配便

今年の11月11日独身の日セールは、過去の記録を塗り替える大成功。宅配便発送件数は13.6億件に登り、その中の相当数が「当日配送」「翌日配送」だ。この数とスピードに対応するため、各宅配業者が中国版新幹線の活用を始めたと第一経済網が報じた。

 

物が大移動する秋の“春節

中国ECサイト最大のお祭り「11月11日独身の日」。今年はアリババのT-mallだけで1日の売上が1682億元(約2兆8700億円)となり、中国全体での宅配便発送件数は13.6億件という大盛況に終わった。

物流業界では、独身の日は「もうひとつの春節」と呼ばれる。春の春節は、里帰り、長期休暇の旅行のために中国14億人が大移動をする季節だが、独身の日は13.6億個の荷物が購入者の自宅を目指して大移動をする。春が人の春節であれば、秋は荷物の春節なのだ。

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▲なんだか不思議な光景だが、中国版新幹線を使った宅配荷物の輸送光景だ。

 

170本の臨時高速鉄道列車が2650トンの宅配便を運ぶ

このため、ありとあらゆる交通機関が貨物輸送に利用される。中国鉄路総公司によると、この期間に170の臨時列車が貨物輸送に使われ、2650トンの荷物が輸送されるという。

しかも、ECサイトの配送は、翌日配送が基本になっている。そのため、臨時列車の多くは従来の貨物列車ではなく、中国版新幹線の高速鉄道なのだという。中国鉄路輸送武漢支社の李志剛副社長は、第一経済網の取材に応えた。「高速鉄道1車両に80個から100個の配送袋を載せることができます。このような臨時列車が、武漢から広州、深圳、北京、貴陽などに向けて出発し、消費者は当日のうちに注文した商品を手にできることになります」。

武漢からは、独身の日から10日間、このような臨時列車が20本出発をし、1列車が平均48トンの荷物を運ぶという。また、北京からはこの期間に200本の臨時列車が荷物を運ぶという。

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▲全国の中国版新幹線=高速鉄道が、宅配便輸送に活用された。当日配送、翌日配送に間に合わせるためだ。

 

新幹線宅配は、航空機とほぼ同じ時間でコストは安い

アリババ研究院の物流専門家である粟日は、第一経済網の取材に応えた。「現在、宅配物流の80%ほどがトラック、15%程度が航空機で、鉄道は2%から5%程度にすぎません。一般の貨物列車では、時間がかかりすぎて、ECサイトの当日配送、翌日配送に対応できないからです。しかし、500kmから1000kmの輸送では、高速鉄道は、時間的には航空機とほぼ同等で、コストはかなり安くなります」。

今後も、高速鉄道を利用した宅配輸送は増えていくと見られているが、2つ問題があると専門家は指摘する。ひとつは、貨物輸送に適したインテリアではないので、積載効率が悪いこと。貨物専用車であれば、現在の倍以上の荷物が積載でき、コストはさらに安くなる。しかし、年に1回の独身の日のためだけに、貨物専用車両を用意することは難しい。

もうひとつは、通常の運行があるために、都合のいい時間に貨物高速鉄道列車を走らせるわけにはいかないということだ。高速鉄道側が組んだダイヤの枠の中でしか輸送ができない。

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▲全国の中国版新幹線=高速鉄道が、宅配便輸送に活用された。当日配送、翌日配送に間に合わせるためだ。

 

人と貨物両用の車両開発も企画されている新幹線宅配輸送

しかし、延伸する路線と頭打ちになる利用客の板挟みで、経営が難しくなりつつある高速鉄道にとって、貨物高速鉄道は大きなビジネスチャンスでもあるようだ。すでに、人と貨物が混用できたり、座席を簡単に折りたたんで貨物車両にできる新型車両の研究が始まっている。

高速鉄道で貨物を輸送するというのは、今年が初めての試みだったという。しかし、この方式は定着していきそうだ。

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中国の物流は、いつもギリギリだから進化する

11月11日独身の日セールから1週間、宅配業界は1年で最も忙しい日を迎える。中国全土では、10億件を超える宅配便が発送され、その多くが「当日配送」「翌日配送」なのだ。広東省郵政管理局では、さまざまな対策をとっていると広州参考が報じた。

 

広東省だけでも3.6億件の宅配便

広東省郵政管理局は、この1週間で広東省が扱う小包、宅配便は3.6億件に達する見込みだと発表した。これは中国全土の宅配件数の1/4にあたるという。

このため、広東省だけで7万人の臨時配達員が雇用された。また、33万平米の作業場を用意し、6000台の配達車両を増強した。それだけではなく、自動仕分け、シェアリング宅配ロッカーなどの技術も積極的に活用していくという。

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平常時の3倍の取扱量

広東省郵政管理局の羅徳韶副局長は、広州参考の取材に応えた。「現在、広東省には1日100万件の処理能力がある仕分け場が21カ所、50万件の仕分け場が25カ所あり、合計で約1日6000万件の処理能力があります」。これだけの能力があれば、3.6億件の宅配便は処理できるが、現実には毎日均等に宅配便が送られてくるわけではなく、ピーク時には1日8500万件を突破すると見込まれている。これは、通常の取扱件数の3倍になるという。

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荷物の仕分けは、ほぼ無人で行われる

そこで、4つの技術を使って、効率化を図っているという。

ひとつは、自動仕分けだ。配達先を自動読み取りして、適切な配送袋に入れる。ECサイト唯品会の華南倉仕分け場、ECサイト京東の黄埔亜洲1号仕分け場、アリババの広州増城倉仕分け場などが導入済みで、ほぼ無人での作業が可能になっている。

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▲唯品会の華南倉仕分け場では、ほぼ無人の仕分け作業が可能になっている。送り状は電子化され、発送先ごとに荷物が仕切られていく。リユース梱包箱は、配達員が持ち帰るので、商品の大きさにこだわらず、同じサイズの箱に梱包できる。サイズが標準化できることで、仕分け、発送、輸送などの作業が大きく効率化できる。

 

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▲京東の黄埔亜洲1号仕分け場。完全無人ではないが、荷物件数に比べればきわめて少ない人数しか働いていない。ほとんどの仕分け作業が自動化されている。

 

導入が進むシェアリング宅配ロッカー

2つ目がシェアリング宅配ロッカーだ。公共施設やマンションなどに設置をされ、配達されたことはスマートフォンに通知がいき、鍵もスマートフォンで開ける。24時間受け取ることができ、配達の効率を大きく改善する。

広東省では、3万カ所のシェアリング宅配ロッカーを設置。1日に120万件の宅配を宅配ロッカーで対応できるという。

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▲普及し始めたシェアリング宅配ロッカー。大規模マンションなどでは屋内に、さらには駅や商業施設などの公共性の高い場所にも置かれ始めている。配達の通知はスマートフォンにきて、解錠もスマートフォンで行う。

 

プライバシーに配慮した電子送り状も90%の普及率

3つ目は、電子送り状だ。従来の紙の送り状だと、消費者の氏名や住所、電話番号などが誰にでも読めてしまう。これを電子化し、宅配業社の配達員が持っている端末(スマートフォン)をかざさないと読めないようにした。読み取りをしたときは、どの配達員が読み取りをしたのかも記録される。こうすることで、消費者のプライバシーを守るとともに、配達の再委託がしやすくなる。

例えば、大規模マンションの場合、そのマンションの配達のみ、臨時雇用した配達員に委託をすれば効率はいい。しかし、紙の送り状では、その臨時の配達員が送り状の情報を使って、別の商売をしてしまったり、あるいは犯罪行為を行ってしまう危険性がある。しかし、電子送り状であれば、誰が読み取りをしたかがすべて記録されるので、このような不安なく、配送を再委託できるようになる。広東省では、すでに90%が電子送り状になっている。

 

リユース梱包箱も普及が進む

4つ目は、リユース梱包箱だ。プラスティック製の折りたたみ箱で、配達時に中身だけを渡して、箱は折りたたんで持ち帰ってしまう。段ボールを使わないので、環境に優しく、消費者もゴミを捨てる手間が省ける。

梱包も、段ボール箱に比べて簡単で、サイズも標準化できるため、梱包作業、仕分け作業などが大きく効率化できる。

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いつもギリギリ。それが進化の原動力

広東省では、このような技術を使って、独身の日の配送を乗り切ろうとしている。しかし、独身の日のセールは、毎年前年越えの成長を続けている。来年は、さらに処理能力を増やさなければならないし、新たな技術を投入していかなければならない。中国の物流の進化には目覚ましいものがあるが、それは毎年毎年、限界量ギリギリの作業を強いられているからだ。11月11日は、毎年やってくる緊急事態。それに合わせて、新技術が投入され、物流の体制が整えられていく。

こうして、中国の物流技術は進化をしていく。

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中国独身の日セールは、1日の売り上げがなんと2兆8700億円

成功するかどうか懸念の声もあった11月11日独身の日のセールだったが、終わってみればかつてないほどの大成功だった。特に消費者の出足が早く、朝方7時には一昨年の記録を塗り替える成功だったとPingWest品玩が報じた。

 

懸念の声も吹き飛ばした大成功

さまざまな懸念の声があった今年の「独身の日」。いわく「段ボール箱不足により発送ができない」。いわく「消費者はすでに飽きがきている」。いわく「莫大なクーポンを投入しているからで、利益は取れていない」などなど。しかし、そのような声に反して、今年の11月11日、独身の日は大成功に終わった。

アリババが運営するT-mallの1日の売上は、最終的に1682億元(約2兆8700億円)となり、過去の記録を大きく更新した。これは、日本のアマゾンの“年間”売上1.1兆円の2倍以上だ。それをたった1日で達成してしまった。

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▲T-mallの最終的な売上は1682億元という驚異の数字になった。昨年の最終売上は1207億元。

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最も売れた商品はウェットティッシュ

T-mallの過去の売上記録は、2015年の912億元だったが、今年はこれを朝7時22分54秒に達成してしまった。

この絶好調は、T-mallだけでなく、もうひとつの大手ECサイト「京東」でも、朝7時46分58秒に売上1000億元を突破。過去の記録を軽々と塗り替えた。

もっとも売れた商品は、ウェットティッシュ(トイレクリーナー、メイク落としなどを含む)。以下、クッキー、洗濯洗剤、携帯電話、スナック菓子となった。単価が大きかった商品は、スマートフォン、薄型テレビ、エアコン、ノートパソコン、洗濯機となった。

さらに、大きな特徴が、スマートフォンからの購入が全体の91%と、過去最高になったことだ。また、決済手段も完全にスマホ決済となり、T-mallでは、同じアリババが運営するアリペイによる決済回数は、11日のセール開始後のわずか5分22秒後に、25.6万回/秒というピークに達した。これは昨年のピーク値の2倍になる。

また、セール開始7分23秒後には、決済回数が1億回に到達した。

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▲近年では、独身の日という言い方はほとんどされなくなってしまった。本来は、1が並ぶ11月11日に、単身者が自分へのご褒美を買う日だった。今では「全球狂歓節」「購物狂歓節」という言い方が一般的になりつつある。「地球的規模で、買い物に、狂い、喜ぶお祭り」といった意味だ。

 

出足が早かった消費者たち

今回の独身の日の特徴は、とにかく消費者の出足が早かったことだ。11月11日午前0時から始まったセールは、深夜に購入が集中をし、朝方にはピークをすぎてしまった。これは、独身の日セールが、「商品価格が安くなるセール」ではなく、「事前にクーポンを大量配布することにより、低価格で購入できるセール」であることによるものだ。消費者に、「早く注文しないと在庫切れになる」「発送が遅くなり、手にするのが遅くなる」という心理が働き、セール開始後に焦って注文をしているのではないかと思われる。

兎にも角にも、今年のセールが例年以上の成功であったことは間違いない。来年はさらなる成功を目指して、ECサイト企業の新しい1年が始まる。

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「段ボールが足りない!」問題を解決するリユース梱包箱

11月11日独身の日を間近にして、業界を不安にさせているのが「段ボールが足りない」問題だ。これを解決するため、ECサイト「蘇寧易購」では、リユースできるプラスティック製梱包箱20万個を投入したと今日頭条が報じた。

 

繰り返し1000回は使えるリユース梱包箱

いよいよ中国ECサイト狂乱の日「11月11日独身の日」を迎えるが、業界が最も不安視しているのが、段ボール箱不足だ。10億件を超える宅配便が発送されるこの日、梱包材不足で配送が遅れるのではないかと懸念されている。

ECサイト「蘇寧易購」では、プラスティック製のリユース梱包箱を大量に導入して、話題になっている。この“リユース梱包箱”は、価格がは25元だが、繰り返し1000回以上使える耐久性があるため、1回の梱包コストは0.025元となり、段ボール箱よりも低コストになる。

折りたたみができる箱で、配達員が届けたときに、中身を出して、箱は畳んで、そのまま持ち帰る方式だ。

段ボール箱が抱えている、段ボール箱不足、大量のゴミ問題の両方を一挙に解決することができる。

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ECサイト「蘇寧易購」が開発したプラスティック製リユース梱包箱。配達をしたら、その場で折りたたんで回収をする。

 

リユース箱にすれば、大量の森林伐採を止めることができる

ECサイト「蘇寧易購」の候恩龍総裁は、天下公司の取材に応えた。「このリユース梱包箱は、私たちが設計したもので、11月11日独身の日には、20万個を投入します。もし、宅配企業上位25社がすべてこのリユース箱に切り替えてくれたとしたら、11月11日の1日だけで、小興安嶺(黒竜江省にある山脈)の森林46個分の樹木を節約できる計算になるのです」。

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ECサイト「蘇寧易購」が開発したプラスティック製リユース梱包箱。配達をしたら、その場で折りたたんで回収をする。

 

不在時にどうやって回収するかという問題も

ただし、天下公司は、問題点も指摘している。配達員が、商品を出した後、箱を折り畳んで持ち帰るとなっているが、実際にやってみると、折りたたむ動作は簡単ではない。より簡単な機構にしないと、現場での配達員からの不満がでてくるだろうと論評している。

そして、さらに問題なのが、現在の宅配便では、受取る人と対面して渡すということが少なくなり、マンションの管理人に渡す、宅配ロッカーに入れるということが多くなってきている。

この場合、商品だけを出して預けるわけにいかず、箱ごと置いていくしかない。この箱を回収しようとすると、その分のコストが上昇してしまうことになる。

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▲商品を入れたら、専用の糸で封印する。これが、「配達員が勝手に開けていない」証明になる。

 

紙ゴミとプラスティックゴミのどちらが環境に優しいか

もうひとつの問題は、リユース梱包箱といっても、1000回の使用後はゴミになる。段ボール箱のようなリサイクルできる、あるいは単純に焼却処分できるゴミに比べて、プラスティックゴミは処分が難しい。すべての梱包材をこのリユース箱に切り替えたとした場合、段ボールゴミとプラスティックゴミのいずれが環境に与える負荷が少ないのかは、慎重に考えてみる必要がある。

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ECサイト「蘇寧易購」は、今年の独身の日に、このリユース梱包箱を20万個投入する。うまく回収ができれば、今後、採用するECサイトも増えていくと思われる。

 

購物狂歓祭に対する批判も起き始めている

また、11月11日の独身の日の狂乱状態をそろそろ考えるべきだという声も上がり始めている。独身の日は、最近では購物狂歓祭(買い物に狂い喜ぶ祭り)とも呼ばれるようになり、各方面から「行き過ぎ」だという批判の声も上がり始めている。

消費者が、純粋にこの日に買い物をしたくなるのであればいいのだが、実態は大量のクーポンの投入だ。独身の日に利用できるクーポンを事前に大量に配布をし、新規利用者を獲得したい。それがECサイト側の狙いで、投入クーポンの予算と、独身の日を売り上げを比較したら、赤字になっているECサイトも多い。

利用者から見れば、うまく立ち回れば、11月11日に、タダ同然で商品を手にできることになり、熱狂する要因はこれが大きい。

クーポンを使って、あるECサイトを利用したからといって、引き続き、そのECサイトを利用するかどうかは、ECサイトの利便性次第。消費者はどんどん賢くなっている。いろいろな意味で、独身の日は転換点を迎えている。

 

インドで始まったシェアリングレスキュー

インドで、スマホで呼べるレスキュー「ワンタッチレスポンス」サービスが話題になっている。スマホで呼べば、1分で駆けつけてくれるというレスキューサービスだ。治安が改善しないインドで、警察よりも頼りになると加入者が増えていると今日頭条が伝えた。

 

女性に対する犯罪が問題化しているインド

経済成長の頭打ち感が出てきた中国に代わり、今、アジア圏で経済が急成長しているのがインドだ。しかし、経済の成長とともに、治安も悪化している。

特に女性の地位が低く、モノ扱いされている旧習が残っており、未だに女性が金銭で売買される事件が起きている。レイプは15分に1件起こり、女性に対する暴行事件は1分に1件起きている。これは世界の大都市の平均の3倍になるという。外国人旅行者の女性が、このような事件に巻き込まれる事案も起きており、どの国でもインドへの旅行者に対しては渡航安全情報で注意喚起をしているほどだ。


One Touch Response

▲OTRのプロモーションビデオ。防犯だけでなく、自動車事故、急な病気など、警察、救急、消防の代わりをしてくれる。

 

頼りにならないインドの警察

このような治安を改善する要の警察が頼りにならない。なぜなら、警察官の数があまりにも少なすぎるのだ。統計によると、市民1000人あたりの警察官は1.3人でしかない。世界平均では3人なので、半分以下だ。

しかも、警察官という職業の地位が低く、報酬も低く、月100ドル(約1万1000円)でしかない。そのため、警察官は、危険だと思われる現場には行こうとしないし、わずかな額の賄賂の誘惑に負けて、犯罪を見逃してしまう。

政府は女性に対する犯罪を減らすために、武装した女性警察官チームを設立し、効果を上げているが、大量のチームを運営する予算もなく、効果は限定的だ。

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▲女性に対する犯罪を防ぐため、武装した女性警察官のチームも設立されているが、人数が少ないため、効果は限定的だ。

 

1ヶ月440円で雇えるレスキューサービスOTR

インドのビジネスマン、アービンド・カーナ氏は、この状況を変えたいと考え、ワンタッチレスポンス(OTR)というサービスを始めた。「交通事故を起こしたときどうしますか?深夜寂しい道で、怪しい男性につけられたらどうしますか。家に一人でいて、突然体調が悪くなったらどうしますか?インドでは、警察、救急車、消防署はあてにできません」。

OTRは、スマートフォンアプリの形になっていて、アプリ内の緊急ボタンをタップするだけで、緊急通報がセンターに送られる。もちろん、GPS情報も伝わるので、これだけで、バイクに乗った2人の緊急レスポンスチームがあなたの居場所に急行する。

そのままオペレーターと話をすることができ、状況を伝えると、その内容が急行中のチームに伝えられる。

現在、ニューデリー市では、180組の緊急レスポンスチームが待機をし、市内であれば、どこでも1分以内に緊急レスポンスチームが到着するという。

驚くのはその価格だ。利用料は月単位の契約で250ルピー(約440円)、1日あたりの価格にするとわずか15円程度でしかない。

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▲OTRを始めたアービンド・カーナ氏。インドの課題を解決したいという気持ちで始めたが、きちんと黒字化も見据えている。

 

女性には心強いOTRサービス

すでにこのOTRは、利用者の命を救っている。インドの女性、サーシャ・シンは、友人の結婚式に参加し、車を運転して帰宅途中に、突然パンクしてしまった。すると3人の男性が寄ってきて、修理を手伝うと言うが、サーシャはその男性たちの態度に危険なにおいを感じた。3人に取り囲まれてしまったサーシャは、スマートフォンを取り出して、OTRに緊急通報。緊急レスポンスチームがやってくると、3人の男たちはすぐに逃げてしまった。さらに、緊急レスポンスチームは、パンクの修理を行い、サーシャの自宅まで護衛をしてくれたのだ。

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▲OTRは、スマートフォンアプリのボタンをタップするだけで、緊急通報がかけられる。位置はGPS情報が自動的に送られる。都市部では1分以内に緊急レスポンスチームが駆けつける。

 

治安がよくなれば、コストが下がって黒字化する

OTRは、サービスを開始して約2年。すでに1万名の利用者がいて、インドの800都市でサービスを提供している。OTRは現在は、事業としては赤字だが、ニューデリーの治安が改善し、緊急レスポンスチームの派遣回数が減れば減るほど、コストが下がることになり、世界の都市と同程度の治安が確保できれば、じゅうぶんに黒字化できる見込みだという。

インドの安全市場は、すでに50億ドルの規模があるとも言われ、OTRはインドのスタートアップとしてもIPOにいちばん近いポジションにいると、投資家たちから注目をされている。

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▲緊急レスポンスチームは、2人組でバイクで急行する。いずれも、屈強な男性で、粗暴犯罪から緊急救命措置、自動車修理まで、さまざまなトラブルに対応できる。

 

11月11日独身の日。狂乱の1日までアリババのデスマーチは続く

いよいよ、11月11日独身の日がやってくる。中国全土で、単身者が「自分へのご褒美」として、ECサイトで買い物をする日で、アリババが運営するタオバオ、T-mallの売り上げだけで、1兆5000億円を超えるという狂乱の1日だ。しかし、その裏では、準備作業のために200名のエンジニアがデスマーチを続けていると今日頭条が伝えた。

 

20日前から200名のエンジニアが準備作業に入る

11月11日独身の日は、消費者にとっては楽しい1日だが、エンジニアたちにとっては、悪夢の1日だ。ECサイトに10億件の注文が殺到することになり、これは下手なサイバー攻撃など足下にも及ばないアクセス量になる。万が一、サーバーダウンでも起こりようものなら、1兆5000億円の売り上げが飛んでしまう。

そこで、アリババでは、10月20日午後11時に、200名のエンジニアが緊急招集され、準備作業が始まった。その様子は、まるで国家的大規模サイバー攻撃を受けた防衛軍のような有様だった。

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▲やるべきことは、アクセス帯域の適正配分。しかし、シミュレーションをしてみるとさまざまな問題が噴出する。エンジニア同士が本気の喧嘩になることも普通にあるという。

 

いったんすべてのアクセスを停止して、流量を正確に測定する

準備作業の最初に行われたのは、アクセス流量の正確な測定だった。タオバオ、T-mallでは、消費者のアクセスの他にも、販売企業、銀行、物流企業との通信も行われている。午後11時から、いったんこの500社との通信を遮断。1件の注文に対して、どのくらいのアクセス流量が発生するのかが正確に計算された。

そして、どの経路にどのくらいの帯域を割くのが最も効率的なのかが計算され、それに従ってシステムを調整していく作業が11月11日まで続いていく。

限られたリソースで、10億件の注文をさばくには、このような工夫が必要で、もし何もせずに11月11日を迎えてしまったら、数秒でシステムダウンしてしまう。

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▲作業室は常にこの状態。ここで3週間、24時間勤務することになる。尋常な神経では脱落してしまうという。アリババに勤めるのは楽ではない。

 

エンジニアたちの過酷なデスマーチは11月11日まで続く

帯域の適正配分作業は簡単ではない。途中、シミュレーションをしながら、問題がないかどうかを確かめながら、作業は進められるが、そのシミュレーションで、どこかの経路がオーバーフローすることがたびたび起こる。そのたびに、関係するエンジニアが集まり、解決策を議論していく。

この問題点をつぶしていく作業は、11月11日当日まで続く。エンジニアたちは、それまで毎日仮眠時間3時間、休日なしという過酷な労働を強いられることになる。それでも不平を言うエンジニアはいない。中国のECサイトにとって、11月11日は1年でいちばん輝く日、誰もが興奮の渦に包まれる日だからだ。

エンジニアたちは、11月11日、独身の日を無事乗り切ったら、翌12日に、自分へのご褒美をタオバオかT-mallで買うつもりだという。

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▲仮眠室では、常に誰かが死んだように寝ている状態。これが約3週間続く。いわゆるデスマーチ状態だが、11日という限りがあるので乗り切れるのだという。

 

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▲この環境では、食事だけが唯一の楽しみだが、それも1週間が限度で、2週目からは味もわからなくなるという。