小米のSUV「YU7」が、発売18時間で24万台の予約が入るという異常人気になっている。現在納車までには最大60週かかるとアナウンスされているが、それでも予約が入る状態だ。その陰で、雷軍と小米は生産量をあげるために生産地獄に陥っていると中国企業家雑誌が報じた。
予約金20万円でも24万人が殺到「YU7」
小米が今年2025年6月26日に発売をした、初めてのSUV「YU7」は、予約受付開始後3分で20万台を超え、18時間で24万台の販売が確定をした。
予約をするには1万元(20万円)の保証金が必要で、7日以内であれば、予約を取り消して返金をしてもらうことができるが、予約を確定するとキャンセルはできても保証金は返金されない。しかし、予約を確定した人から納車されるため、多くの人が早々と予約を確定した。
ところが問題が生じている。予約が落ち着いてみると、納車時期が最大で52週を超えるということが判明をしたのだ。つまり、納車までに1年以上かかる。予約を確定する段階では納車時期が明らかにされていなかったため、予約をした人から不満もあがっており、小米と話し合いをする事態になっている。
小米が陥っている「生産地獄」
これにより、小米は「生産地獄」に陥っている。生産地獄とは、2017年にイーロン・マスクが陥った悪夢のような事態だ。この年、テスラモデル3が生産を開始し、テスラは毎週5000台の生産目標を立てた。しかし、これは工場の生産能力をはるかに超えていた。この生産目標は、それだけのモデル3を生産して納車しないと、テスラという企業の資金が枯渇をして倒産してしまいかねないというレッドラインだったのだ。
毎週5000台という目標を達するため、イーロン・マスクは2017年3月にネバダのバッテリー工場とフリーモントの組み立て工場に入った。毎日、4時間ほどの睡眠しかとれず、工場の空きスペースにマットを敷いて寝るという状態だった。この生産地獄は翌2018年6月末まで1年以上続いた。
雷軍も陥っている生産地獄
小米の創業者、雷軍(レイ・ジュン)も、昨2024年3月に発売になったSU7の人気による生産地獄を味わったばかりだ。イーロン・マスクと同じように、工場に泊まり込み、生産能力の改善を行った。そのため、雷軍はネットでは「雷工場長」とまで呼ばれるようになった。
当初は10万台の生産予定だったが、あまりの人気に納車時期が伸びてしまうため、生産能力をあげ、最終的には13.5万台を生産している。
雷軍は、わずか半年前にこの生産地獄から解放されたばかりだ。しかし、再び、生産地獄の中に飛び込んでいかなければならなくなっている。
納車時期は60週後でも入り続ける予約
雷軍はYU7のあまりの売れ行きに「私たちは中国の自動車産業の奇跡を目撃したかもしれない」とまで言った。もちろん、この販売数には転売屋も数多く含まれていると見られる。早い段階で納車される予約券を手にして、どうしても欲しいという人に高値で転売することを目論んでいるのだ。これに対応するために、小米は1台予約をすると24時間は次の予約ができないようにした。
現在、YU7の納入時期は57週から60週とアナウンスされている。それでも、予約数は発表直後の勢いはないものの、順調に増えている。現在、雷軍は悪夢のような生産地獄に陥っている最中だ。
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