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インド当局がシャオミの資産970億円を差し押さえ。暗雲垂れ込めるインド現地生産

インド当局がシャオミの資産約970億円を差し押さえた。利益移転による脱税の疑いがあるという理由だが、シャオミ側は法律を遵守して事業を行なっていると主張をしている。インド政府の締め付けは、他の中国企業や他の海外企業にも広がっており、インド生産の潮流に暗雲が垂れこめてきたと包不同が報じた。

 

インド政府がシャオミに対して970億円を差し押さえ

小米(シャオミ)が危機に陥っている。インドのカルターナカ州の高等裁判所が、インドの金融犯罪対策の執行局(ED)に対して、小米の銀行口座から555.1億ルピー(約970億円)を差し押さえることを認める判断をした。小米は不服として上訴をしている。

インド政府の主張によると、小米は特許使用料の名目で海外に不正に送金をしたという。小米インドはクアルコムと小米中国に対して、特許使用料などを送金してきたが、インド政府の主張によると、小米中国への送金分については、結局小米グループの利益になるものであり、利益移転にあたる。その分の税金が支払われてなく、脱税にあたるという主張だ。一方、小米はインドの法律を遵守して事業を行っており、何らやましいことはしていないと意見が対立をしている。

さらに、インド政府は、小米だけでなく、OPPOvivoなどの中国スマートメーカーに対して、役員にインド人を入れ、インド資本を株主に迎えることを求めている。インド政府としては中国企業の監督強化をしたいということだろうが、中国企業側からは不満の声があがっている。

▲近年のインドのスマホ出荷シェア。トップだった小米はシェアが小さくなる傾向があり、それに変わって台頭しているのがサムスンとインド国内系。 https://www.counterpointresearch.com/india-smartphone-share/

 

いち早くインド生産を進め成功したシャオミ

小米は、2014年からインドに富士康(フォクスコン)と協力して、スマホ生産工場を建設し、インド向けのスマホの製造を行っている。現在は、インドで販売される小米スマホの95%以上がインド生産品になっている。

インドは、電子機器の輸入関税を高く設定しているため、シャオミだけでなくアップルも現地生産化を進めている。いち早く、インド生産を始めた小米は、インド市民から「準国産」と認められ、人気となり、長い間、インドでトップシェアをとってきた。小米はインド市場に参入して10年間で、累計3.5億元の利益を上げている。555.1億ルピーは48.8億元に相当し、小米はインド投資に完全に失敗をすることになった。

小米は事業を縮小せざるを得ず、生産数が落ちているために、インド市場のシェアも低下をし、サムスンに抜かれ、さらにはvivoにも抜かれる事態になっている。

▲小米は2014年からインドでの現地生産を行なっており、インド人からは「準 国産」と認めらるまでになり、小米とサブブランドの紅米(Redmi)は、インドで人気のスマホとなっていた。

 

インド政府による海外企業への締め付け

このEDの小米に対する調査は2021年12月から始まっており、2022年5月には小米の不正送金に関する情報が公開され、今回、銀行預金が差し押さえられる事態となった。

このような調査は中国企業だけなく、中国以外の海外企業約500社に対しても行われているという。その中には、シェル、ノキアIBMウォルマートなどが出資する企業もある。このような厳しい監督により、2014年から2021年の間、2738社の外資企業がインド市場から撤退をしており、これはインドの外資企業の1/6に相当する。一部では、「税金テロ」とまで呼ばれるようになっている。

▲小米とインド政府は蜜月時代もあった。左は小米の創業者、雷軍(レイ・ジュン)とモディ首相。

 

先行きが不透明になってきたインド生産

インドは電子製品の関税を高く設定することで、各メーカーにインド生産をするように促してきた。多くのメーカーがインドの巨大な市場をねらって現地生産を始め、インドに雇用を生み、インドの製造技術をあげることに貢献をしてきた。これをきっかけに、多くの製造企業が製造拠点を中国からインドや東南アジアに移転する流れが生まれていた。その流れが停滞することにもなりかねない。インド製造業の先行きが見えづらくなってきている。