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小米創業者・雷軍の年度講演「成長」。認知の突破のみが人を成長させる

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今回は、小米の創業者・雷軍(レイ・ジュン)の講演についてご紹介します。

 

雷軍(継承省略)については、付録の「小米物語」でもご紹介しているため、このメルマガの読者の方にはすでにおなじみだと思います。雷軍は、スマートフォンメーカー「小米」(シャオミ)の創業者です。

雷軍は「アップルに学ぶ」ということを公言しており、小米は、アップルと同じように毎年8月に新製品発表会を行います。しかし、アップルと異なるのは、2020年から、この新製品発表会の前に、雷軍が講演をすることです。そのまま新製品の発表に入り、約3時間以上、雷軍一人で講演と新製品発表を行います。この講演が、中国のテック界隈の人の間で人気となっています。学びの深い話だけでなく、生き方のような話にも触れるため、感動もあります。さらに、小米の素晴らしい技術の秘密にも触れられます。過去3回、このような講演会&新製品発表が会が行われました。

 

第1回

2020年8月11日「自分を信じ、前に進み続ける」

第2回

2021年8月10日「私の夢、私の選択」

第3回

2022年8月11日「素晴らしいことが起きると信じ続ける」

第4回

2023年8月14日「成長」

 

今回は、この第4回の講演内容をできるだけ忠実に訳してご紹介します。ボリュームの都合で一部省略、日本人にはわかりづらい部分には注釈、意訳をしているところもありますが、できるだけ最小限にとどめるように努力しました。

ネットには映像も大量に拡散をしているため、「雷軍 年度演講」で検索をすれば見つかると思います。


www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=L5LBukpzb60

YouTubeにも全編収録された映像がありました。ただし、字幕なしです。その代わり、昔の貴重な写真などが見られます。

 

この講演で多くの人が楽しみにしているのは、毎回、心に刺さる名言が生まれることです。今回は「認知の突破だけが人を成長させる」というものでした。どういうことは講演を読んでいただければしみじみとわかります。

しかし、この講演だけからはわからない雷軍の人気の秘密があります。それは、雷軍は仕事や技術に関しては凄みのある人で、多くの人から尊敬をされていますが、それ以外のことについてはどちらかというダメ人間に近いところがあるという点です。今回の講演でも、大学生の頃の自分のことを「社恐族だった」と語っています。社恐族とは社交恐怖症という意味で、日本の「コミュ障」に近い言葉です。

この講演活動では、毎回、名言が生まれていますが、それまでの雷軍は、アリババの創業者・馬雲(マー・ユイン、ジャック・マー)とは異なり、あまり名言がある経営者ではありませんでした。

雷軍の名言としてよく知られていたのは、「風が吹けば、豚だって空を飛ぶ」と「Are You OK?」の2つです。いずれも、どことなくユーモラスなものです。

「風が吹けば、豚だって空を飛ぶ」は、雷軍が個人投資家をしている時代に、起業を躊躇する若者を励ますために使った言葉でした。波がきているのだったら、それに乗らない手はないという意味です。ジャック・マーはこの雷軍の言葉を聞いて「でも、風が止んだら、真っ先に墜落するのは豚だけだけどね」と皮肉ったと言われています。素直に「チャンスを逃してはならない」と言えばいいのに、「豚が空を飛ぶ」という面白いイメージを使ってしまうあたりに雷軍らしさがあります。

 

また、「Are You OK?」は、さらに面白く、ネットでは雷軍の映像とこの言葉がミームとして散々に遊ばれることになっています。実は、雷軍は英語が苦手でほとんど話せません。武漢大学に入学した時に、英語教師の代理で、体育の教師が雷軍の英語のクラスを担当したために、めちゃくちゃな英語を教えられてしまったからだと冗談ぽく語ったことがあります。実際は、テクノロジーに夢中になりすぎて、英語の勉強が視野に入らなかったのだと思います。英会話は苦手だそうですが、英語の技術書は(辞書を引きながらでしょうが)、中国語翻訳がなければ原文で読んでいます。

小米がインドに進出をした時、インドの小米ファンが集まったイベントで、雷軍はスピーチをしなければならなくなりました。もちろん、インドの小米ファンは、雷軍のことは知っていて尊敬をしています。インドですから、英語で何かスピーチしなければなりません。

困った雷軍は、ステージに飛び出していき、その勢いで「Are You OK?」と叫びました。すると、雷軍のことをよく知っているインドの小米ファンは大喜びで、会場が湧きました。すると、雷軍はその勢いで再び「I’m OK」と叫ぶと、会場はさらに盛り上がります。そして、会場を盛り上げるだけ盛り上げて、雷軍は「Are You OK?」と叫んでステージから去っていきました(本当は、簡単な英語ですが、小米の製品の紹介もしています)。

この様子がネット民の興味の的となり、映像のマッシュアップがつくられれ、雷軍の名言のひとつとして今にも伝わっています。


www.youtube.com

https://www.youtube.com/watch?v=HPukZtRT2nk

▲ビリビリなどに投稿されたAre You OK?のミーム動画がいまだに拡散をしている。

 

つまり、雷軍という人は、テクノロジー以外のことに関してはからっきしダメな人なのです。しかし、テクノロジーに関する予測、知見には深みとひらめきがあり、誰もが尊敬せざるを得ない人です。一言で言えば、テクノロジー少年がそのまま大人になったような人なのです。だからこそ、親しみを感じながら尊敬ができるのです。

そういう人であるからこそ、素人集団を率いてスマートフォンを開発することができ、今、素人集団を率いて自動運転自動車を開発しようとしています。

雷軍は、その発表会のスタイルから「中国製ジョブズ」と言われることが多いですが、アップルのもう一人の創業者であるスティーブ・ウォズニアックと同類の人です。科学少年であり、メイカーでありながら、ビジネス面でも成功をした。そういう人です。

今回は、2023年の雷軍の講演をできるだけ詳しくご紹介します。「認知の突破」とは何なのか。雷軍の話をお楽しみください。

 

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