わずか5ドルのソーラー読書灯がアフリカのこどもたちの学びを変えている。農村では陽が出ている間は家の農作業を手伝わなければならず、夜は灯りがないために勉強することができない。5時間ソーラー充電で9時間点灯する読書灯がこの問題を解決したと封面新聞が報じた。
電気のないアフリカの農村
アフリカはいまだに電気普及率が高くない。北アフリカでは98%の家庭に電気が供給されているが、中央アフリカ諸国では30%程度に止まっている。特に農村部では普及率が低く、サハラ以南では10%未満という農村が少なくない。一般家庭には電気がなく、村の公共施設に電気が供給されているだけという農村が多い。
しかし、アフリカの子どもたちも放課後に宿題をしたり、勉強をしたりしなければならない。そこで使われているのが灯油ランプかロウソクだが、火事の原因になりやすい。毎年、ロウソクによる火災で世界で250万人の人が亡くなっている。毎月のコストも1ドルほどかかり、家計への負担となっていた。さらには、ロウソクや灯油ランプから出る煤は、乳幼児の気管支に深刻な影響を与える。煤による乳幼児の死亡は世界で280万人にもなる。


社会貢献をするBOPビジネス
深圳市で「誠信諾」(Power Solution、https://www.power-solution.net.cn/cn/)を創業した李霞氏は、以前、ある企業からアフリカに派遣され、BOPビジネスに従事をしていた。BOPとはBottom of Pyramid(ピラミッドの底辺)の意味で、貧困層を含む低所得者層のことだ(近年では差別的なニュアンスを排除するためBase of Pyramidと表記されることが多い)。BOPビジネスは、ただ安い製品を開発すればいいというものではない。いくら安くしても、BOPの人々はそれすら購入する経済力がない。そのため、社会課題を解決する製品を開発し、企業や行政の支援を取り付ける必要がある。

ソーラーライトを輸入したが高すぎて普及しない
李霞氏がアフリカで課題を感じたのが夜の照明だった。各家庭に電力を供給することは現実的ではない。かといって安いエネルギー源もなかなか見つからない。その中で李霞氏が気がついたのは、太陽という無限にあるエネルギー源だった。そこで、欧米で販売されているソーラーライトをアフリカに輸入するビジネスを始めた。
しかし、価格が高すぎた。13.5cmあった読書スタンドを6.5cmに短くしてみた。こうすると、同じ箱に40個しか梱包できなかったものが96個入る。これで物流費用を半分にしたが、それでも現地では高くてなかなか普及をしない。
李霞氏は、製品そのものからBOPに向けて開発する必要があると感じ、2004年、Power Solutionを起業した。

ソーラー読書灯をPay as You Goで
現在、200万人に使われているのが「ソーラー読書灯」だ。昼間、陽のあたるところにおいておけば充電される。5時間程度の充電で、弱光で9時間、強光で4.5時間の点灯ができる。価格は5ドルであるため、ロウソクや灯油ランプの燃料代5ヶ月分程度で購入できる。世界銀行のLighting Global(https://www.lightingglobal.org/)の認証もとり、Pay as You Goのサービスも始めた。これは使った分だけ毎月支払うというレンタルと分割払いを兼ね備えた仕組みだ。


家庭用電源、学習タブレットも開発
Power Solutionは、このようなアフリカの電力問題を解決する製品を開発している。テレビや扇風機、電灯などに電力供給ができる太陽光発電蓄電システムも開発をした。さらに現在では、子どもたちのために学習タブレットの開発も進めている。李霞氏は2024年ダボス世界経済フォーラムで、年間社会起業家賞を受賞した。

