東アフリカの国「ジブチ」に、中国の香港航天科技主導のロケット発射場が建設されることになった。中国にとっては低緯度の発射場を利用できるようになるメリットがある。ジブチにとってはインフラ整備をし、宇宙産業を成長させるメリットがあると北アフリカポストが報じた。
東アフリカに建設される中国のロケット発射場
東アフリカの国「ジブチ」のゲレ大統領は、ロケット発射場の建設計画で、中国の「香港航天科技」(https://www.hkatg.com/)と予備的な協力契約を締結した。
予定されるロケット発射場は、約10平方キロで、7つのロケット発射台、3つのロケット試験台、衛星およびロケット開発場などが整備される予定。また、中国から部材などを搬入するため、港湾インフラと高速道路の整備も行われる。
建設工事は、早ければ2027年に完了し、発射場は香港航天科技とジブチによる30年間の共同管理が行われ、期間満了後、ジブチに引き渡される。
絶好の立地の発射場を手にする中国
プロジェクトの投資額は10億ドルという巨額のものとなるが、中国にとっては、投資効果は大きい。
ひとつは赤道近くの低緯度地域にロケット発射場を持てるということだ。ロケットは赤道近くから打ち上げると、地球の遠心力を利用することができるため、燃料を節約することができる。同じ燃料を使うのであれば、より重い荷物を運搬できるということで、衛星1基の打ち上げコストを下げることができる。
ジブチは北緯11度。中国はこれまで国内の海南島に文昌発射センターがあったが北緯19度であり、より優れた発射場をアフリカに持つことができる。
また、ロケットは地球の遠心力を利用するために東に向けて発射をするのが一般的だが、ジブチの東は紅海の出口となるアデン湾が広く開けている。
特に静止軌道に乗せる静止衛星の打ち上げには、低緯度にあるロケット発射場が必須になる。静止軌道は赤道上を地球の自転速度とシンクロして地球を周回する軌道で、高緯度から発射をした場合は軌道修正を行い、静止軌道に乗せなくてはならないため、燃料消費が多くなり、なおかつ技術的難易度もあがる。静止衛星は通信衛星、放送衛星の場合、必須となる。
ジブチはロケット発射場として優れた点をいくつも兼ね備えているのだ。
アフリカの宇宙産業は成長が期待されている
もうひとつは、アフリカの宇宙産業という成長市場の獲得に大いに有利になることだ。アフリカの宇宙産業は2021年で194.9億ドル規模になっている。アフリカ諸国はすでに54個の衛星を打ち上げている。これまでアフリカは、ロケット技術が遅れていたために、この54個の衛星はすべて他国の発射場から他国のロケットにより打ち上げられている。
これがアフリカにロケット発射場ができれば、アフリカの衛星はアフリカから打ち上げるということで、中国のロケットを利用してもらうことができるようになる。
ギアナではGDPの26%が宇宙関連産業
アフリカが打ち上げている衛星のほとんどは、テレビ衛星と通信衛星だ。ジブチのゲレ大統領は、ロケット発射場を建設することで、ジブチ国内の宇宙産業を刺激し、衛星部品製造の産業を興そうとしている。
1971年に、フランスは南米のフランス領ギアナにロケット発射場「ギアナ宇宙センター」を建設した。この関連産業は、ギアナのGDPの26%を占め、ギアナの経済成長に大きく寄与をした。ジブチもロケット発射場プロジェクトにより、経済成長をすることをねらっている。
中国にとっては、低緯度のロケット発射場を利用することができ、アフリカの衛星打ち上げビジネス市場を獲得できることになる。ジブチにとってはロケット発射場を核に、国内の宇宙産業を成長させ、経済成長の起爆剤にすることができる。いわばウィンウィンの関係になっている。