中国の大学が、新中国建国以来の大改革を行っている。社会の発展に適さなくなった専攻科目1670を廃止して、人工知能やデータサイエンスの専攻科目を大幅に増やし、社会の需要に応えるというものだと呉暁波チャンネルが報じた。
大学の専攻科目の大改革が始まっている
中国の大学の大改革が始まっている。この1年で、全国で1670の専攻科目が廃止または募集停止となった。この廃止数は2014年から比べると25倍にもなり、大学の改革が始まっている。
廃止された専攻科目の多くが文系科目だ。山東師範大学ではラジオ・テレビ学科、中国科学技術大学では英語学科、コミュニケーション学、考古学などが廃止され、その他の大学でも外国語学系の学科が廃止をされている。
新設されたのはAI系工学科目
一方、増えているのが工学系で、2018年から2023年にかけて最も増えた学科は「人工知能」「スマート製造工学」「データサイエンス・ビッグデータ」「デジタル経済」「ビッグデータ管理」などになっている。
このような専門科目の廃止と新設は、新中国建国以来の大調整になっている。
教育部が求めた専攻科目の改革
このきっかけになったのは、2023年に教育部などが発布した「普通高等教育の専門学科の調整と最適化改革案」(http://www.moe.gov.cn/srcsite/A08/s7056/202304/t20230404_1054230.html)で、「2025年までに、大学の専門科目の20%を調整」「新技術、新産業、新業態、新モデルに適応する専門科目を新設し、経済社会発展に適応しない専門科目を廃止する」「特に理系と医学の基礎学科の割合をさらに高める」などとされている。
また、専門学科については、運営、教員、学生の満足度などの調査を行い、条件を満たしていない学科については是正をすることも求めている。特に、運営条件、教育の質、就職率などに問題がある場合は、教育部が募集の一時停止や是正を求めることができるとした。
かつての花形学科も現在は人材供給過剰に
この問題は大学側も以前から認識をしていた。それは人材が余り、就職が難しい専門科目と、人材が足りない専門科目のミスマッチが起きているからだ。
例えば、公共管理学科は行政やNPO、NGOなどの運営を学ぶ学科で、20年前には花形学科として2000年から2017年の間に設置大学は10倍以上に増えた。しかし、現在では人材の供給過剰となり、この5年で100近い大学で廃止をされている。90年代には会計事務所数が急増をしたため会計学科が人気となり、00年代には中国がWTOに加盟し国際貿易が急増したために英語学科が人気となり、10年代には建設ラッシュで土木学科が人気となった。しかし、現在、この3つの学科は人材の供給が過剰になっている。
一方、サイバーセキュリティ学科は、現在34の大学が設置をしているが、2027年までに327万人の人材が不足すると予測されている。
この大改革は、このミスマッチに対応するためのものだ。
変えることもよりも、学科の評価をすることが重要
ただし、この改革には専門家からの批判も寄せられている。ひとつは、「古い酒の瓶に新しい酒を入れた」だけになっている例も見られることだ。例えば、土木学科を廃止して、スマート土木学科を新設する例が見られる。名前を今風にしただけで、中身は一緒ということになりかねない。
もうひとつは、結局は、その時その時の人気学科を大量に新設し、10年経つと不要な学科になっているという、これまでと同じことを繰り返しているだけになっているという批判だ。今、人工知能やデータサイエンスに人気があるが、10年後もそうであるかどうかはわからない。
このため、状況に応じて、学科が受け入れる人数を弾力的に変えていく仕組みを取り入れたり、企業インターン制度を必修化していくなどの改革も必要なのではないかという声もあがっている。
重要になるのは、教育部の通知にある「是正措置」だ。専門科目の評価を常に行い、常に是正をすることが求められ、場合によっては教育部が命令をすることもできる。数年に一度、大学を大きく改革するのではなく、常に小さな是正が行われ、連続的に変化し続けられる。そういう体制を取れるかどうかが大きな鍵になると指摘されている。