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感染再拡大で苦境に立つピザハット、サブウェイ、吉野家。3チェーンに共通した課題は「市場適応」(2/3):サブウェイ編

飲食業は2020年に大きな打撃を受けた。しかし、2022年、再び同規模の打撃を受けている。感染再拡大に対する不安から、外食の習慣が失われようとしているという人もいる。その中で、特に困難に直面しているのがピザハット、サブウェイ、吉野家の3チェーンだ。いずれも中国市場への適応に問題があったと砺石商業評論が報じた。

 

外食の習慣が消える?関係者の不安

中国の飲食業は、コロナ禍により大きな打撃を受けた。最も大きいのは2020年の新型コロナの感染拡大期だったが、2021年はやや持ち直し回復の傾向が見られたものの、2022年になって再び2020年と同じ規模の打撃を受けている。感染がぶり返し、部分的封鎖などが繰り返されることが大きいが、もはや市民の外食の習慣が消える傾向にあるのではないかということを関係者は不安視している。

その中でも苦境に陥っているのが、外資系飲食チェーンだ。ケンタッキーフライドチキン(KFC)とマクドナルドはすっかり中国に定着をして、安定した経営を続けているが、ピザハット、サブウェイ、吉野家の3チェーンが撤退待ったなしの危機的状況に苦しんでいる。

 

世界一の店舗数を誇るチェーン「サブウェイ」

サブウェイは2010年には世界で3万4200店舗を展開し、マクドナルドを超える世界最大のファストフードチェーンとなった。中国には2000年に進出をしたが、残念ながら、その存在感はまったくない。都市の若者ですら、サブウェイを知らない人の方が多い。

サブウェイは、米コネチカット州医学生、フレッド・デルーカが高額の学費の足しにするため、友人のピーター・バックとサンドイッチの店「ピーツ・スーパーサブマリンズ」を1965年に開店したのが始まりだ。オープンキッチンにし、客がサンドイッチに入れる食材を選べるようにし、ジャンクフードに対抗し、健康的な食べ物を提供することをミッションにした。このサンドイッチ店が好評で、支店が次々と増え、1974年にサブウェイに社名変更をした。

▲サブウェイは中国ではあまり存在感がない。多くの人が温かいものを好んで食べる習慣があるため、サンドイッチにはなじみがないためだ。

 

健康的な食べ物を提供するサブウェイ

サブウェイの躍進の秘密は、調理に高い技術を必要としないことと加盟費用を安く抑えたことだ。これにより、個人でも出店することが可能になり、創業7年目には100店舗を超え、9年目に1000店舗と急速に成長し、2010年には世界最大のファストフードチェーンとなった。

1999年に、体重200kgのある客が、3ヶ月間サブウェイのサンドイッチだけを食べ、運動や減量薬を使うことなく、体重100kgまで落とすというダイエットに成功しことが話題となり、それ以来、サブウェイは健康的な食品というイメージが定着している。

 

中華テイストにすると健康的ではなくなる

ファストフードチェーンが海外市場に進出する場合、普通は直営店方式とフランチャイズ方式を併用していく。まず直営店で標準やお手本を見せ、それをフランチャイズ店に学ばせる。ところが、サブウェイはその歴史から、中国でもフランチャイズ方式で進出をしようとした。

しかし、最も問題なのは、サンドイッチが当時の中国人の口には合わなかったことだ。現在ではだいぶ感覚が変わっているが、当時の中国人にとっては熱々の食品でなければそれは食事ではない、おやつだという認識があった。そのため、昼食にサブウェイを使おうという人はほとんどなく、健康的なおやつだと言われても食べる気になれず、おやつにしては量が多すぎた。

そこでフランチャイズ店では、じゃがいもやクッキーという食材も扱い始めたが、そのようなことをすればするほど「健康的な食事」からはかけ離れていく。

しかも、価格が15元から30元と高めで、大人の男性であると2つは食べたくなる。中国の消費者にとって、サブウェイはそっぽを向かれるというよりも、行く理由が見当たらないファストフードになってしまった。

▲サブウェイは、健康的な食事をウリに世界中に広がったが、中国では中華メニューにも対応する中で健康食というイメージを確立できなかった。

 

出店調整を続けるサブウェイ

サブウェイは、グローバル店舗数を2030年に10万店にする目標を掲げ、拡大戦略をとり続けていた。しかし、あまりに拡大をしすぎ、2014年には業績の悪化が明らかになった。すると、フランチャイズ加盟料を下げ、さらに店舗拡大を加速しようとした。店舗を拡大することで危機を乗り切ろうとしたが、それは危機をさらに拡大するだけになってしまった。

米国では2016年から閉店による出店調整が始まり、その閉店規模は年々拡大をしている。それに伴いサブウェイ本部の業績も悪化をしている。2030年10万店は夢となってしまっている。