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人気は高くても、近くにお店がない!中国市場に翻弄されるバーガーキング

中国でもバーガーキングの人気は高い。しかし、消費者の不満の第一は「うちの近所にバーガーキングがない!」ということだ。KFC、マクドナルに比べて店舗数が圧倒的に少ない。店舗数が拡大できない理由は、中国市場の速い変化についていけていないことが原因だと新週刊が報じた。

 

食べたいのにお店がないバーガーキング

中国のハンバーガーも、他国と同じようにマクドナルドとケンタッキーフライドチキン(KFC)が人気になっている。マクドナルドのファンは「麦門信徒」(麦はマクドナルドのこと)、KFCのファンは「瘋四楽子人」(瘋四はKFCが行っている毎週木曜日のクレージーサースデーのセールのこと)などと呼ばれる。

一方、バーガーキングは中国にも展開をしているが、マクドナルドやKFCに比べると店舗数が少なく、「美味しいとは聞いているが、お店がどこにあるか知らない」「そもそもバーガーキングを知らない」という人が圧倒的だ。

バーガーキングの運営会社であるレストラン・ブランズ・インターナショナル(RBI)のジョシュ・コブザCEOも2023年決算発表会の席上で、「中国市場の消費可能性と成長見通しを考えると、バーガーキングの拡大は遅すぎる」と認めた。

バーガーキングのファンは多くても店舗が少ないため、ファンからは「うちの近所にもお店を出して!」という悲痛な叫びがSNSに投稿されている。

 

店舗数が圧倒的に少ないバーガーキング

2023年にKFCは1万店舗の大台を超えた。12月15日には、杭州市に1万店舗目の開店セレモニーを行った。マクドナルドも7000店舗を超え、KFCとマクドナルドはショッピングモールに行けば必ず入っているファストフードであり、都市部では歩いていれば必ずどちらかの店を見かけることになる。

ところが、バーガーキングは1500店舗であり、大都市であっても、歩いている最中に見かけるのではなく、地図で調べてわざわざ行かなければ見つけることができない。地方都市ではそもそも店舗自体がない。なぜ、人気はあるのに店舗が拡大しないのだろうか。

杭州市のKFCの1万店目の店舗。KFCもチキンハンバーガーが人気であり、すっかり中国人の日常となった。

 

かつてはKFC、マクドナルドともに三国志と呼ばれた

バーガーキングが中国市場に参入したのは2005年のことだった。中国1号店は、上海市の静安寺近くにあるレトロな洋館を利用した。この地区は、上海市の中でも静かで落ち着いた場所であり、高級な地域とされる。

バーガーキングの進出は、各メディアから「ファストフードの三国志」と例えられた。当時、マクドナルドは666店舗、KFCは1758店舗であり、バーガーキングが追いつくことは不可能ではない。当時のアジア太平洋地区責任者のスティーブ・デサッター氏は、友人から教わった中国の古事成語を使ってメディアに応えた。「早くくることは適切な時期にくることに及ばず」。メディアは、この3つの国際的なブランドが中国で競い合い、中国に西洋ファストフードの文化を根づかせることになると期待した。

▲ネットでは、近所にバーガーキングの店を出店してくれという投稿が続く。南寧市に4店舗が出店したが、市の中心部には店舗がなく、なぜ避けるのかと訴えている。

 

高級から日常へ。バーガーキングの戦略ミス

しかし、バーガーキングは店舗展開だけでなく、戦略面でも遅れをとってしまった。マクドナルドとKFCはその時点で15年以上、中国でビジネスをし、戦略を変え始めていたのだ。

KFCが中国に進出した当時、通貨の価値が異なることもあって、KFCは高価格帯のレストランと認識された。当時、子どもだった人は、学校で優秀な成績を収めるか、誕生日でもなければKFCに連れていってもらうことはできなかったという。若者たちは、豪華なデートといえば、まずはKFCで食事をすることだった。

しかし、中国が次第に経済力をつけるようになると、マクドナルドとKFCの特別感は薄れていく。そこで価格調整を行い、フランチャイズを募集し、地方都市への展開を始めていった。高級から日常へとシフトをしていったのだ。

ところが、バーガーキングは、高級感を打ち出していった。静安寺の1号店の来店客の半分は外国人だった。その品質を維持するために、バーガーキングフランチャイズ加盟店を募集せず、直営店にこだわった。当時のバーガーキングは、現在のシェイクシャックのようなポジションだったのだ。

 

高級店であったため、拡大スピードが遅かった

KFCとマクドナルドはフランチャイズを利用して店舗を拡大していく中で、KFCは2012年に3500店舗を超えた。しかし、バーガーキングは52店舗にしか拡大をしなかった。

2012年になって、バーガーキングは戦略を変え、フランチャイズ加盟店を募集して地方都市への拡大を図っていったが、すでに地方都市の立地のいい場所はKFCとマクドナルドによって占有されていた。

2018年に1000店舗を突破し、2021年末までに2000店舗を目指すと発表したが、その拡大はなかなか進まず、2023年末にようやく1500店舗に達した。

バーガーキングは、ハンバーガーの中のハンバーガーで中国でも人気が高い。しかし、戦略がうまく中国市場に合わず、2023年末にようやく1500店目の店舗を開業した。

 

シェイクシャック、タスティンという新たなライバル登場

バーガーキングはいまだに公式価格は昔の高級店のままになっている。ハンバーガー+ポテト+ドリンクの基本セットは、100元(約2000円)前後が正価になっている。しかし、それでは購入する人がいないため、実際はほぼ毎日セールが行われ半額程度で購入できる。それでも、KFCやマクドナルから比べると高い。

バーガーキングは再び危ういポジションに追い込まれている。高級バーガーとしては大都市でシェイクシャックが店舗数を伸ばし、ユニークな味のハンバーガーとしては「塔斯汀」(タスティン)があり、価格はバーガーキングよりもはるかに安い。シェイクシャックは大都市の一等地に数店舗の展開だが、高級ハンバーガー店として人気を得ている。タスティンは地方都市を中心に7000店舗を展開している。

バーガーキングは、ハンバーガーの中のハンバーガーであり、最もハンバーガーらしいチェーンであるのに、そのスタンダードぶりが、常に上と下から挟まれ、難しいポジションに追い込まれることになっている。

ネットでは常に「うちの近所にバーガーキングの店を出店して」という声が上がっている。

▲上海などに出店したシェイクシャック。価格は高いが本格的なハンバーガーが料理として人気になっている。高級路線だったバーガーキングの強敵が登場している。

▲中華バーガーで人気となっているタスティン。もともと中国にあった肉夾饝(ロウジャーモー)というおやつをハンバーガーにアレンジをしている。安くて美味しいことから店舗数が急拡大している。