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フランチャイズ加盟がブームに。加盟費用0元、ロイヤリティ固定制のStoBtoC型フランチャイズが主流に

コロナ禍からの経済回復は飲食から始まっている。すでにフランチャイズに加盟をする起業がブームと呼べるほど注目されている。その中で、フランチャイズ側も加盟費用0元、ロイヤリティ固定制のStoBtoC型にシフトをしていると中国企業家雑誌が報じた。

 

フランチャイズ加盟でリベンジ起業

中国が起業ブームに湧いている。と言っても、ベンチャーキャピタルから資金を調達し、テクノロジー分野で起業をし、株式公開を目指すという典型的な起業ではない。フランチャイズに加盟をして、店舗経営をするという起業だ。

今年2023年に入って、ようやく中国の経済は動き始めた。社会消費品小売総額(個人消費)もようやく前年比がプラスに転じ、23年5月で12.7%増となった。しかし、それを超えるのが飲食収入の伸び率だ。23年5月で35.1%の伸びとなっている。経済の回復は、まず身近な飲食収入が伸び、それが社会全体に波及をしていく。

国内旅行も盛況にななり、いわゆるリベンジ消費であり、この機を逃さず、フランチャイズ店舗の出店に注目が集まり、俗に「リベンジ起業」と言われている。

5月26日からは、北京市の国家会議センターで、中国フランチャイズ展が開催され、多くの人が押し寄せ大盛況となった。チェーンストアが出展し、フランチャイズに加盟することを考えている来場客に勧誘をするという展覧会だ。

▲社会消費品小売総額(個人消費)と飲食収入の前年同時期費伸び率の推移。景気回復は飲食から始まっている。

 

フランチャイズによる新規出店が始まる

90后(90年代生まれ、30代)の凡さん(仮名)は、企業に勤めていたが、仕事のストレスは高いのに満足できる給料がもらえないことを嘆いていた。そこで、会社を辞めて旅行代理店のフランチャイズに加盟をすることにした。

「コロナ禍が終わったら、みな旅行に行きたいと考えますから、旅行業界について研究しました。フランチャイズに加盟する費用はそこまで高くなく、店舗を開いてからも、今の勤務時間と同じ程度の働き方で経営していくことができます。私はすぐに加盟することを決めました」。

凡さんは、すぐに加盟を決意し、2月から本部のトレーニングを受けている。

以前から、レモンティーチェーン「檸季」(ニンジー)の加盟店を運営している唐さんは、近隣のショッピングモールの飲食店はコロナ禍でほぼ半分が閉店をしたが、今年23年の春節が終わった時点で、ほぼ全店が新たな加盟店オーナーを見つけて再オープンしたという。

▲北京で開催された中国フランチャイズ展。来場者の中には、その場でフランチャイズ加盟を決めてしまう人も多い。

 

初期加盟費用0元、ロイヤリティ定額制が主流に

チェーン側も、このリベンジ消費はチェーン拡大の好機と見て、加盟費用を下げる施策を取り、多くのチェーンが急速拡大をしている。すでに1万店舗を突破したカフェチェーン「瑞幸珈琲」(ルイシン、Luckin Coffee)は、月額ロイヤリティを1万元という固定制にして、初期加盟費を廃止した。5万元の保証金(解約時に返金される)や店舗の改装費などは必要になるが、40万元(約800万円)程度で店舗を開くことができる。

さらに共同経営方式も導入した。初期費用はほとんどかからないが、3年で店舗と営業権をラッキン本部に譲渡をするという方式だ。お金は用意できないが、加盟店を経営してみたいという人に適している方式だ。

このような、初期加盟費が無料、ロイヤリティ定額制にするチェーンが続々登場している。フランチャイズチェーン側が売上の何%という加盟費を毎月取るのではなく、販売する食材や包装材を加盟店に卸すことで利益を上げようとするStoBtoCビジネスモデルに転換しつつある。フランチャイズ本部は加盟店の管理ではなく、加盟店に卸すサプライヤーとしての利益を求めるようになっている。

 

フランチャイズで急成長するチェーン

2022年10月に創業した庫迪珈琲(クーディー、COTTI COFEE)は、フランチャイズモデルで、わずか4ヶ月で1000店舗を突破した。クーディーでは、23年末に2500店舗、24年末に6000店舗、25年末に1万店舗を突破する計画を立てている。実現をすれば、ラッキンやスターバックスに並ぶ店舗数になる。

しかし、この急速な飲食市場の拡大に懸念を感じる人もいる。VCの順為資本の程天氏は、中国企業家雑誌の取材に応えた。

「コロナ禍が終わり、現在の消費市場は急速に回復をしています。特に飲食業界の回復が顕著です。感染再拡大が起きなければ、今年は非常に高い成長率を示すでしょう。しかし、市場の急速な成長の過程で、構造的な問題も見え始めています。それは消費市場というのは百花斉放の市場で、新しいブランドが登場をして急成長をすることが常であるということです」。

つまり、市場としては成長基調であることは確かだが、それは新しいブランドが急成長をするのにも適した環境であるため、ひとつのブランドが成長をして生き残れるかはまた別の話になる。全体の経済が健康的に成長している時は、どのブランドも同様に成長をしていくことができるが、現在のようなリベンジ性回復による成長の場合は、次々と新しいブランドが登場して、消費者の心をつかんだブランドが急成長をし、そのあおりを受けた他のブランドは成長ができないどころか、撤退の可能性も生まれる。市場としては成長をして明るい展望が開けているが、そのプレイヤー視点からは競争が激化をして、厳しい状況になっている。

▲ラッキンコーヒーのライバルに成長しようとしている庫迪珈琲。創業者はラッキンの創業者だった陸正耀氏。ラッキンとの兄弟対決が話題にもなっている。

 

フランチャイズ加盟ブームが経済に与える影響は限定的

2022年1月、国内の零細企業(資本500万元以下)は154万社が新規登記をしたが、2023年1月は107万社と大きく減少している。フランチャイズに加盟をすることがブームと言える状況にもなっているが、経済全体で見ると、このような小規模起業は決して多くない。

消費市場の回復は、旅行、飲食から始まったが、それが一般商品にまで波及をするのにはまだまだ時間がかかる。専門家によると、半年から1年程度の時間が必要だという。それまでの間に、大規模チェーンの撤退などネガティブな事態が生じると、本格回復の時期はさらに遅れることになる。中国の消費市場は、回復は始まっているものの、まだしばらくは慣らし運転をしなければならない状態が続くようだ。