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拡大が続く中華バーガー「タスティン」。3つの拡大できる理由と2つの課題

中華バーガーを売りにしている「タスティン」が店舗数を急拡大させている。標準化、ファストフード化には向かない中華料理をチェーン化することは難しいと思われていた。しかし、タスティンには拡大できる理由が3つあると互聯網那些事が報じた。

 

中国バーガーのタスティンが急速拡大中

中国ハンバーガーを売りにする「塔斯汀」(タスティン)が急速に店舗数を伸ばしている。2023年1月には3381店だったものが、10月には5862店となり、70%以上も増加をしている。

タスティンは2012年創業だが、当初はピザを中心にしたファストフードだった。しかし、2017年からハンバーガーをメニューに加え、それが好調であることであることから、2018年に中華風ハンバーガーを開発。これも好調であることからリブランドをし、2019年からは「中国ハンバーガー」を前面に打ち出すようになり、成長が始まっている。

▲タスティンの店舗。中国のナショナルカラーである赤を使い、ロゴも中国風。中華料理をモダンな形で提供することから、若者だけでなく中高年にもファンがいる。

 

中国の伝統おやつとハンバーガーを融合

タスティンの中国ハンバーガーの原型になっているのは、陝西省で昔からある「肉挟」(ロージャーモー)というおやつだ。小麦のバンズを蒸し、さらに表面を焼く。それに切り込みを入れて二枚貝のようにし、そこに中華具材をたっぷりと挟み込むというものだ。西洋のハンバーガーのようにバンズが上下で切り離されていないため、繋がっている方を下にして持てば、汁などで手が汚れづらい。歩きながらでも食べることができる。それでいて、具材の量は多いために満腹感も得られる。タスティンはこの肉挟をヒントに中国ハンバーガーを考案した。

▲タスティンの中華バーガー。中華おやつの肉挟饃にヒントを得たものだが、具材がたっぷりと入れられ、満足感があることが人気の理由になっている。

 

ファストフードを避ける人もいた

2018年当時、すでにKFC(ケンタッキーフライドチキン)とマクドナルドは、中国で最もよく見かけるファストフードチェーンになっており、多くの人が利用をしていたが、ファストフードを避ける人も一定数いた。ひとつは、西洋バーガーはジャンクフードだというイメージから逃れることができなかったからだ。特に、牛肉のパティは、どのような肉が入っているかよくわからず、それをつなぎ剤のようなもので固めているため、不安に感じている人もいる。親の中には「子どもがマクドナルドを食べたがって困る」という悩みを持っている人もいる。それでいて、価格は高い。ハンバーガーを食べるぐらいなら、ちゃんとした中華の食事をした方がいいと考える人もいるのだ。

タスティンは、この点に注目をした。中華具材を使ったハンバーガーをつくれば、このような層を取り込めるのではないか。最初は、それまでやっていたピザの生地で、中華具材を巻いた手巻き中華ロールだった。これが好評だったため、本格的に中華バーガーを開発することになり、現在の中国ハンバーガーにたどり着いた。

 

標準化が難しかった中華バーガー

しかし、中国ハンバーガーには大きな問題があった。バンズを蒸し、表面を焼き、そこに中華具材を入れていくという方式で、手づくり作業部分が多い。これをフランチャイズで展開すると、必ず品質問題が発生する。店舗によって、具材の味や量が違ったり、店舗が勝手に規格外の食材を使ったりということが必ず起きる。KFCやマクドナルドが肉のパティなどの加工品を使うのは、作業の標準化がしやすく、店舗による品質の差が出づらく、しかも店舗が勝手に食材を調達しづらいというメリットがある。

このため、タスティンでは、2018年末にセントラルキッチンを設立し、半完成品を店舗に供給することにした。店舗ではバンズを専用のオーブンに入れ、表面を焼き、そこに温めた具材を規定の量だけ挟み込んでいくだけにした。オーブンもベルトコンベア方式になっており、コンベアに乗せて、出てきたら焼き上がっているように工夫をしている。

▲バンズを蒸して、オープンで焼いて、カットを入れ、具材を入れる。手作業部分が多く、西洋ファストフードのような調理の標準化が難しい。ここが大きな課題になっている。

 

店舗管理が厳しく、初期費用も高いタスティン

ただし、これだけで品質が確保できるわけではない。加盟店は少しでもコストを下げようと考え、供給された具材に何らかの混ぜ物をして、水増しをしようなどということは多くの加盟店オーナーが考えることだ。

そこで、タスティンは本部による管理を厳格化しようと考えた。エリアマネージャーが店舗を巡回し、不正なことをしていないか、誤った手順をとっていないかどうかを管理する。このため、タスティンの加盟店になるには、かなりの初期費用がかかる。

タスティンの公式サイトによると、65平米の標準店を開くのに必要な初期費用は45万2300元で、この他家賃、光熱費なども必要になるため、平均して70万元(約1400万円)ほどが必要になる。加盟ハードルを下げることで店舗展開の速度をあげる戦略をとっている「蜜雪氷城」(ミーシュエ)の初期費用が37万元であることから比べると2倍近い費用がかかる。

さらに、月々の売上から徴収されるロイヤリティに関しては非公開になっているが、報道によると、月の売上で13万元までの部分は0%、13万元から20万元の部分については3%、20万元以上の部分については6%と、かなり高いものになっているという。しっかりとロイヤリティを徴収し、一方で手間暇をかけて店舗の指導を行う。そういうスタイルのフランチャイズを運営している。

▲タスティンの公式サイトによると、標準的な加盟初期費用は45万元(約930万円)。フランチャイズとしては高額だが、それでも店舗が拡大をしている。

 

それでもタスティンが拡大をする3つの理由

それでも店舗数が増えている理由は3つある。

1つは下沈市場=地方都市を中心とした展開を行なっていることだ。タスティンの客単価は20元前後と、KFCやマクドナルド、バーガーキングといった海外チェーンと比べて安い。このような海外ブランドはその客単価の高さから一線都市=大都市中心の展開にならざるを得ない。一方、タスティンが最も手厚いのは三線都市=地方衛星都市だ。KFCやマクドナルというライバルと直接対決を避けることができるため、加盟店オーナーにとっては売上を上げやすいと感じる。

もうひとつは商品の強さだ。タスティンは中国ハンバーガーをうたっているが、三線都市の人から見れば、ハンバーガーというより、よく知られている肉挟をおしゃれにした食べ物に見える。ハンバーガーをよく知っている若い層にとっては、新しいハンバーガーであると感じられ、よく知らない中高年にとっても今風の中華おやつに見える。さらに、具材をたっぷり入れることにより、満足感がある。地方都市の感覚にうまく適合したファストフードになっている。

3つ目は、ショートムービーやライブコマースに積極的で、ネットでの露出度を高めていることだ。毎日午前9時半から深夜12時半まで15時間のライブ配信を行い、そこでタスティンの商品などを紹介するだけでなく、優待クーポンの販売なども行なっている。ネットで積極的に露出をすることで、マインドシェアを高めると、街を歩いてタスティンを見かけると入ってみたくなる。これで新規顧客を獲得し続けている。

▲店舗数(横軸)、客単価(縦軸)のポジションマップ。マクドナルドに対して価格競争力がある。

▲タスティンは三線都市(地方衛星都市)に厚みを持っている。大都市で、マクドナルドやKFCとの競争を避け、地方市場で市場を確保している。

▲タスティンでは、積極的にショートムービーなどに露出をし、ライブコマースで割引クーポンを販売している。ネットでの存在感があることも人気が拡大する理由のひとつになっている。

▲ミニプログラムによるモバイルオーダー、デリバリーにも対応。基本セットは21元(約440円)からと安い。それで満腹感が得られる。

 

さらなる拡大に向けた2つの課題

ただし、タスティンに死角がないわけではない。問題は2つある。ひとつはタスティンのバンズは外はサクサク、中はモチモチという食感が命だが、そのためには店舗のオーブンで焼く必要があり、調理に時間がかかる。平均で注文をしてから15分ほどかかっている。この問題をモバイルオーダーなどを組み合わせて改善する必要がある。ファストフードなのにファストではないのだ。

もうひとつは新メニューの開発だ。現在、中国ハンバーガーと呼べるのは、北京ダックバーガーなど5種類しかない。新しい中国ハンバーガーを開発する必要があるが、味の点、調理の標準化の問題などを考えると簡単ではなく、新メニューの登場スピードが遅い。

この2つの課題を乗り越える必要がある。タスティンは時期は特定していないが、1万店舗を当面の目標にしている。多くの評論家がこの目標は達成可能だと見ている。しかし、問題は1万店舗を達成した後、それを維持していけるかどうかだ。そのためには大都市への積極的な進出と2つの課題を解決しておく必要がある。

▲現在、中華バーガーと呼ばれるメニューは5種類のみ。メニューの少なさが大きな課題のひとつになっている。