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国境警備に使われる光ファイバー。数十kmを監視ができ、±100mの精度で侵入箇所を特定

中国の国境警備に2014年から光ファイバーによる監視が行われている。伝送波形を解析することで、光ファイバーに加えらえた外力を検知し、その箇所も特定できるからだ。従来の光学カメラ、赤外線カメラによる監視に比べ、数々の利点があると海南弱電李工が報じた。

 

国境警備に使われる光ファイバー

中国の陸続きの国境は、東は遼寧省丹東市の鴨緑江口から西は広西チワン自治区防城港市まで2.28万kmある。この長い国境での侵入を防ぐために従来は光学カメラと赤外線カメラが利用されていた。しかし、その監視コストは膨大なものになっていた。そこで、光ファイバーによる侵入センサーが使われるようになっている。

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▲実際に国境警備で使用されている例。鉄条網に波型に光ファイバーが張られている。侵入者がこの鉄条網を越えようとして柱や鉄条網に力を加えると、その振動を光ファイバーが感知をする。

 

光ファイバーに加わった外力を検出する

光ファイバーは、インターネットの信号などを送受信するために使われのが一般的。光ファイバーは屈折率の異なる素材がマカロニのように二重構造になっており、光は芯部分から外に出ようとすると、屈折率の異なる素材によって反射をし、光が閉じ込められる形で送られる。

この光ファイバーの途中で、曲げる、振動を与えるということをすると、その部分の光の反射の仕方が変わるため、通常時の光信号の伝送路と比較をすることにより、物理的な刺激が加わったことがわかる。フェンスに光ファイバーを設置をすればフェンスに対する物理刺激が、地中に埋設をすれば侵入が発見できる。解析によって、光ファイバーのどの部分に外的な力が加わったかも特定が可能だ。

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光ファイバーは、屈折率の異なる素材が二重構造になっていて、光は反射をしながらファイバー内を伝わる。光ファイバーの一部に外力が加わると、その伝送状態が変わり、解析をすることで、光ファイバーのどこに外力が加わったかがわかる。

 

広域、外部撹乱、劣化などの問題を解決する光ファイバー監視

光ファイバーは数十kmの伝送能力を保つため、長距離つまり広域の監視が可能になる。また、光による計測なので、雷などの電気的な自然現象の影響も受けづらい。さらに、ガラス素材なので、経年による錆や劣化も起きない。

侵入防止には、赤外線やマイクロ波を放射して監視をする方法もあるが、コストがかかる上に死角も生まれる。侵入者は監視装置についても事前に調査をし、このような死角を利用して侵入しようとするため、確実な効果は望めなかった。しかし、光ファイバーセンサーであれば死角はなく、物理的な刺激を与えないように侵入する必要があり、他の監視手法と組み合わせることで、侵入はほぼ不可能になる。

また、監視カメラによる監視は目視監視が必要になり、自動化をするには画像解析システムなどの導入が必要になるが、光ファイバーセンサーでは最初から監視の自動化ができるのも大きな点だ。

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▲具体的には、壁の上などに光ファイバーを張り巡らしておく。侵入者が光ファイバーに触れたり、支持柱などに触れると、その外力が検知され、監視カメラがその場所に向けられるという仕組みだ。

 

2014年より国境警備に活用

中国科学院上海光学研究所は、この光ファイバーセンサーを実用化し、2014年10月から国境警備などに活用されている。1つのシステムで、数十kmの国境を監視することができ、侵入箇所は±100mの精度で確定できるという。

また、この技術はすでに民生用技術となり、プラントや飛行場、刑務所、マンション、観光施設、鉄道などで使われるようになっている。