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公園のフェンスを撤去する。市街地と一体化し、市民が利用しやすい公園へ。マナー違反はAIが自動検出

北京市の公園のフェンスが撤去されていっている。市街地と一体化し、利用しやすい公園にするためだ。一方、マナー違反などを管理するため、公園管理も動的な管理に変わっていっていると新京報が報じた。

 

公園のフェンスを取り払い、市街地と一体化

北京市の公園の壁が撤去されていっている。北京市海淀区では、昨2022年7月から67ヶ所の公園の延べ73kmに渡る公園のフェンスの撤去を始め、ほぼ8割の撤去が完了している。朝陽区でも43ヶ所の公園のフェンスの撤去が完了をしている。

このような公園は「無界公園」と呼ばれている。無界公園にする理由は、市街地と公園を一体化し、都市景観を向上させようというものだ。どこからでも公園の中に入ることができ、公園脇の歩道を歩く時も、従来は無機質なフェンス横を歩いていたが、これからは四季折々の公園の植物を見ながら歩けることになる。

▲フェンスがなくなり、市街地の道路からも公園が見通せるようになった。

▲撤去されるフェンス。北京市では、最終的にすべての公園のフェンスを撤去する予定だ。

 

24時間利用ができる公園に

また、公園の利用率の向上もねらっている。従来の公園はだいたい朝6時から夜9時半までといった開園時間が設定されていて、その時間をすぎると門が閉ざされてしまう。しかし、無界公園では開園時間と閉園時間がなくなり、公園内の公衆トイレも24時間いつでも使えるようになる。

近隣住民の利便性もあがった。海淀公園は以前は東門と西門の2つしか出入り口がなかった。そのため、公園内に入るにはいずれかの門まで迂回をしなけれならなかった。しかし、現在は6つの通路が設置され、気軽に公園内に入れるようになった。

また、通勤や移動でも、以前は多くの人が公園を迂回するように歩いていたが、今では公園内を横断して歩く人が増えている。通勤であっても、公園内を歩き、自然を感じてもらい、きれいな空気を吸ってもらうことで、市民の健康向上に役立つことになる。

▲通勤する人はこれまで公園を迂回して遠回りをしていたが、公園の中を通って通勤ができるようになった。

▲公園内の公共トイレも24時間開放された。

 

掲示をわかりやすくすることでマナーを誘導

ただし、無界公園にすることで問題なのは管理だ。フェンスがなくなったため、立ち入ってはいけない芝生や植え込みから入ろうとする人がいる。また、禁止されている自転車で公園の中に入ろうとする人もいる。

従来は、フェンスがあるため、門以外からは出入りができず、そこには管理人の詰め所があるために自転車で入ろうとする人はそこで制止をすることができた。そこで、海淀公園では従来の門に加え、6つの通路を設置し、入りやすくし、入園者をそちらに誘導する掲示を設置した。また、公衆トイレ付近に駐輪場を設置し、自転車はそこに止めてもらうように誘導をした。

緑地に踏み込む、自転車で侵入するといった禁止行為をする人のほとんどは、悪気があってやっているわけではない。公園に入る通路や駐輪場が見つからないため、ルール違反をしてしまう。適切な誘導を行えば、多くの人はルールを守ってくれる。

▲フェンスを撤去することで、公園の利用が進む。マナー違反に関しては監視カメラによる管理を行なっている。将来的には、AIでマナー違反行為を自動検出するシステムを導入する。

▲禁止行為を明確化、サインボードで通路に誘導するなど、さまざまな工夫をしている。

 

静的な公園管理から動的管理へ

また、公園管理もこれまでの静的な管理から動的な管理に変わったという。従来は、管理人は門付近の詰め所にいて、定時に定められたルートを巡回するというものだった。

現在では、公園内に144個の監視カメラが設置をされ、管理人は電動カートで随時園内を巡回している。監視カメラで違反行為などの問題が発見されると、管理人がその場所に向かい問題に対処するという形式になった。

海淀区では、この監視カメラ映像から違反行為を自動検出するシステムを開発するために現在予算を申請中だという。

北京市園林緑化局では、海淀区と朝陽区の公園を先行モデルとして無界公園を実現し、各区でも毎年1つから2つの公園を無界公園化していく。歴史文化財などがあり特別の保護が必要な公園を除き、最終的にはすべての公園を無界公園化していく予定だ。