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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

照明だけではない。5G基地、交通監視などを兼ね備えるスマート街灯。各地で本格普及が始まる

スマート街灯の本格普及が始まり、販売をするテック企業、メーカーの動きが慌ただしくなってきている。中央政府が国家標準ガイドラインを定めたことで、各地の政府が5ヵ年計画にスマート街灯の整備を盛り込んだことが要因だ。今後5年で、スマート街灯が本格普及をすることになると媒体が報じた。

 

スマート街灯の普及が本格化

スマート街灯の普及が本格化をしている。華為(ファーウェイ)、中興(ZTE)、聯想レノボ)、百度バイドゥ)なども参入し、各地方政府に対しての営業活動も活発化をしている。

その要因となったのが、3月1日に国家標準として「スマートシティ:スマート多機能街灯サービス、機能、運用管理規範」が公開され、スマート街灯の標準ガイドラインが定められたことだ。

各都市はスマートシティを実現するための重要な要素として、スマート街灯の整備計画を本格化しようとしている。

▲スマート街灯の機能。照明、5G通信基地だけではなく、交通監視、公共監視などの機能も備わっている。

 

今後5年の活況が確定したスマート街灯ビジネス

米国の無線通信業界団体のCTIAの予測によると、2021年の中国のスマート街灯関連の市場規模は3.7兆元(約73.1兆円)になると見られ、スマートシティ市場の20%を占めると予測されている。

特に、2021年3月には、全国人民代表大会において承認された第14次五カ年計画(十四五)にそって、山東省、四川省浙江省貴州省などが今後の5ヵ年計画にスマート街灯の整備を入れている。この5年で、スマート街灯は各地で整備をされ、スマート街灯市場も活況となる。

▲スマート街灯はさまざまな屋外施設の機能をまとめてしまうという「多杆合一」の考え方に基づいている。

 

テック企業、家電メーカーなどが続々参入

このスマート街灯の設置は、2016年頃から中国と米国で始まった。中国では、ZTEが深圳工場で、最初のスマート街灯システム「Blue Pillar」を開発し、陝西省で通信と照明を合体されたスマート街灯を設置した。

このBlue Pillarはアップグレードが行われ、通信基地や監視カメラ、充電機能などが追加されていった。これにより、街中に無計画に設置されている「街灯」「監視カメラ柱」「通信基地局」などを1本にまとめて、街の景観をすっきりさせる都ともに、集中管理が可能になるという「多杆合一」の考え方が生まれていった。

これに、ファーウェイ、アリババ、テンセント、レノボなどのテック企業だけでなく、家電のハイアール、AIの商湯(シャンタン)、曠視(クワンシー)などが参入をしてきている。

▲スマート街灯は街の景観も改善する。

 

北京冬季五輪で整備された「智慧の樹」

今年2022年の北京冬季五輪では、開催地域のスマート街灯を華体科技が担当し、2539本の「智慧樹」を設置した。照明だけでなく、監視カメラ、交通標識、交通信号予告、5G通信基地局などの機能があり、得られた情報は「城市大脳」(シティブレイン)で統合管理され、交通渋滞の解消、違法駐車車両の発見などに貢献をした。

北京冬季五輪では会場付近にスマート街灯「智慧樹」が会場付近に整備された。交通状況などを監視し、「城市大脳」で統合管理され、交通渋滞の解消、違法駐車車両の発見などに貢献をした。

 

スマートシティのソリューションとしてのスマート街灯

ファーウェイも早くから参入した企業のひとつで、2016年にはスマート街灯のコンセプトを公開し、2017年には国家半導体照明工程研究開発産業連盟、中国照明学会、常州市照明管理所などと共同して「NB-IoTスマート街灯エコシステム」を公開し、2018年に「PoleStar2.0スマート街灯ソリューション」を公開している。すでに、北京市海淀公園やコスタリカサウジアラビアなどに設置されている。

ファーウェイのPoleStar2.0は、多杆合一からさらに一歩進んで、スマートシティのセンサーとしてスマート街灯を活用することを目指している。

また、百度もスマート街灯に積極的で、百度が推進する自動運転システム「Apollo」の連動をねらっている。

2021年には、国内のスマート街灯関連の地方政府の支出は155億元(約3060億円)を超えた。2022年以降、この支出は急増することが確実で、各テック企業、メーカーの動きが慌ただしくなってきている。

 

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