トランプ関税により、米国向けの輸出製品の製造業は大きな打撃を受けた。しかし、その一方で、欧州、中東、東南アジアへのシフトが進んだ。中国の製造業は、米国に依存しない道を模索し始めていると界面新聞が報じた。
トランプ関税騒動で変わる中国の製造業
中国の中小零細製造業は、トランプ関税騒動にいいように振り回された。特に玩具など米国輸出の依存度が高いサプライヤーの中には倒産をしてしまうところも現れた。しかし、全体を見ると、影響は少なく、各製造業が米国に頼らない道を模索したようだ。その後、145%という常識外の関税率が30%にまで引き下げられると、製造業は息を吹き返し、それだけではなく、関税前とは異なった体制をとるようになっている。
新たな販路を見つける輸出関連製造業
江蘇省の華騰個人護理用品の生産責任者、穆龍生さんは、それまで多くの製品を納入していた米国のチェーンスーパーKroger(クローガー)から、注文を停止する通知を受け取った。歯ブラシやデンタルフロスを生産して納入していたが、145%もの関税をかけられて、Kroger側ではとても販売できないと考え、注文を停止したのだ。
その後、30%にまで関税が下げられると、注文は再開をし、なおかつ納入価格は以前と同じだった。30%の関税分はクローガー側で吸収をするか、価格に反映させるという。
穆龍生さんは、米国からの注文が止まると、すぐにこれまでリーチできていなかった輸出チャンネルを模索し始め、欧州とブラジルの新規の販売先を確保した。そのため、クローガーからの注文がなくなっても、生産量は微減で済んでいる状態だった。そこにクローガーからの注文が入り始めたため、生産数は昨年よりも増加をしている。

ベトナム生産は簡単ではない
江蘇省の艾瑞服飾のマネージャー、孫青さんもトランプ関税には慌てた。孫青さんは、米国が合成オピオイドなどの違法薬物の流入を理由に中国に関税をかけ始めた2月の段階ですでに動いていた。名目は違法薬物の流入阻止だったものの、関税はすべての製品にかけられたため、違法薬物は程のいい理由にすぎず、関税率もどんどんあがっていくと察知をし、以前から進めていたベトナム工場での生産を増やす体制を強化した。
しかし、納入先の米国ブランドから、生産をベトナムから中国に戻してくれないかという相談を受けることになった。ひとつは、ベトナムはまだ技術レベルが低く、仕事が荒いことがあった。そして大きいのが、ベトナムは物流環境が整っていないため、納期が伸びてしまうことがある。
華騰個人護理の穆龍生さんもベトナム生産を模索したが、簡単には切り替えられないという。「ベトナムの場合は納期が40日後になりますが、中国で生産をすれば25日で済みます。また、型紙や金型をつくる技術がまだ成熟していないため、型紙や金型は中国で生産をしてベトナムに持ち込む必要があります。米国企業は、中国からベトナムへ生産拠点を移そうと、この2ヶ月さまざまな試みをしましたが、その多くは失敗をしています」。

米国に頼らない道を模索する輸出産業
孫青さんは、長い時間軸で見れば、米国ブランドはベトナム生産にシフトをしていくと見ている。そのため、米国に頼らないビジネスの模索を始めている。欧州、南米、中東などが中心で、さらには国内需要の掘り起こしもしている。
国内のスーパー、特に「永輝」(ヨンホイ)などは、国内需要を掘り起こしたい輸出生産業の状況を見て、積極的に輸出向け製品の取り扱いを始めている。
現状は、関税が常識的な範囲に戻り、中国から米国への輸出が再開をしているが、中国企業は米国に頼らない体制づくりを始め、米国企業は東南アジア生産を模索するようになっている。その意味では、トランプ関税は成功したと言えなくもないのかもしれない。
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