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アフターコロナ後の消費者心理はどう変化したか。「健康」「環境」「デジタル」「新消費スタイル」の4つ

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明日、vol. 099が発行になります。

 

今回は、コロナ終息後の消費者心理の変化についてご紹介します。

コロナ後に、以前と同じような水準に経済が戻ってほしいとは世界中の誰もがそう望んでいることでしょう。しかし、内容まで以前と同じように戻るのか、あるいは以前とは別の形になっていくのかは大きな問題です。

例えば、日本ではコロナ禍により、フードデリバリーが急速に拡大をしました。しかし、感染状況が落ち着くとともに、フードデリバリーの利用利率が下がっているという話も耳にします。正確な統計のようななかなか存在しないので、確かなことまではわかりませんが、やはり非常事態宣言や営業自粛が解除されれば、飲食店に行って食べたいと思う人が出てくるのは当然です。問題は、フードデリバリーの利用率がどの水準で落ち着くかです。コロナ前と比べて高い水準で推移をするのであれば、新しいビジネスとして成長をしていく道筋が描けますが、コロナ前の水準に戻ってしまうのであれば、将来性はなかなか厳しいということになります。

売店や飲食店を経営されている方にとっては、来店客がコロナ前の水準に戻ってくるのか、それともそこまで戻らず低い水準で推移していくことになるのか、大きな悩みや不安になられていると思います。

 

そこで、日本や中国だけでなく、世界中の調査会社が、コロナ後の消費者ビジネスがどのような変化をするのかを探ろうと努力をしていますが、これだけ世界的なパンデミックは、スペイン風邪ぐらいしか参考にする前例がなく、誰も確固たることを言えない状況です。

その点、中国は2020年の夏にはほぼ終息をしたため、中国の変化が参考になることは多いと思われるのですが、これも困ったことに、中国も完全終息とは言えません。時おり、小規模なクラスターが発生して、緊張感が走るということを繰り返しています。そのため、コロナ禍以降の変化が、それがコロナと関係なく習慣として定着したものなのか、あるいはまだまだコロナに対する不安があってそうさせているのかが見分けづらいところがあります。この問題が存在することを前提にお読みください。

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▲中国のコロナ感染状況。昨2020年夏頃には終息をし、政府も事実上の終息宣言を行なっているが、小規模のクラスターが発生することが続いていて、完全終息とは言えない状況になっている。

 

また、もうひとつ前提になる知識について説明しておく必要があります。それは感染症予防に対する考え方に違いがあることです。日本では「三密回避」が基本になっています。三密とは密集、密接、密閉のことで、「人混みにいかない」「人との距離をとる」「密閉空間にせずに換気をする」で、これに加えて手洗いとマスク着用をするというものになっています。要は飛沫感染に重きを置いているわけです。

一方、中国の予防に関しては少し違います。どうしてそういう風になっているのかは国民性の違いとしかいうよりありませんが、接触感染に重きを置いています。そのため、エレベーターや公共のドアノブのようなもの触れないようにしたり、爪楊枝や鍵などでエレベーターのボタンを押すという人が増えています。

さらに、宅配便の荷物にウイルスが付着するという理由から、陝西省の宅配企業でクラスターが発生すると、宅配業務を停止して、作業場を消毒する事態になりました。また、すでに発送をしてしまった宅配便もあるので、それを受け取った人は手袋とゴーグルを着用して、荷物をアルコール消毒をしてから開封することを勧めています。

宅配便の荷物でどのくらい感染が生じるのかはわかりませんが、パンデミック初期には物に付着したウイルスが活性を失うのに数時間から数日かかるという告知もされていたことを考えると、可能性はゼロではないのでしょう。ただし、日本ではこのようなことを気にされている方はあまり聞いたことがありません。

 

もうひとつの特徴が、「移動距離を短くした方が感染リスクが小さくなる」と考えている人が多いことです。移動距離を短くする、あるいはそもそも移動しない行動を取れば、結果として日本の三密回避と近い状態になるので、両国とも大きな考え方の違いはないのでしょうが、その表現として、中国では移動しない、移動距離を短くするということが重要視されています。

これは決して、根拠のないことではありません。百度バイドゥ)は、自社の百度地図の移動データを分析して、都市内のどの場所でクラスターが発生する確率が高いかを予測する機械学習モデルを開発しました。この開発の中で、得られた知見が、病院、学校、バス停、飲食店などの生活基盤施設が1km以内にあり、住民の累積移動距離が短い地区ではクラスターの発生確率が小さくなるというものでした。この機械学習モデルは、「C-Watcher: A Framework for Early Detection of High-Risk Neighborhoods Ahead of COVID-19 Outbreak」(https://arxiv.org/abs/2012.12169という論文にまとめられ、オンラインで開催された国際的な人工知能のカンファレンス「AAAI2021」にも採用されました。

また、現在でも、多くの地方政府が市外、省外への移動は推奨せず、人と接する機会の多い職業では、省外から入ってきた場合は一定の隔離期間を設定するなど、長距離移動に対する対策が行われています。クラスターが発生すると、その地区を封鎖して、人の出入りを禁じるなど、やっていることは三国志の時代に伝染病が発生した時の対処法と基本的に同じですが、それほど昔から行われている考え方であるだけに一定の効果があるのでしょう。

日本では、感染拡大期を別にすれば、ここまで移動制限に注目する感覚はないと思います。お国柄としか言いようがありません。

 

どのような予防対策が最も効果が高いのかは、今の時点では検証のしようがなく、専門家の分析を待つしかありません。しかし、重要なのは、中国人の多くはこのような発想で予防対策を行い、その感覚が消費行動にも反映されるということです。

そういうことを前提条件でした上で、コロナ後の消費行動の変化として目立っていることが4つあります。それは意外なものではなく、どの国にも似たような傾向があるかと思います。

その4つとは「健康至上主義」「生活のデジタル化、DX」「環境に対する意識」「新しい消費スタイル」です。最初の3つは、どの国であっても、程度の差はあっても似たような意識が消費者の間に生まれているはずです。

中国が、他の国と違うとすれば、最後の「新しい消費スタイル」です。そして、最初の3つについても、新しいビジネスが生まれる、あるいは以前から提供されていたビジネスににわかに注目が集まるということが起きています。

そこで、今回は、この4つについて、どのようなビジネスに注目が集まっているのかをご紹介します。

 

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