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中国のオンラインゲーム規制により初の18禁ゲームが誕生。レーティング制度の導入も議論に

未成年に対する週末3時間だけのオンラインゲーム規制が始まったが、未成年のアクセスを自主的に全面禁止するゲームも登場している。中国では初めての「18禁ゲーム」になったと二一新聞が報じた。

 

ゲーム規制が始まり、号泣する子どもたち

中国では、毎年9月から新学年が始まるため、子どもや学生に対する新たなルールも9月から施行される。コンテンツ規制を行う国家新聞出版署は、各ゲーム企業に通達を出し、18歳未満の未成年は、オンラインゲームを平日は禁止し、週末の金土日の午後8時から午後9時までの間しか遊べないようにする仕組みの導入を求めた。

この仕組みは、9月1日から施行され、18歳未満の子どもたちの間に動揺が広がっている。TikTokや快手などのショートムービープラットフォームには、ゲームにアクセスができず、泣き叫ぶ小学生の映像が大量にアップされている。

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▲王者栄耀にアクセスができず、泣き叫び暴れる子どもたちの映像が次々とショートムービーにアップされている。最初は笑えるものの、見ているうちにだんだんかわいそうになってくる。

 

週末になったらサーバーが落ちるという悲劇

この他、さまざまな問題が起きている。小学生に大人気のMOBA「王者栄耀」も規制の対象となり、9月1日と2日は平日であるため未成年はアクセスができない状態となった。そして、週末の4日土曜日の午後8時、アクセスが殺到したために、サーバーが落ちるという事件が起きてしまった。復帰をした時にはすでに午後9時直前になっており、未成年は週末にも遊べない状況になってしまった。

王者栄耀公式は、「親愛なる召喚師のみなさんへ」という公式コメントを出し、謝罪をし、有料アイテムを配布するなどの対応策を発表した。

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▲ようやく週末になり、王者栄耀が遊べると未成年が大量アクセスしたために、サーバーが落ちるという事故が起きてしまった。王者栄耀公式は「親愛なる召喚師のみなさんへ」として、謝罪をし、有料アイテムを配布する発表を行った。

 

抜け道、裏技はすでに小学生の間に拡散

ゲームのアカウントが未成年であるかどうかを判定するために、テンセントでは、身分証の登録と顔認証を求めている。これをすり抜けるのは現状では難しくなく、祖父や祖母といった大人にアカウントを作ってもらえばいいのだ(両親はさすがに協力をしてくれない)。すでにその方法はネットで流布され、子どもたちにとっては周知の方法となっている。

また、パブリックVPNを利用して、海外からのアクセスであると偽装をしてアカウントを作る方法も流布されている。未成年の制限があるのは中国の未成年のみで、海外ユーザーは対象外だからだ。

もちろん、このような不正に対して、テンセントは対策を始めている。

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▲未成年たちの間では、すでに規制を乗り越える裏技が出回っている。祖父にアカウントを作ってもらい、顔認証が必要な時はおじいちゃんの顔を借りるというもの。また、すでに大人が作成したアカウントを販売する業者も出現している。テンセントはこのような不正アカウントについても対策すると宣言をしている。

 

未成年だと疑われた60歳超絶技巧プレイヤー

王者栄耀で、朝方の午前3時、60歳の人がアクセスをして、キャラクターとして趙雲を使い、次々と5人に勝つというめざましいプレイを見せたことが話題になっている。周辺のプレイヤーから、あまりに華麗なプレイぶりに、ほんとうに60歳の人なのか?と疑われたのだ。

その通報を受けて、王者栄耀運営は調査をし、その結果を公表している。テンセント健康システムは、行動などから未成年の偽装アカウントではないかと判断をすると顔認証を求める仕組みになっている。このアカウントに対しては、今年3月から合計17回の顔認証を求めており、身分情報、顔認証ともに公安が保持する身分証データベースと一致をしているという。

プライバシー保護のため、いつ何時に顔認証が行われたかなどの詳細情報は公開できないものの、王者栄耀運営は、本人であると判定したという。つまり、プレイがめちゃめちゃ上手い60歳だった。

 

未成年を全面禁止にした「光と夜の恋」

同じくテンセントが運営し、女性から人気のある恋愛ゲーム「光と夜の恋」では、より厳しい措置がとられた。すでに8月から未成年が新規アカウントを取得することを停止していたが、9月1日からは規定どおりの週末のみのアクセス時間制限を始め、さらには9月25日からは未成年のアクセスを全面的に禁止する。

つまり、中国で初めての18+、18禁ゲームとなる。日本の18禁ゲームのような性的表現は、中国ではそもそも全面禁止されているため、「光と夜の恋」に露骨な性的表現はない。しかし、恋愛ゲームであるため抱擁などの恋愛表現があるため、そこを配慮したのではないかと思われる。


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▲女性向け恋愛ゲーム「光と夜の恋」の公式ビデオ。未成年のアクセスが禁止され、中国で初めての18禁ゲームとなった。

 

お金よりも時間を返せと叫ぶプレイヤーたち

問題は、有料アイテムを販売していたことだ。未成年が有料アイテムを購入していて、まだ使っていない場合、それが無駄になってしまうことになる。運営側では、未成年アカウントについては返金手続きをするか、あるいは成年のアカウントに転送する仕組みを用意している。

しかし、利用者たちは怒っている。お金よりも時間を返せという投稿がSNSに相次いでいる。

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SNSでは運営に対する批判や怒りの声が相次いでいる。「これまで費やした時間をどうやって償うつもりなのか。最初から未成年は遊べないと言ってくれれば、このゲームはしなかったのに」というもの。

 

年齢レーティング制度の導入も議論に

すでに年齢によるレーティング制度もできている。中国音像デジタル出版協会(CADPA)が策定した「ネットゲーム推奨年齢」制度で、内容により、「8歳以上」「12歳以上」「16歳以上」の3つの基準がある。現在のところ、あくまでも推奨であって、強制的な制限ではないが、多くのゲーム運営で、このような基準を取り入れ年齢によるアクセス禁止措置をしていくことも議論されている。

映画などではすでにどの国でもレーティング制度ができあがっていて、推奨ではなく、年齢による視聴制限も行われている。ゲームも映画と同じような制限が行われていくことになると見られている。

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▲すでに中国にもCADPAが策定したゲームの年齢レーティング制度がある。現在のところは推奨だが、今後、ゲーム運営による自主規制の形で、年齢レーティング制度も導入されていくと見られている。