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飲食店のキッチンをライブ中継。浙江省で、フードデリバリーの衛生問題を解決する取り組みが始まる

市場監督管理局に対するフードデリバリーの通報で多いのが、衛生問題だ。開封したら破損する封印も採用され始めているが、採用している飲食店は多くはない。そこで、浙江省では、飲食店の厨房をライブ中継するプラットフォームを構築した。消費者の目が届くことにより、飲食店の衛生レベルを上げようとする試みだと1818黄金眼が報じた。

 

クレームの多いフードデリバリーの衛生問題

日常生活の中にすっかり定着したフードデリバリー。しかし、問題も起きている。外売(ワイマイ、フードデリバリー)は、本来、店舗営業している飲食店の料理をデリバリーしてくれるサービスだが、デリバリーが儲かるとなると、デリバリー専門の飲食店が続々と登場している。そのような店舗の中には、消費者の目が届かないことをいいことに、厨房の衛生状態が不適切だったり、食材の扱いが雑だったりと、衛生問題に直結する違反行為が行われている例もある。

消費者は厨房の実態を知ることができないため、届いた料理の異物混入、異臭などの状態から窺い知ることができるだけで、市場監督管理局には消費者からのクレームや疑問の声が寄せられていた。

そこで、浙江省市場監督管理局は、公安、人力資源社会保障局などと共同して、「浙江外売在線」プラットフォームを構築することになった。

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▲厨房をライブ中継する浙江外売在線は、市場監督管理局を中心に複数の公的機関により共同運営される。

 

自分の料理を作っているところを見られる厨房のライブ中継

この浙江外売在線プラットフォームは、市場監督管理局を中心にした省庁横断の組織が運営をするもので、簡単に言えば、参加に応じる店舗の厨房のライブ中継を誰でも見られるようにするというものだ。

これにより、調理スタッフが不適切な行動をしていないか、食品の二次汚染が発生しかねない状況になっていないかなどを自分の目で確かめられるようになる。フードデリバリーを注文した後、浙江外売在線アプリを起動して、注文した店舗のライブ映像を見れば、消費者は自分の料理が作られるプロセスを見ることができる。

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▲参加している店舗を選ぶと、その厨房の現在がわかるライブ中継を見ることができる。

 

デリバリー騎手からも歓迎

この浙江外売在線は、フードデリバリーの騎手(配送スタッフ)からも歓迎されている。デリバリーをするには、料理を密閉容器に入れることが必要だが、いい加減な飲食店ではきちんと密閉して点検をする作業をしていないため、配送中に料理の中身が漏れ出てしまうことがある。しかし、消費者は、騎手の配送の仕方に問題があったと感じるため、騎手に低い評価をつけたり、場合によってはトラブルとなり、騎手が個人で賠償をするようなことも起きている。浙江外売在線があれば、そのようなトラブルも少なくなる。

また、料理ができあがる予定時刻に店舗に行っても、まだ料理ができてなく待たされることもたびたびある。それにより、予定時刻に配達をすることができず、やはり低評価やトラブルにつながる。騎手も厨房のライブ配信を見ることができるので、このようなトラブルも少なくなると期待されている。

 

飲食店のキッチンをオープンにしていく取り組み

このような試みは、国家食薬監総局が2014年から進めている「明厨亮竈」(オープンキッチン化)プロジェクトとも連動している。明厨亮竈では、キッチンをガラス張りにし、来店客から見える状態にし、食材などの入手ルートをウェブなどで公開をすることで食品安全のレベルを上げていこうというものだ。

このプロジェクトは、中国食品安全法の第55条で規定されているが、強制力はなく、飲食店の自由参加になっていたため、有名料理店や大手チェーンのみに限られていた。

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▲客席から厨房の様子が見えるガラス張りのオープンキッチンも増え始めている。

 

飲食店のすべてをオンラインで公開

浙江外売在線は、美団、ウーラマのフードデリバリー企業と連携することで、この限界を乗り越えられるのではないかと期待されている。現在、消費者向けの浙江外売在線アプリは未公開で、関係者とフードデリバリー騎手の間で試験公開が進められている。浙江省には29.3万軒の飲食店があり、運営主体は20.5万社ある。現在、このうち、キッチンのライブ配信を始めたのが6089軒、デリバリー時に開封すると破損してしまう封印を採用しているのが3372軒でしかない。これを、消費者向け浙江外売在線アプリが公開され、オープンにしている料理店に注文が集まるようになることで、参加する飲食店を増やしていきたいとしている。

この浙江外売在線アプリでは、営業許可証や食材の入手伝票なども見られるようになる。

市場監督管理局では、このプラットフォームを応用し、飲食店の衛生レベルの評価、指数化の研究に着手し、将来的には点数化をして、消費者によりわかりやすく飲食店の衛生レベルを提示する計画だ。

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▲明厨亮竈ではオフラインのオープンキッチン化が進められている。右側の飲食店の広告ディスプレイには厨房の現在の様子が映し出される。消費者に安心をしてもらうことが来客数を上げることにつながっている。