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北京市でホールセールクラブの開店ラッシュ。アリババ、ウォルマート、コストコ、カルフールがホールセールに賭ける理由

北京市でホールセールクラブの開店ラッシュが起きている。会員制の販売店で、箱買いをするのが基本だ。日本ではコストが有名だ。しかし、ホールセールクラブはこれまで中国ではあまり広がらなかった。追い込まれた実体小売業が、隘路を求めて開店ラッシュになっているとも言われていると中国新聞週刊が報じた。

 

北京市でにわかに起きたホールセールクラブの開店ラッシュ

北京市で、ホールセールクラブの出店が相次いでいる。6月18日に、アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)のホールセールクラブ「盒馬X会員店」(フーマX)がオープンした。

ホールセールクラブは、会員制のスーパーマーケットで、倉庫のような店内に大量の商品が並べられ、その多くが箱買い。購入をするためには、あらかじめ会員になる必要がある。日本ではコストコが有名だ。

北京ではフーマX以外にも、国内スタートアップの「fudi」、チェーンスーパーの永輝(ヨンホイ)傘下の「永輝倉貯店」、ドイツのチェーンスーパー系の「メトロPLUS」がオープンをした。さらに、ウォールマートの「サムズクラブ」、コストコカルフールも北京の出店計画を公表している。

なぜ、突然のごとく、ホールセールクラブの出店ラッシュになっているのだろうか。

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▲アリババのフーマフレッシュが展開したホールセールクラブ「フーマX」。第1号店となる。

 

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▲フーマXの営業開始時間直後の様子。すでに行列ができるほどの人気になっている。しかし、この人気ぶりが持続できるかどうかが鍵だ。 

 

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▲フーマXの店内。ロングライフ牛乳が箱で積み上げてある。箱買いをすれば、激安価格で購入することができる。

 

中国では定着をしなかったホールセールクラブ

ホールセールクラブの中国進出はかなり早く、1996年にサムズクラブが進出をしている。しかし、当初は大きな話題になることもなく、低調なスタートだった。2015年には、国内チェーン小売「物美」(ウーメイ、ウーマート)が「物美尚佳」を北京で開店したが、わずか1年4ヶ月で撤退をしている。2016年には、仏山市と蘇州市に開店したが、やはり撤退をしている。

外資系ホールセールクラブも、中国には進出をしているが、中国市場に力を入れているとは言い難い。コストコはワールドワイドで804店舗を展開しているが、中国には1店舗のみだ。サムズクラブは中国で名前が最も知られているが、それでも中国の店舗数はワールドワイドの10%程度でしかない。1996年に深圳市で1号店が開店したが、それから16年経っても店舗数は6店舗にしか増えていない。

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▲中国ではウォルマート系のサムズクラブが早くから進出をしていたが、人気がで始めたのはこの数年で、当初はなかなか受け入れらず苦しんだ。

 

サプライヤーが確保できない。フーマはPBで対応

それでも、国内系はサプライヤーの確保に苦しんでいる。物美尚佳がうまくいかなかった理由も、めぼしいサプライヤーがサムズクラブやコストコとすでに契約をしているため、物美尚佳に商品を提供してくれなかったことも理由のひとつになっている。また、fudiも当初、サプライヤーの確保に苦しんだ。

そこでフーマXがとっている手法がプライベートブランドだ。「フーマMax」というPBを作り、ホールセールクラブに商品をまだ提供していない企業に製造をさせ、低価格で販売をしている。このようなメーカーは、新小売スーパー「フーマフレッシュ」のPBで確保をしていた。PB率は全体の30%から40%程度にもなるという。

また、店頭には「高ければ補償します」という言葉が大きく掲げられている。北京市内のサムズクラブよりも高ければ、購入後7日以内であれば、差額を補填するという制度だ。

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▲地元スタートアップ系のfudi。サプライヤーの確保に苦しんだが、ようやく開店に漕ぎ着けることができた。

 

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▲チェーンスーパー「永輝」が始めたホールセールクラブ。大型スーパー店舗を改装した。

 

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▲ドイツのチェーンスーパー「メトロ」は、スーパーの方が撤退をしてしまったが、ホールセールクラブで中国での再生をはかっている。

 

ホールセールクラブに賭ける実体小売業

なぜ、突如として、ホールセールクラブの開店ラッシュになったのか、その理由はさまざまに言われている。コロナ禍で実体店舗小売が消費者から嫌われ、新小売や生鮮EC、社区団購という新しい消費スタイルに移り始めている。既存スーパーも大きく業績を落とし、一般小売店も厳しい状況に追い込まれている。

そのような意識の変化により、買い物はネットかさもなければ回数を少なく済ませたいと考える人が増えているとも言われる。しかし、本当の理由は、実体店舗小売が危険水域まで追い込まれており、新たな販売スタイルで消費者を刺激する必要があるからだとも言われる。実体小売業にとっては、ホールセールクラブが唯一の隘路になっており、それに賭けるしかないのだとも言われる。

中国チェーンストア経営協会が毎年発表している「中国チェーンストア100強」の2020年の合計の売上は2.4兆元(約41兆円)。しかし、これは2019年から7.2%も減少をした。中国チェーンストア経営協会では、1997年から統計を取り始めているが、100強の合計売り上げが減少に転じたのは初めてのことであるという。

急速に厳しさを増している実体小売が、新たな道の模索を始めている。