中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

突然、ECからギフトカードが送られてくる「29元詐欺」。狙いは個人情報か?

中国では、ガラクタを代引き宅配で送りつける「39元詐欺」が横行している。宅配企業が、事前に内容を確認させる手順を可能にししたため、下火にはなっている。すると、今度はギフトカードを送りつけてくる「29元詐欺」が見られるようになったと問律が報じた。

 

低額商品を送りつける39元詐欺

日本でも中国でも送りつけ詐欺が横行している。宅配便や郵便の代引きを利用して、ガラクタのような品物を送りつけ、代金を騙し取ろうというものだ。

中国では通称「39元詐欺」と呼ばれる。なぜなら、代金が39元(約590円)のことが多いからだ。この微妙な価格設定が詐欺を成功させるコツになっている。39元という価格であれば、高額商品ではないことから、軽い気持ちで受け取って代金を支払ってしまう人が多い。後で、宅配便を開けて騙されたと気づいても、被害額は39元という少額なので、多くの人が警察に届けたりしない。

そこで、各宅配便業者は、代引きや着払い便の場合、受取人の求めに応じて、いったん開封して内容を確かめてもらう対応をとっている。これにより、39元詐欺は次第に下火になっているようだ。

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▲横行した39元詐欺のラベル。代引きで39元を支払って受け取ると、中にはガラクタが入っているというもの。現在、各宅配便企業では、代引きの場合は、開封して中身を確かめることを可能にしている。

 

ギフトカードが送られてくる29元詐欺

しかし、今度はさらに洗練をさせた「29元詐欺」が起きている。

5月26日、山東省の王さん(仮名)は、ECサイト「京東」からの着払いの荷物を受け取った。配送料は29元(約440円)であり、それを支払ってもらいたいと言う。王さんは京東で買い物をした覚えはないので、内容を確かめさせてほしいと言った。すると、中には、タオバオ、京東、拼多多で利用できる100元のギフトカードが2枚入っていた。合計200元分のギフトカートで、それが配送料の29元を支払えば受け取れる。王さんは、29元を支払って受け取ってしまった。

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▲京東から送られてきた2枚のギフトカード。送料の29元は着払いだが、多くの人が200元の得ができるのだからと、29元の送料を支払って受け取ってしまう。

 

危ういところで、難を逃れた王さん

受け取ってみたものの、王さんは訝った。なぜなら、王さんは京東の会員になっていない。なぜ、京東からこのようなギフトカードが届くのだろうか。京東は、どうやって王さんの名前や住所を知り得たのだろうか。

しかも、そのギフトカードにはQRコードが付いていて、SNS「WeChat」のアカウントをフォローし、そこからアプリをダウンロードして、そこに個人情報を登録することで利用できるようになるという説明があった。王さんは、賢明にも「なぜアプリストアからではなく、WeChatのアカウントからアプリをダウンロードさせるのか?」と不審に感じた。

そこで、確認のために、京東のコールセンターに連絡をし、確認すると、京東ではそういう宅配便を送っていないという。しかも、発送人の名前、事業者番号は偽のもので、京東が発行したものではない。何らかの方法で、京東の流通に乗せた偽の宅配便ではないかという。

京東側では、調査をすることを約束した。

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▲送られてきたギフトカード。QRコードをスキャンして、WeChatアカウントをフォローし、そこから専用のアプリをダウンロードする必要があるという。王さんはこの手順を不審に思い、京東のカスタマーセンターに連絡をとった。

 

京東は100倍にして送料を返金

一方で、王さんは、QRコードでフォローさせられたWeChatアカウントに「詐欺なのではないか。送料の29元を返金してほしい」というメッセージを送ったところ、WeChatのシステムが「詐欺に利用されているアカウントの可能性が高い」という警告を発した。

京東は、調査結果を王さんに伝えた。しかし、京東ではそういう宅配便は送っていない。王さんの個人情報は、京東では把握をしていない。発送人の名前、事業者番号は偽のもので、京東が発行したものではない。何らかの方法で、京東の物流に乗せたものではないかという。それ以上のことは京東ではわからないという。その代わり、29元の配送料の返金の件は、京東で利用できる2900元のポイントを贈るので、それで了承してほしいという。

王さんとしては、それで了解をしたので、この件はこれで終わった。

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▲WeChatで送り元にクレームを言うと、WeChatのシステムが上部に「詐欺防止のために、相手の身分を確認してください」という、詐欺に利用されている可能性の高いアカウントである警告が表示された。


集荷業者は扱い数ノルマを達成するために偽装荷物も受けてしまう

しかし、ネットでは、犯人の狙いなどについて議論がされている。その情報を総合すると、犯人の狙いは個人情報の収集であったようだ。指示通りアプリをインストールすると、ギフトカードの番号の他、チャージをするECサイトのアカウントとパスワードの入力が求められる。このアカウント、パスワードを収集して、EC内で勝手に買い物をし、商品を詐取するのが目的ではないかという。

また、王さんはタオバオの会員であり、以前からタオバオで買い物はしているので、販売業者の誰かが王さんの個人情報を外部に渡すなどして、宅配便が送られてきたのではないかという。京東の物流に乗せるのはさほど難しくない。正規の宅配便の集荷をする業者の中には、伝票データを操作して、京東物流だけでなく、さまざまな宅配便に偽装をして、正規の物流に乗せてしまう業者がいる。

宅配便の集荷業者には、各宅配企業からのノルマが設定されている。月に何千件以上の荷物を集荷すると、手数料利率が上がるなどの制度がある。そのため、怪しい荷物であっても、大量であれば受けてしまう業者が存在するのだという。

 

送料不要の低コストの個人情報詐欺か?

この詐欺のポイントは、犯人側はきわめて低コストであるということだ。偽物のカードを作り、それを宅配便で送りつけるだけで、配送料は被害者が払ってくれる。それで個人情報が取得でき、ECのアカウントとパスワードまで入手できる。じゅうぶんに引き合う犯罪なのだ。

この29元詐欺は、今後も横行すると見て、各地公安は市民に注意を呼びかけている。

 

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