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全国どこでも当日配送、新幹線の宅配便。価格は高くても、ビジネスの長距離当日配送に強い競争力

中国版新幹線「高鉄」を利用した宅配便「高鉄急送」のサービスが始まってから半年が経ち、これまでに8000件が利用された。価格が高いため需要は伸びないが、長距離当日配送では強い競争力を持っていると中国鉄路が報じた。

 

新幹線を使った宅配便「高鉄急送」

中国の新幹線「高鉄」が、昨年2023年5月22日から宅配便の取り扱いを初めて半年が経った。サービス提供都市は当初の40都市から141都市に増え、1日の取り扱い量は100件を超え、累積でも8000件ほどになった。

高鉄の宅配便「高鉄急送」は、同じ都市群内であれば当日配送(平均4時間)、異なる都市群でも当日配送(平均8時間)を可能にするエクスプレス宅配。自宅、オフィスなどからは専用の配送員がピックアップ、バイクで高鉄駅に運び、高鉄車両に乗せられる。到着駅でも配送員がバイクで目的地に配達するという仕組みだ。注文はWeChatの公式アカウントか電話で行うことができる。

▲高鉄急送は、電話またはミニプログラムからピックアップを依頼することができる。

▲依頼は、ミニプログラムからも行える。

 

価格は高いが、長距離当日配送では強い競争力

ほぼ全国で当日配送が可能になり、中国では最も速い宅配便になるが、利用数が伸び悩んでいるのはその価格に理由がある。5kg以内の荷物で、60km以内の都市には150元、1600km以内の都市には230元、1600km以上では280元となる。20kg以内の荷物で、1600km以上への都市へは340元(約7000円)となる。これに、ドアツードア配送料金などがプラスされていく。

ただし、長距離当日配送の宅配便としては強い競争力がある。例えば、北京市から武漢市に午前中に発送をすると料金は450.2元で、高鉄急送では当日の午後6時に到着をする。一方、SFエクスプレスのエクスプレス便を頼むと料金は761元で、到着は翌日の午前1時になる。

面白いのは、乗客の料金よりも高くなることがあることだ。北京から武漢への高鉄の料金は、ダイナミックプライシングが採用されているため、列車によって異なるが、夕方発の安い列車では2等車で410元ほどになる。高鉄急送の料金よりも安いのだ。つまり、高鉄急送を頼むよりも自分で手荷物として持って行った方が安上がりになる。

▲ピックアップされた荷物はその都市の高鉄駅に運ばれる。

▲高鉄駅に乗せられた荷物は、目的地近くの高鉄駅で下ろされる。

▲目的地の高鉄駅から目的地までは人が配達をする。全国どこでも当日配送が可能になっている。

▲荷物は段ボール箱に入れられ、高鉄車両に設置された貨物スペースに載せられる。



ビジネス書類や医薬品なども扱う高鉄急送

高鉄急送では、通常宅配便が扱えない荷物も扱えるようにしている。通常の宅配便で扱えないのは契約書など紛失した場合に荷物としての価値以上の損害が生じるもの、商品価値が1万元以上のもの、生鮮品、医薬品などだが、高鉄急送では取り扱いをしている。つまり、主にビジネスや緊急性の高い荷物を運ぶことで利用を確保しようとしている。

数十元で運んでくれる一般の宅配便も市内当日、同都市群翌日、遠隔地でも翌々日配送ぐらいの感覚になってきている。その中で、高鉄急送は高鉄の速さを活かした需要を見出そうとしている。

▲通常の宅配便では扱えない医薬品なども扱える。

▲通常の長距離宅配便では扱えない生鮮食品なども扱える。