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拼多多がタオバオに迫る勢い。しかし、客単価を上げるという大きな課題も

拼多多の月間アクティブユーザー数がトップのタオバオに迫る勢いになっている。しかし、地方企業製品、農産品を主力販売品とする拼多多は、客単価があがらないという課題を抱えている。この課題をクリアできるかどうかが、拼多多の今後の成長速度を決める鍵になると表外表里が報じた。

 

まとめ買いしづらい農産品をセールの目玉にした拼多多

今年の11月11日の独身の日セールは、各ECとも大幅に記録更新をして成功に終わった。しかし、異変も起きている。

ひとつはアリババ、京東は例年の11月11日だけの単日セールではなく、11月1日から11日までの11日間にセール期間を延長した。また、急成長するソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)は、農産品をセールの目玉としたことだ。

農産品をセールの目玉商品にすることは得策ではない。なぜなら、消費期限が短いためにまとめ買いをする人が少ないからだ。日用消耗品の多くは消費期限が長いかないため、セール期間に大量のまとめ買いをしてくれる。家電製品や電子機器は単価が高い。

農産品はまとめ買いもされず、単価も安く、セール品としては不利。なぜ、拼多多は農産品を目玉にしたのだろうか。

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▲拼多多のWeChatミニプログラム。農産品や地方企業が製造した加工食品、日用品が主体であるため、客単価があがらない。人気の商品はいずれも10元(約160円)以下だ。

 

地方弱小企業を全国区にする拼多多

拼多多はソーシャルECとして急成長をし、MAU(月間アクティブユーザー数)では京東を抜き第2位となり、淘宝網タオバオ)に迫る勢いを見せている。同じ商品を買う人の人数が増えるほど安くなる仕組みで、購入者を募るためにSNS「WeChat」で商品情報が拡散をしていく。これがプロモーション効果となり、大量の商品が売れるという仕組みだ。

拼多多は、中国の地方企業を活性化させた。地方にも、優れた製品を作れる企業、優れた農産品を生産できる農家はたくさんあるが、全国展開をするためのプロモーション、物流、営業などのノウハウがないために地方企業の地位に甘んじている。それが拼多多を利用すると、SNSでの拡散がプロモーションとなり、流通は宅配便物流を使うことで、全国に販売できるようになる。地方の企業、農家は拼多多を利用することで売上を大幅に増やすことができている。

 

客単価を上げることが課題の拼多多

拼多多の勢いは止まらない。2020年Q2のアクティブユーザー数は7.42億人に達し、第1位のタオバオの8.01億人に迫ってきている。

しかし、拼多多の課題は、そもそもが地方企業の安価な製品をさらに安く売るために流通総額が小さく、利益率も低いことだ。これを解消するためには、「ユーザー数の増加」「客単価の増加」「購入頻度の増加」の3つが必要だが、ユーザー数の増加は、ほぼ限界に達していて期待できない。

そこで、客単価と購入頻度を高める工夫をしているのが拼多多の現在だ。その手法は「100億補助」と呼ばれるもの。拼多多側が100億元の資金を用意し、特定の商品に対して購入補助を行う。これにより、消費者は実質的に仕入れ値以下の激安価格で商品を購入することができる。

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▲拼多多とタオバオの月間アクティブユーザー数の比較。拼多多はトップのタオバオに迫る勢いを見せている。しかし、客単価が上がらないというのが大きな課題になっている。

 

客単価が限界に達している拼多多

しかし、このような施策も限界に達しようとしている。2020年Q2時点での年換算平均客単価は1857元で、2020Q1からわずか0.81%しか伸びなかった。100億補助の効果が薄れてきているのだ。

さらに、販売する製品のジャンルでも、拼多多は苦しい立場に追い詰められつつある。多くの消費者が日用雑貨や化粧品などを購入するときはタオバオを使い、家電や電子製品を購入するときは京東を使う。それはそのECの顔であり、信頼感があり習慣になっている。

例えば、京東はCD-Rなどの記録メディアを販売するショップから始まり、電子製品と家電製品のECで成長をしてきた。大手メーカーの製品を扱い、また、中国のほぼ全土で24時間配送を達成し、質の高い製品がすぐに宅配されるという信頼を得ることに成功した。

これにより、次第に日用雑貨もついで買いとして購入されるようになり、日用雑貨を購入するようになると、購入頻度があがるようになる。京東の30日間留存率(アプリを開いてから30日以内に再度開く率)は、2018年頃から急上昇をしている。

つまり、そのECの顔となるジャンルの製品での顧客満足度を高め、信頼感を得て、それから日用雑貨、食品などの購入頻度が高い商品の購入に結びつけていく。これにより、客単価と購入頻度を高めていくことができる。

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▲京東は、電子製品と家電製品の販売が主体で、この分野では消費者の信頼を得ている。日用雑貨製品を扱うことで、電子、家電のついで買いを促すことで成長をしてきている。そのため、電子、家電の販売額比率は年々下がっている。

 

農産物を「顔」にせざるを得なかった拼多多

拼多多はこのようなタオバオや京東が得意としているジャンルの製品が弱い。地方企業の製品が中心となっているため、価格は安く、品質はそこそこというものが多い。さらには、売ることを優先して、大手メーカーとそっくりのロゴや商標を使い、権利侵害の訴訟も起きている。

一方で、農産品に関しては地方企業を主軸とする拼多多にとっては、高い品質の商品を低価格で提供することができる。そのため、拼多多は、農産品を「ECの顔」とする戦略を取っている。

ただし、農産品には賞味期限があるために、まとめ買いをすることができず、購入頻度は上がる。しかし、単価が安いために客単価を上げることが難しい。

拼多多は、タオバオを脅かすところまで成長をしてきたが、タオバオを追い越すには「客単価の増加」がどうしても必要になる。ここに対しては、拼多多はまだ有効な施策を打ち出せていない。客単価を上げることができるかどうか、それが今後、拼多多がさらに成長できるかどうかの大きな鍵になっている。