華南地区のセブンイレブンが、アリペイの顔認証ユニットを全面導入することを決めた。セブンイレブンでは、人件費の節約と消費者の関係強化に期待をし、アリペイ側では顔認証ユニット普及に弾みがつくことを期待していると零售老板内参が報じた。
実質無料で導入できる顔認証ユニット「蜻蜓」
中国セブンイレブンが華南地区の店舗で、アリペイの顔認証ユニット「蜻蜓」(チンティン、ヤンマの意味)を全面導入すると発表した。広州、深圳、佛山など11の都市の1000店舗に導入される。
蜻蜓はアリババが発売した小型顔認証ユニット。通常のPOSレジのUSBポートに接続して使うことができ、3D顔認証を0.01秒で行い、アリペイでの決済ができる。消費者は財布も持たず、スマホも持たず、買い物ができることになる。わずか1ヶ月の試用期間で、全面導入を決めた。
セブンイレブンが導入したのは、蜻蜓の第2世代。2018年末に発売された第1世代と比べて、性能が上がり、小型化され、価格も安くなった。価格は1199元(約1万9000円)だが、決済人数に応じて最高1200元までのキャッシュバックが行われている。コンビニのような客数の大きな店舗では、実質無料で顔認証に対応できることになる。
▲セブンイレブンが顔認証ユニットを導入したことで、普及に弾みがつくと期待されている。チェーン系のスーパー、コンビニから導入が始まっている。価格は1199元だが、最高1200元までのキャッシュバックがあるので、客数の多い店舗であれば実質無料で導入できる。
レジスタッフ人件費節約に大きな効果
顔認証ユニット導入を決めた狙いは2つある。ひとつは、レジオペレーションの効率化だ。もうひとつは消費者との関係強化だ。
タイ系のスーパー「ロータス」では、すでに顔認証ユニットを導入していて、すでに消費者の待ち時間を50%程度に減少させることに成功している。1台の顔認証レジは、通常のレジの1.5倍の処理能力があることがわかった。ロータスでは、レジ要員を1日3人減らすことが可能になり、レジスタッフの平均給与月3200元(約5万円)で計算すると、ロータス全体では年に1344万元(約2.1億円)の節約になる。
セブンイレブンももちろん、顔認証を導入することにより、人件費の抑制、人手不足への対応を狙っている。
▲金額を確認して、顔認証をしたら、「支払い」をタップするだけ。スマートフォンがなくてもアリペイによる支払いができる。
セブンイレブンが狙うのは、消費者との関係強化
セブンイレブンの狙いのもうひとつは、消費者との関係強化だ。セブンイレブンでは会員を募集して、会員専用の優待をしている。セブンイレブン側では、会員ごとの消費データを分析し、マーケティングに活かしたい。しかし、従来、この会員の仕組みがあまりうまくいっていたとは言えない。
会員になると、磁気カードを発行するか、スマホアプリをインストールしてもらうことになるが、決済時に磁気カードあるいはアプリ画面を提示してもらうことで、セブンイレブン側は会員であることを認識する。しかし、優待クーポンのようなものがあるときはカード、アプリを提示してくれるものの、優待がない時までわざわざ提示をしてくれる消費者は少ない。また、面倒、忘れたという理由で提示してもらえないことも多い。
これが蜻蜓の顔認証では、利用者全員が自動的に会員となっているので、自動的に購入データを集計できるようになる。カードのようなものを提示しなくても会員の購入データを収集できるようになる。
顔認証で会員登録する機能や、利用可能な優待を自動的に表示する機能もあり、顔パス会員が可能になり、会員の購入データを100%補足することができるようになる。セブンイレブンでは、従来の方式に比べて、会員化率を6倍以上に高めることができると見込んでいる。
アリペイ側でも、セブンイレブンが顔認証決済を導入することで、消費者、企業に顔認証決済の普及が進む起爆剤になると期待をしている。
▲アリペイが発売した顔認証ユニット「蜻蜓」第2世代。USB接続でPOSレジに接続することで、顔認証決済に対応できるようになる。
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