中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国の物流は、いつもギリギリだから進化する

11月11日独身の日セールから1週間、宅配業界は1年で最も忙しい日を迎える。中国全土では、10億件を超える宅配便が発送され、その多くが「当日配送」「翌日配送」なのだ。広東省郵政管理局では、さまざまな対策をとっていると広州参考が報じた。

 

広東省だけでも3.6億件の宅配便

広東省郵政管理局は、この1週間で広東省が扱う小包、宅配便は3.6億件に達する見込みだと発表した。これは中国全土の宅配件数の1/4にあたるという。

このため、広東省だけで7万人の臨時配達員が雇用された。また、33万平米の作業場を用意し、6000台の配達車両を増強した。それだけではなく、自動仕分け、シェアリング宅配ロッカーなどの技術も積極的に活用していくという。

tamakino.hatenablog.com

 

平常時の3倍の取扱量

広東省郵政管理局の羅徳韶副局長は、広州参考の取材に応えた。「現在、広東省には1日100万件の処理能力がある仕分け場が21カ所、50万件の仕分け場が25カ所あり、合計で約1日6000万件の処理能力があります」。これだけの能力があれば、3.6億件の宅配便は処理できるが、現実には毎日均等に宅配便が送られてくるわけではなく、ピーク時には1日8500万件を突破すると見込まれている。これは、通常の取扱件数の3倍になるという。

tamakino.hatenablog.com

 

荷物の仕分けは、ほぼ無人で行われる

そこで、4つの技術を使って、効率化を図っているという。

ひとつは、自動仕分けだ。配達先を自動読み取りして、適切な配送袋に入れる。ECサイト唯品会の華南倉仕分け場、ECサイト京東の黄埔亜洲1号仕分け場、アリババの広州増城倉仕分け場などが導入済みで、ほぼ無人での作業が可能になっている。

f:id:tamakino:20171112221231j:plain

▲唯品会の華南倉仕分け場では、ほぼ無人の仕分け作業が可能になっている。送り状は電子化され、発送先ごとに荷物が仕切られていく。リユース梱包箱は、配達員が持ち帰るので、商品の大きさにこだわらず、同じサイズの箱に梱包できる。サイズが標準化できることで、仕分け、発送、輸送などの作業が大きく効率化できる。

 

f:id:tamakino:20171112221250j:plain

▲京東の黄埔亜洲1号仕分け場。完全無人ではないが、荷物件数に比べればきわめて少ない人数しか働いていない。ほとんどの仕分け作業が自動化されている。

 

導入が進むシェアリング宅配ロッカー

2つ目がシェアリング宅配ロッカーだ。公共施設やマンションなどに設置をされ、配達されたことはスマートフォンに通知がいき、鍵もスマートフォンで開ける。24時間受け取ることができ、配達の効率を大きく改善する。

広東省では、3万カ所のシェアリング宅配ロッカーを設置。1日に120万件の宅配を宅配ロッカーで対応できるという。

f:id:tamakino:20171112221307j:plain

▲普及し始めたシェアリング宅配ロッカー。大規模マンションなどでは屋内に、さらには駅や商業施設などの公共性の高い場所にも置かれ始めている。配達の通知はスマートフォンにきて、解錠もスマートフォンで行う。

 

プライバシーに配慮した電子送り状も90%の普及率

3つ目は、電子送り状だ。従来の紙の送り状だと、消費者の氏名や住所、電話番号などが誰にでも読めてしまう。これを電子化し、宅配業社の配達員が持っている端末(スマートフォン)をかざさないと読めないようにした。読み取りをしたときは、どの配達員が読み取りをしたのかも記録される。こうすることで、消費者のプライバシーを守るとともに、配達の再委託がしやすくなる。

例えば、大規模マンションの場合、そのマンションの配達のみ、臨時雇用した配達員に委託をすれば効率はいい。しかし、紙の送り状では、その臨時の配達員が送り状の情報を使って、別の商売をしてしまったり、あるいは犯罪行為を行ってしまう危険性がある。しかし、電子送り状であれば、誰が読み取りをしたかがすべて記録されるので、このような不安なく、配送を再委託できるようになる。広東省では、すでに90%が電子送り状になっている。

 

リユース梱包箱も普及が進む

4つ目は、リユース梱包箱だ。プラスティック製の折りたたみ箱で、配達時に中身だけを渡して、箱は折りたたんで持ち帰ってしまう。段ボールを使わないので、環境に優しく、消費者もゴミを捨てる手間が省ける。

梱包も、段ボール箱に比べて簡単で、サイズも標準化できるため、梱包作業、仕分け作業などが大きく効率化できる。

tamakino.hatenablog.com

 

いつもギリギリ。それが進化の原動力

広東省では、このような技術を使って、独身の日の配送を乗り切ろうとしている。しかし、独身の日のセールは、毎年前年越えの成長を続けている。来年は、さらに処理能力を増やさなければならないし、新たな技術を投入していかなければならない。中国の物流の進化には目覚ましいものがあるが、それは毎年毎年、限界量ギリギリの作業を強いられているからだ。11月11日は、毎年やってくる緊急事態。それに合わせて、新技術が投入され、物流の体制が整えられていく。

こうして、中国の物流技術は進化をしていく。

tamakino.hatenablog.com