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中国を中心にしたアジアのテック最新事情

宅配ボックスはタワー型に。上部はドローン発着場

宅配便企業「豊巣」が、タワー型の新型宅配ボックスを開発して話題を呼んでいる。600個の荷物が収納できるだけでなく、ドローン配送、無人車配送にも対応をしている。しかし、実用には課題もあると新農村物流が報じた。

 

中国で進むパブリック宅配ボックス

日本でもそうだが、中国でも宅配便物流の限界が社会問題となっている。宅配便件数は年間400億件を超え、常にぎりぎりの状態で配送が行われている。中国でも問題になっているのが、不在による再配達だ。再配達を減らすことで、宅配物流の流量はまだあげることができる。

そこで普及が進んでいるのがパブリック宅配ボックスだ。中国の都市部では大規模なゲートコミュニティマンションが多い。ゲートで仕切られ、部外者は立ち入りできず、中には1000戸クラスのマンション群が立ち並ぶというもの。入居個数が1000戸を越えると、スーパーやコンビニといったビジネスが成立するようになるため、居住者専用のスーパー、コンビニ、美容院、レストラン、カフェなどを備えているところもある。

このようなマンションに大型宅配ボックスを設置することで、宅配物流の効率を上げようとするものだ。このパブリック宅配ボックスは、マンションの外に出て、駅やバスターミナル、オフィスビル、学校の寮、病院、公園などに設置される例も増えてきている。

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▲豊巣は、宅配便企業で、すでに多くのパブリック宅配ボックスを各地に設置している。このタイプは、冷蔵庫付きのもので、野菜などの生鮮食料品の配送にも対応している。

 

高さ4.2mのタワー型。最大600個を収納

宅配企業「豊巣」が開発した新型宅配ボックスは、このようなパブリック宅配ボックスをさらに進化させたものだ。

八角柱の形状で、直径2.5m、高さ4.2mという巨大なもの。中には最大600個の宅配便を収納することができる。配達員がこの宅配ボックスに荷物を持ってくると、顔認識により配達員が認識をされ、誰がどの荷物を入れたかが記録される。入れる際に荷物の送り状のバーコードも読み取られ、受取人に自動的に案内メッセージが送られる。

受け取る人も、顔認識で認識され、画面の前に立つだけで、自分宛の荷物が出てくるという具合だ。

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▲高さ4.2mの宅配ボックス。目の前に立つだけで、顔認識により自分の荷物が出てくる。高くすることで設置面積を減らすために、八角柱の形状をしている。

 

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▲中はタワーパーキングのようになっていて、最大600個の荷物が収納できる。

 

ドローン配送、無人車配送にも対応

しかし、このパブリック宅配ボックスが本領を発揮するのは、数年後だ。上部は無人ドローンのポートになっていて、ドローンの荷物を自動で内部に収納することができるようになっている。さらに、無人配送車もすでに実用試験が始まっていて、公道走行や現実的な障害物の問題がクリアできれば実戦投入できる段階まできている。この無人配送車にも対応していて、自動で荷物が収納できるようになっている。つまり、将来は、無人ドローン、無人配送車で夜間にパブリック宅配ボックスに配送し、人間が活動する昼間に人間が荷物を受け取っていくことになる。

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▲タワー上部はドローンが発着できる場所になっている。ドローンにより24時間、荷物を配送できる。

 

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▲配送拠点から宅配ボックスまでは、無人配送車が運ぶようになる。

 

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▲現在は配達員が荷物を宅配ボックスまで届ける。顔認証により配達員を認識する。

 

乗り越えなければならない課題もある

しかし、解決しなければならないさまざまな問題は残されている。ひとつはドローン配送は、墜落の危険性があるために、人口の多い都市部では簡単には実現できないことだ。また、ゲートコミュニティマンションは夜間は門を閉ざすため、無人配送車が自由に出入りすることはできない。

さらに大きな問題がビジネスモデルだ。現在、豊巣が予定しているのは、利用をする配送員から利用料を徴収するというもの。大中小、それぞれ、0.05元、0.04元、0.03元とわずかな料金だが、配送員の利益は荷物一つで1.5元程度なので、利用をしない配送員もいるかもしれない。宅配便企業は、この費用を配送料に転化してECサイトに負担をしてもらおうと考えるかもしれない。すると、ECサイトは値上げをして消費者に負担を求めることになるだろう。

消費者としては、24時間いつでも受け取れる代わりに、宅配ボックスから自宅までは自分で運ばなければならず、小さい荷物ならともかく、重く大きな荷物の場合は「宅配ボックス不可、自宅直送」を指定するようになるかもしれない。

広告による収入を考えるなど、コストを宅配便企業、ECサイト、消費者のトライアングルの外に求めることが必要になる。豊巣は、実戦投入時期はまだ明らかにしていない。

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