中国の都市部で生活に定着している外売サービス。レストランの出前代行だ。この配達員は、地方出身者が多く、仕事は忙しくつらい。その外売配達員のA外売小黄人が、業務アプリの内容を公開して話題になっている。
ほとんどのレストランが対応している外売サービス
中国のレストランのほとんどは、「お持ち帰り」に以前から対応している。食事をした時に、食べきれないものを包んで持って帰るというのはごく自然な習慣だ。中華料理の多くは火が通してある料理で、冷めても温め直せば美味しく食べられる。そのため、多めに注文して、翌日の朝食や昼食用に持って帰ることもある。
このような習慣があったため、外売サービスは一気に広がった。スマートフォンアプリから注文をして、お持ち帰り用の料理を作ってもらい、それを配達員が取りに行って、自宅まで配送してくれる。出前というよりは、受け取り代行サービスだ。
そのため、ほとんどの料理店がこの外売に対応している。また、マクドナルド、ケンタッキーなどのファーストフードも対応をしている。アプリの中から、ほとんどの料理を注文することができるのだ。
▲急ぐ外売配達員。大都市だけでなく、地方都市まで外売サービスが普及をし、出前を利用するのが当たり前になっている。
▲外売サービス「美団外売」アプリ。近所のほとんどのレストラン、チェーン店の料理が注文できる。この店は配達料が8元(約130円)だった。配達料は、ピークの時間帯、距離、店によって異なるが、10元を少し下回るぐらいが相場。
利用客の評価がすべて。それでサービスの質を維持する
配送は最短30分。配送料は、距離や時間帯、料理店にもよるが、1回の注文で10元(約170円)弱というのが相場だ。配達員はこのうちの6元から7元程度が自分の収入となり、残りが外売サービスを提供している企業の収入となる。
この外売サービスの特徴が、利用者が配達員を評価できる仕組みがあるという点だ。この評価が低くなると、報酬が下げられたり、場合によっては一定期間仕事ができなくなる。
極めて中国的なのが、低い評価=クレームの場合でも、内容は問わないということだ。例えば、悪天候や渋滞という不可抗力で配達が遅れた場合でも、配達員は言い訳ができず、低評価をつけられてしまうことがある。
配達員がかわいそうにも思えるが、配達員に落ち度がない不可抗力であっても、それがあまりに多すぎる配達員は、なにか問題があるのだと考えられる。遅れた場合でも、謝り方を工夫をすれば、評価は急には低くならない。そういうやり方で、配達員に自分で工夫をすることを求めている。
配達員をするのは、農村の出身者が多く、ひどい言い方をすれば、「嫌なら代わりはいくらでもいる」ということで、工夫をしない配達員を排除し、サービスの質を維持しているのだ。
▲ネットで拡散した写真。外売配達員が、料理ができるのが待ちきれず、自分で作り始めてしまったという写真。
配達員はつらいよ。実情を公開した配達員
そのため、配達員のストレスは大きい。最も多いのが、指定した時間に配達したのに留守というパターン。配達員は、なんとしても利用者に連絡を取って届けなければならない。
そういうことから、A外売小黄人は、業務アプリのスナップショットを公開して、利用者に配達員のことを少し考えてほしいと訴えた。A外売小黄人は言う。「料理が届かず、お腹が減っても、人間がそれを届けているとは考えないでしょう?それが外売配達員なのです」。
上図では、アイコンが配達員の現在地。「取」というのがレストランで、料理の受け取り地点。料理についてはすでにレストラン側の業務アプリに注文が送られているので、料理がされている。これを取って「送」の場所に届ければいい。非常によくできていて、チャートが示す通り、受け取りと配送をしていけばいいようになっている。
上図では、5軒のレストランで料理を受け取り、7カ所に配達をすればいいかのように見える。しかし、黄色い受け取り指示ラインがあることに注意していただきたい。これは、配達用のスクーターに、一度にすべての料理を載せられないことを示している。つまり、料理を2回にわけて、このルートを2周しなければならず、意外に時間のかかるパターンなのだという。
上図は配達員にとってとてもありがたいパターン。5軒のレストランで料理を受け取り、4カ所に配達する。すると、収納にスペースができるので、さらにもう1軒で料理を受け取り、最初から積んである料理と合わせて、4カ所に配達する。受け取りと配達がうまく組み合わされていて、とても効率よく配達できる。つまり、配達員にしてみれば、「稼げる」というわけだ。
どの注文を請けるかは、配達員が決め、しかも早いもの順。配達員は、どの注文を請ければ、配達が効率的になるかを考えなければならない。あまりに欲張りすぎると、配達に遅れることになり、低評価をつけられてしまう。意外に頭を使う仕事なのだ。
配達員からも利用客からもさまざまなコメント
A外売小黄人によると、外売配達員は、常に12人分の注文を受けて、それをひとつひとつこなしているのだという。「だから常に忙しいのです。連絡つかない人に当たってしまうと、その後の配達がすべて遅れてしまいます」と、利用者に対して訴えている。
また、この記事には、外売配達員と思われる人のコメントが無数についた。その中には、
「2年ほど配達員をやったけど、稼げなくて、嫁さんに逃げられた。免許証は警察に取り上げられた。借金もできた。日に焼けて色も黒くなった。時間の無駄だった」
「昼食の時間帯はものすごく忙しい。お願いだから、電話してきて、ついでにタバコ買ってきてとか水買ってきてというのやめて。配達が遅れて、低評価つけられちゃうんだから」というコメントもある。
また、利用者からは、
「僕は遅くても催促したことない。夕食が少し遅れても、人が死なないほうがいい。配達員は命を支払っているのだから」
「注文受けるときに、間に合わないとどうして判断できないの?配達員が大変で、そこは同情するけど、君たちが信号無視しているの見ると、低評価つけちゃうよね」
「2時間遅れて、夜10時に配達されて、料理はすっかり冷めていた。でも、配達員の態度が誠実だったから、高評価付けたよ」などのコメントがついている。
日本でもすでにウーバーイーツがこの外売とほぼ同じサービスを始めている。配達料は380円。中国のように外売が普及していくだろうか。